人手不足の会社では、仕事ができる人ほど忙しくなるという現象が起こりがちです。
処理が速い人に仕事を頼む。責任感の強い人に重要な案件を任せる。周囲から頼られる人には、さらに多くの役割が集まります。
短期的に見れば合理的です。確実に仕事をこなしてくれる人へ任せたほうが、会社として安心だからです。
しかし、それを続けることが適材適所とは限りません。
参考記事でも、中小企業では一人の従業員が複数の役割を担うことが少なくなく、配置判断を誤ると本人だけでなくチームや経営そのものにまで影響が及ぶと指摘されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
適材適所とは何か
適材適所とは、その人が持っている能力や特性を、最も力を発揮できる仕事や役割と組み合わせることです。
単に能力の高い人へ多くの仕事を任せるという意味ではありません。
重要なのは、
その人は何ができるのか
どのような環境なら力を発揮できるのか
どのような仕事に意欲を持っているのか
会社はどのような役割を必要としているのか
を組み合わせて考えることです。
参考記事では、適材適所を判断する視点として、能力、特性、意欲に加えて、職務要件と組織フェーズが挙げられています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
人だけを見るのではなく、仕事と会社の状況まで見る必要があるわけです。
できる人に仕事が集中する
中小企業で起こりやすい問題の一つが、できる人への仕事の集中です。
責任感があり、処理が速く、周囲から頼られる従業員は会社にとって非常に重要な存在です。
新しい仕事が発生すると、
あの人ならできる
あの人に頼めば安心
という理由で仕事が集まります。
ところが、本人が優秀だからといって、際限なく仕事を増やせるわけではありません。
参考記事でも、優秀な従業員に仕事を集中させ続けると、本人の負荷が高まり、疲弊や離職につながるおそれがあるとされています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
優秀な人ほど辞めてしまうという結果になれば、会社にとって大きな損失です。
属人化というもう一つの問題
仕事の集中には、本人の負担とは別の問題があります。
属人化です。
ある仕事について、
この人しか分からない
この人しかできない
この人が休むと止まる
という状態になることです。
仕事のできる人へ任せ続ければ、短期的には業務が効率化しているように見えます。
しかし、その人が休職したり退職したりすれば、会社は突然その仕事を回せなくなる可能性があります。
参考記事でも、特定の従業員への仕事の集中は、その人がいなければ業務が回らないという属人化につながると説明されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
できる人への集中は、会社に見えないリスクを蓄積している場合があるのです。
適材適所は仕事量ではなく役割を考える
では、優秀な人には仕事を任せないほうがよいのでしょうか。
そうではありません。
考えるべきなのは仕事の量ではなく、どの役割を任せるかです。
参考記事では、できるから任せるのではなく、どの役割で活かすかを考えることが適材適所の出発点だとされています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
たとえば、業務処理能力の高い従業員がいたとします。
その人に次々と実務を追加する方法もあります。
しかし、別の方法もあります。
業務の標準化を任せる。
後輩の育成を任せる。
業務改善を任せる。
専門性の高い仕事に集中してもらう。
本人の強みを、本人だけの成果ではなく組織全体の成果につなげるという考え方です。
優秀なプレイヤーが優秀な管理職とは限らない
適材適所を考えるうえでもう一つ注意したいのが、昇進です。
仕事のできる人を管理職にする会社は少なくありません。
しかし、現在の仕事で高い成果を上げていることと、管理職として高い成果を上げられることは別問題です。
参考記事では、営業成績のよい従業員を管理職に登用したものの、本人が部下指導や業務調整に大きな負担を感じ、本人もチームも力を発揮しにくくなる例が示されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
営業担当者として必要な能力と、管理職として必要な能力が違うからです。
これは本人の能力不足ではありません。
役割とのミスマッチです。
できる人だから昇進させるという発想だけでは、適材適所にならない場合があります。
優秀な人を組織全体で活かす
適材適所の目的は、一人ひとりを評価して優劣を付けることではありません。
その人が持っている力を、会社の成果につなげることです。
そのためには、優秀な人へ仕事を集中させるだけではなく、その人の強みをどのように組織へ広げるかを考える必要があります。
本人にしかできない仕事を増やすのではなく、知識やノウハウを周囲へ共有する。
定型的な仕事を他の従業員へ移し、本人には専門性を活かせる仕事を任せる。
将来必要になる役割を見据えて育成する。
こうした配置や役割の設計まで含めて考えることが、適材適所につながります。
配置は一度決めたら終わりではない
人の能力や会社の状況は変わります。
現在は最適な配置でも、半年後、一年後には状況が変わっているかもしれません。
参考記事でも、人材配置に絶対の正解はなく、勘と経験だけに頼るのではなく、従業員の状態、職務の内容、会社の方向性を見える化し、対話しながら見直すことが大切だとしています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
適材適所は、一度人を配置して完成するものではありません。
配置して成果を見る。
本人と話す。
必要なら役割を変える。
育成する。
そして再び確認する。
この繰り返しが必要です。
結論
人手不足になるほど、会社はできる人に仕事を頼りたくなります。
しかし、できる人に仕事を集め続けることと適材適所は同じではありません。
仕事が集中すれば、本人の疲弊や離職につながる可能性があります。さらに、その人がいなければ仕事が回らない属人化も進みます。
重要なのは、できるから任せるという発想から、どの役割でその人を活かすのかという発想へ変えることです。
優秀な人の仕事量を増やすのではなく、その能力や特性が最も活きる役割を考える。そして、その力を本人だけの成果ではなく、組織全体の成果につなげていく。
人手不足の時代だからこそ、適材適所は単なる人事配置ではなく、限られた人材を活かすための重要な経営課題なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 中小企業の適材適所の測り方