会社で高い成果を上げている人を見ると、この人なら別の仕事を任せても活躍できるだろうと考えたくなります。
営業で成果を上げた人を管理職にする。事務処理が速い人に業務改善を任せる。専門知識が豊富な人に後輩の育成を任せる。
ところが、配置を変えた途端、それまで活躍していた人が十分な成果を出せなくなることがあります。
本人の能力が突然低下したわけではありません。
考えたいのが職務適性です。
参考記事では、適材適所を判断する際には、人材側の能力、特性、意欲だけでなく、仕事が求める職務要件との組み合わせを見ることが重要だとされています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
職務適性とは何か
職務適性とは、その人の能力や特性などが、担当する仕事や役割にどの程度合っているかという考え方です。
単純に仕事ができる人か、できない人かを判断するものではありません。
人にはそれぞれ強みがあります。
同時に、仕事によって求められる能力や行動も違います。
この二つがうまく組み合わされている状態では、本人は比較的自然に力を発揮できます。
反対に、能力の高い人でも、仕事との組み合わせが悪ければ十分な成果につながらないことがあります。
そのため、人を見ることと仕事を見ることの両方が必要になります。
同じ営業成績でも能力の中身は違う
参考記事では、能力を見るときには、単に何ができるかだけではなく、どのような場面で成果を出しているのかを確認することが重要だと説明されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
たとえば、同じように高い営業成績を上げている二人がいたとします。
一人は、自ら新しい顧客を見つけ、積極的に働きかけることで成果を上げています。
もう一人は、既存顧客との信頼関係を築き、長期的な取引を増やすことで成果を上げています。
数字だけを見れば、二人とも優秀な営業担当者です。
しかし、成果を生み出している能力は同じではありません。
新規開拓を任せるのか、既存顧客を任せるのかによって、適性の高い人が変わる可能性があります。
能力があっても環境が合わないことがある
職務適性を考えるときには、能力だけでなく特性を見る必要があります。
特性とは、思考や行動の傾向、人との関係の築き方、変化への対応、仕事の進め方などです。
参考記事では、能力が何ができるかを見る視点なのに対して、特性はどのように力を発揮するかを見る視点だと整理されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
同じ能力を持っていても、一人で集中できる環境で力を発揮する人もいれば、周囲と連携しながら成果を出す人もいます。
能力そのものには問題がなくても、本人の特性と職場環境が合っていなければ成果が出にくくなるわけです。
配置転換後に成果が落ちた場合、すぐに本人の能力不足と考えるのではなく、環境との組み合わせを見ることが重要です。
営業ができても管理職に向いているとは限らない
職務適性の違いが分かりやすく表れるのが、管理職への登用です。
営業担当者として優秀だった人を営業部門の管理職にすることは、一見すると自然な人事に見えます。
しかし、営業担当者と管理職では求められる役割が違います。
営業担当者は、自分自身が顧客と接して成果を上げることが中心になります。
一方、管理職になれば、部下の育成、仕事の割り振り、進捗管理、他部署との調整などが重要になります。
参考記事でも、営業成績のよい従業員を管理職に登用したものの、本人が部下指導や業務調整に大きな負担を感じ、本人もチームも力を発揮しにくくなるケースが示されています。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
この場合、営業担当者としての能力が低かったわけではありません。
新しい職務との適合に問題があったと考えることができます。
同じ能力でも職務によって重視する部分が違う
参考記事では、職務によって重視したい能力や特性の例も示されています。
新規開拓営業では、主体性、行動力、変化対応力。
既存顧客を担当する営業では、傾聴力、信頼関係構築力、継続対応力。
経理では、正確性、計画性、注意力。
総務や人事では、調整力、対人対応力、柔軟性。
管理職では、判断力、育成力、調整力。
業務改善では、分析力、改善志向、構造的思考力です。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
ここから分かるのは、能力が高いか低いかだけで人材配置を考えることには限界があるということです。
どの能力を、どの仕事で使うのかまで考える必要があります。
配置転換で成果が落ちても失敗とは限らない
新しい仕事を任せて成果が出なかった場合、配置そのものが間違いだったとすぐに結論づける必要もありません。
本人に不足している部分が明確なら、育成によって補える場合があるからです。
参考記事では、専門性は十分でも対人調整に不安がある場合、いきなり管理職に登用するのではなく、まず小規模なチームの取りまとめを任せる方法が示されています。
また、意欲は高いものの経験が不足している場合には、教育担当者の支援を受けながら段階的に挑戦させることも考えられます。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
職務適性を現在の状態だけで固定的に判断するのではなく、育成によって適合度を高められるかを見ることも重要です。
合うか合わないかの二択にしない
職務適性という言葉を使うと、この人は営業向き、この人は管理職には向かないというように、人を分類したくなるかもしれません。
しかし、参考記事が重視しているのは、そのような単純な分類ではありません。
職務が求めるものと本人の状態を照らし合わせ、どこが合っていて、どこにずれがあるのかを具体的に把握することです。 e08aafc8-823f-4831-b84c-f1863ff…
不足している部分が経験なら経験を積ませる。
役割が大きすぎるなら小さな役割から任せる。
環境が合っていないなら配置を見直す。
こうした対応が可能になります。
職務適性は、人の可能性を狭めるためではなく、その人が力を発揮できる条件を見つけるために使う考え方なのです。
結論
現在の仕事で成果を上げている人が、別の仕事でも同じように成果を上げられるとは限りません。
仕事が変われば、求められる能力や特性も変わるからです。
だからこそ、人材配置では仕事ができるかどうかだけを見るのではなく、その人の能力や特性と、職務が求めるものが合っているかを見る必要があります。
配置転換後に成果が出なくても、すぐに本人の能力不足と判断してはいけません。
仕事との組み合わせが合っていないのかもしれませんし、経験や支援が不足しているだけかもしれません。
人を評価してから仕事を当てはめるのではなく、人と仕事の組み合わせを考える。
職務適性という視点を持つことが、適材適所を実現するための重要な一歩になるのです。
参考
企業実務 2026年9月号 中小企業の適材適所の測り方