賃上げすると企業年金も増えるのか 基本給とDBの給付額が連動する仕組み編

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賃上げというと、毎月受け取る給与や賞与が増えることを思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、勤務先に確定給付企業年金であるDBがある場合、賃上げの効果が退職後まで続くことがあります。

企業年金の給付額を給与水準と連動させている会社では、基本給が上がることで将来受け取る企業年金も増える可能性があるからです。

同じ1万円の賃上げでも、現在の給与だけが増える会社と、将来の企業年金まで増える会社では長期的な意味が違います。

賃上げを見るときには、毎月の給与明細だけでなく企業年金まで確認することが重要です。

DBの給付額は会社ごとに決め方が違う

DBでは、あらかじめ定められたルールに基づいて将来の給付額を計算します。

ただし、すべての会社が同じ計算方法を使っているわけではありません。

給与と勤続年数を基準にする制度もあれば、職位や勤続期間などに応じてポイントを積み上げる制度もあります。

キャッシュバランスプランのように、一定の指標となる金利を給付額の計算に反映させる仕組みもあります。

したがって、賃上げが行われればすべてのDBで年金が同じように増えるわけではありません。

重要なのは、自分の会社の企業年金が何を基準に給付額を計算しているかです。

給与連動型では基本給が重要になる

給与水準と連動して給付額を決めるDBでは、基本給の上昇が将来の企業年金に影響することがあります。

例えば、一定の給与額と勤続年数を組み合わせて退職時の給付額を計算する制度を考えてみます。

基本給が上昇すれば、給付計算の基礎となる給与額も高くなる場合があります。

その結果、退職時に受け取る一時金や年金額が増える可能性があります。

つまり給与連動型のDBでは、現役時代の賃上げが老後所得の増加につながることがあります。

賃上げ1万円の価値は1万円だけではない

例えば基本給が月30万円から31万円へ1万円上昇したとします。

毎月の給与だけを見れば年間12万円の増加です。

実際には賞与の計算に基本給が使われていれば、賞与にも影響する可能性があります。

さらに退職金や企業年金の計算にも基本給が使われていれば、将来受け取る金額にも影響します。

つまり基本給の1万円の引き上げには、現在の月給を1万円増やす以上の意味がある場合があります。

長期間勤務する人ほど、その影響が積み重なる可能性があります。

基本給と手当では意味が違う場合がある

賃上げを見るときに注意したいのが、何が増えたのかです。

例えば月1万円の賃上げでも、基本給が1万円増えた場合と、新しい手当として1万円が支給された場合では将来への影響が違うことがあります。

企業年金や退職金の計算対象が基本給だけであれば、手当が増えても企業年金には反映されない可能性があります。

賞与の算定基礎についても同様です。

毎月受け取る金額だけを見れば同じ1万円でも、長期的な待遇としては違いが生じることがあります。

賃上げのニュースを見るときには、賃上げ率だけではなく基本給そのものがどれだけ増えたのかを確認する意味があります。

ベースアップが企業年金に影響する場合もある

賃上げには定期昇給とベースアップがあります。

定期昇給は年齢や勤続年数、評価などに応じて個人の給与が上がる仕組みです。

一方、ベースアップは賃金表そのものを引き上げるものです。

給与連動型の企業年金では、賃金表の引き上げが将来の給付計算にも影響する場合があります。

ベースアップが続けば、現役時代の給与だけでなく企業年金の給付水準にも影響が積み重なる可能性があります。

インフレ時代の賃上げは、老後所得を考えるうえでも重要になります。

すべてのDBが給与連動型ではない

一方、基本給が上がっても企業年金に直接反映されないDBもあります。

代表的なのがポイント制です。

例えば勤続年数や役職などに応じて毎年一定のポイントを付与し、退職時までに積み上がったポイントを基に給付額を計算します。

この場合、基本給が増えたからといって給付額が同じ割合で増えるとは限りません。

ポイント単価や付与基準が変更されなければ、賃上げとは別に給付額が決まる場合があります。

企業年金を確認するときには、DBがあるかどうかだけでなく、給付額の計算方法まで見ることが重要です。

インフレ時代には給与連動の意味が大きくなる

物価が上昇すると、同じ100万円でも将来の実質的な価値は低下します。

企業年金の給付額が長期間固定されていれば、物価上昇によって実質的な購買力が低下する可能性があります。

一方、給与が物価上昇などを背景に引き上げられ、その給与が企業年金の給付計算にも反映される仕組みであれば、給付額も上昇する可能性があります。

もちろん賃金上昇が物価上昇を完全に補えるとは限りません。

それでも給与連動型の仕組みは、インフレ局面で企業年金の名目給付額が上昇する経路の一つになります。

企業にとっては将来の負担も増える

従業員にとって企業年金の増加はメリットですが、企業側から見ると別の面があります。

給与水準が上昇し、それに連動して将来の年金給付額も増えれば、企業が準備すべき年金資金も増える可能性があります。

つまり賃上げは現在の人件費を増やすだけではありません。

企業年金や退職給付制度によっては、将来の負担にも影響します。

企業が賃金制度を見直すときには、給与だけでなく退職金や企業年金を含めた総額人件費を考える必要があります。

賃上げと企業年金は企業財務の面でもつながっています。

自分の会社の制度を確認する

会社員がまず確認したいのは、自分の勤務先にどのような企業年金制度があるかです。

DBなのか、DCなのか、両方あるのか。

DBであれば給付額を何を基準に計算するのか。

基本給、勤続年数、ポイント、金利など、制度によって給付額を左右する要素は違います。

賃上げが行われたときには、給与明細だけを見るのではなく、退職金や企業年金にどのような影響があるのかまで確認すると、その賃上げの本当の価値が見えやすくなります。

結論

賃上げによって企業年金が増えるかどうかは、勤務先のDBの給付設計によって変わります。

給与水準と連動して給付額を決めるDBでは、基本給が上昇すると将来受け取る企業年金も増える可能性があります。

一方、ポイント制など給与と直接連動しない制度では、基本給が上がっても企業年金が同じように増えるとは限りません。

また、同じ月1万円の賃上げでも、基本給が増えるのか手当が増えるのかによって長期的な効果が異なる場合があります。

インフレ時代の賃上げを見るときには、現在の給与だけで判断するのではなく、賞与、退職金、企業年金まで含めて考えることが重要です。

給与明細に表れる賃上げの先に、退職後の所得まで増える仕組みがあるかどうかを確認しておきたいところです。

参考

日本経済新聞 2026年9月25日朝刊 インフレ下の企業年金(1)「企業、給付額増を検討」

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