日本銀行が政策金利を引き上げるたびに、「預金金利も上がる」というニュースを目にする機会が増えました。しかし、政策金利が上がったからといって、銀行の預金金利が同じ割合で上昇するわけではありません。
そこで注目されるのが「追随率」という考え方です。追随率を見ることで、銀行がどの程度積極的に預金金利を引き上げているかを知ることができます。
今回は、預金金利の追随率の仕組みと、銀行経営との関係について分かりやすく解説します。
追随率とは
追随率とは、日本銀行が政策金利を引き上げた際に、銀行が預金金利をどの程度引き上げたかを示す割合です。
例えば、日本銀行が政策金利を0.25%引き上げたとします。
一方で、ある銀行が普通預金金利を0.10%引き上げた場合、追随率は40%程度となります。
つまり、政策金利の上昇分をすべて預金者へ還元するのではなく、一部だけ反映させていることになります。
銀行ごとに追随率は異なり、市場環境や経営方針によって大きく変化します。
貸出金利との違い
預金金利と貸出金利は同じように動くわけではありません。
銀行は預金を集め、その資金を企業や個人へ貸し出して利益を得ています。
一般的には、
- 貸出金利は比較的早く上昇する
- 預金金利は緩やかに上昇する
という傾向があります。
これは銀行が利益を確保するためです。
仮に貸出金利も預金金利も同じ幅だけ上昇すれば、銀行の利益はほとんど増えません。
そのため銀行は、預金金利の引き上げ幅を慎重に判断しながら経営しています。
なぜ追随率は100%にならないのか
預金者から見ると、「政策金利が上がったのだから預金金利も同じだけ上がるべきではないか」と思うかもしれません。
しかし銀行には多くのコストがあります。
例えば、
- 人件費
- システム投資
- 店舗運営費
- 貸倒引当金
- 規制対応費用
などです。
これらを賄うためには一定の利益が必要になります。
預金金利だけを急激に引き上げれば、利益が減少し、健全な経営が難しくなる可能性があります。
そのため、多くの銀行は預金金利を段階的に引き上げています。
銀行収益への影響
追随率は銀行の収益に直接影響します。
追随率が低い場合は、預金金利の上昇が抑えられるため、銀行は貸出金利との差を大きく確保できます。
その結果、利ざやが拡大し、収益は改善しやすくなります。
一方で、追随率を高く設定すると、預金獲得には有利になりますが、利益は圧迫されます。
つまり、
- 利益を優先するか
- 預金獲得を優先するか
という経営判断が問われることになります。
銀行ごとに追随率が異なる理由
銀行はそれぞれ異なる経営環境に置かれています。
例えば、大手銀行はブランド力があるため、多少金利が低くても預金を集めやすい傾向があります。
一方で、地方銀行やネット銀行は積極的に金利を引き上げることで、新たな預金を集める戦略を採ることがあります。
そのため、同じ政策金利の上昇でも、銀行によって預金金利には大きな差が生まれます。
預金先を選ぶ際には、追随率の違いも一つの判断材料になります。
今後の注目点
今後も日本銀行が追加利上げを実施すれば、銀行間の預金獲得競争はさらに激しくなる可能性があります。
特に、
- 普通預金
- 定期預金
- ネット銀行
- 地方銀行
の間で金利差が広がることも考えられます。
預金者にとっては、どの銀行が政策金利の変化を積極的に反映しているかを確認することが、より有利な資産運用につながります。
結論
預金金利の追随率とは、日本銀行の政策金利の変化を銀行がどの程度預金金利へ反映させたかを示す重要な指標です。
追随率が高ければ預金者には有利ですが、銀行の利益は減少しやすくなります。一方、追随率が低ければ銀行収益は改善するものの、預金者には十分な利息が還元されません。
金利ある時代では、銀行ごとの追随率や金利戦略の違いがこれまで以上に重要になります。預金金利だけでなく、その背景にある銀行経営の考え方を理解することで、より賢い預金先選びができるようになるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
銀行預金、金利競争に みずほは大口向け1.5%
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
預金金利 日銀の利上げに伴い上昇 きょうのことば