会社が予算を立てるときには、通常、売上高について目標となる金額を設定します。
たとえば、ある商品の今月の売上予算を1000万円とします。
ところが月末になって実績を確認すると、売上は900万円でした。
この場合、予算に対して100万円の売上未達です。
ここで「100万円足りなかった」と確認するだけなら簡単です。
しかし、それだけでは翌月に何を改善すればよいのか分かりません。
売れた商品の数が少なかったのでしょうか。それとも、予定より安い価格で販売したのでしょうか。
同じ100万円の売上未達でも、原因によって取るべき対策は変わります。
そこで必要になるのが、売上差異分析です。
売上高の基本構造
売上差異を考えるためには、まず売上高がどのように決まるのかを理解する必要があります。
商品の売上高は、基本的には販売数量と販売単価によって決まります。
たとえば、1個1万円の商品を1000個販売する計画を立てていたとします。
売上予算は1000万円です。
ところが実際には900個しか販売できなかったとします。
販売単価が1万円のままであれば、売上実績は900万円です。
売上は予算より100万円少なくなります。
このケースでは、販売価格に問題があったわけではありません。
予定していた数量を販売できなかったことが、売上未達の原因です。
一方、1000個を販売できたものの、平均販売単価が9000円だった場合も、売上実績は900万円になります。
こちらは販売数量ではなく、販売単価が予算を下回ったことが原因です。
同じ100万円の売上未達でも、中身はまったく違うのです。
数量差異とは何か
販売数量が予算と違ったことによって生じる売上の差を、数量差異として考えることができます。
先ほどの例では、1個1万円の商品を1000個販売する計画でした。
ところが実際には900個しか販売できませんでした。
100個の販売不足です。
この100個の不足が、売上を100万円押し下げています。
重要なのは、ここからさらに原因を掘り下げることです。
なぜ100個少なくなったのでしょうか。
参考記事では、売上未達を掘り下げた結果、主力製品の販売数量減少が判明し、さらに主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分に減っていたところまで原因を追っています。
つまり、
売上が予算を下回った
販売数量が減った
主要得意先への訪問回数が減った
というように、数字から実際の業務へと原因を掘り下げています。
販売数量の減少まで確認しただけでは、まだ具体的な行動は決まりません。
なぜ数量が減ったのかまで調べることによって、改善策を考えられるようになります。
単価差異とは何か
売上差異のもう一つの重要な要素が、販売単価です。
予定していた数量を販売できても、販売価格が予算より低ければ売上は予算を下回ります。
たとえば、1個1万円の商品を1000個販売する計画だったとします。
予定通り1000個販売できたとしても、値引きによって平均販売単価が9000円になれば、売上は900万円です。
販売数量だけを見ると予算を達成しています。
しかし売上金額は100万円不足しています。
この場合、営業担当者に「もっと販売数量を増やしてください」と指示しても、問題の本質を捉えていません。
確認すべきなのは、なぜ平均販売単価が下がったのかです。
販売数量を増やすために値引きをしたのかもしれません。
競合他社との価格競争が激しくなった可能性もあります。
高価格の商品が売れず、低価格の商品が多く売れたことで平均単価が低下した場合もあります。
単価差異についても、単価が下がったという事実だけで終わらず、その背景まで確認する必要があります。
数量と単価が同時に変わることもある
実際の経営では、数量だけ、あるいは単価だけが変化するとは限りません。
両方が同時に変わることがあります。
たとえば、1個1万円の商品を1000個販売し、1000万円を売り上げる予算だったとします。
実際には950個しか売れず、さらに平均販売単価も9500円になったとします。
この場合、売上実績は902万5000円です。
予算1000万円に対して97万5000円の未達となります。
この97万5000円を一つの数字として見るだけでは、原因が分かりません。
販売数量が減った影響と、販売単価が下がった影響が重なっているからです。
そこで数量と単価という二つの方向から分析します。
こうすることで、販売活動そのものに問題があるのか、価格政策に問題があるのか、それとも両方を改善する必要があるのかを考えやすくなります。
売上未達の責任を一括りにしない
売上差異分析が重要な理由の一つは、売上未達を単純に営業担当者の責任として処理しないためです。
売上が予算を100万円下回ったとしても、その原因にはさまざまなものがあります。
訪問件数が減ったため販売数量が落ちたのであれば、営業活動を改善できる可能性があります。
一方で、市場全体の需要が急激に縮小したのであれば、営業担当者だけでは解決できません。
競合他社の値下げによって販売価格を引き下げざるを得なかった場合もあります。
会社の生産能力不足によって商品を十分に供給できず、販売数量が減った可能性もあります。
売上未達という結果だけを見て責任を決めてしまうと、本当の原因を見落としてしまいます。
大切なのは、誰が悪かったのかを最初に考えることではなく、どの数字が、なぜ変化したのかを確認することです。
数量差異から営業活動へ掘り下げる
数量差異が大きかった場合には、さらに営業活動などの具体的な数字へ分解できます。
たとえば、販売数量が減少した原因として、顧客への訪問件数が減っている可能性があります。
訪問件数が減れば商談件数が減り、商談件数が減れば受注件数が減るという流れが考えられます。
すると、売上という最終結果だけを見るのではなく、その前段階にある活動まで確認する必要があります。
参考記事では、主要得意先への訪問回数が半分になっていたことが判明した後、上位10社への訪問を月2回に戻すという具体的な行動まで落とし込んでいます。
さらに、営業部長が担当し、今月中に訪問予定を組み直し、来月の予実会議で販売数量の推移を確認するところまで具体化しています。
ここまで決めれば、売上差異分析が実際の営業改善につながります。
単価差異から価格政策へ掘り下げる
単価差異についても同じです。
平均販売単価が予算を下回っているのであれば、なぜ値段が下がったのかを確認します。
営業担当者が独自判断で値引きを増やしているのであれば、値引きルールを見直す方法があります。
競争環境が変化しているのであれば、商品そのものの付加価値や価格設定を見直す必要があるかもしれません。
低価格商品の販売割合が増えたのであれば、商品構成を分析する必要があります。
つまり、単価差異も単なる数字ではありません。
会社の価格政策や営業戦略に問題がないかを考えるための手掛かりになります。
売上差異分析を次の行動につなげる
売上差異分析の目的は、数量差異と単価差異を計算して資料に載せることではありません。
重要なのは、その結果から次の行動を決めることです。
数量減少の原因が顧客訪問の減少なら、訪問回数を増やします。
単価低下の原因が過度な値引きなら、値引きの承認方法を見直します。
そして翌月、本当に行動が実行されたのか、その結果として数量や単価が改善したのかを確認します。
参考記事でも、翌月の予実会議では先月決めたアクションを検証し、効果があれば続け、効果がなければ別の手を打つという流れが示されています。
数字を分析して終わるのではなく、分析、行動、検証を繰り返すことによって予実管理が経営改善につながるのです。
結論
売上差異分析とは、予算と実績の売上金額の差を確認するだけではなく、その差がなぜ生まれたのかを販売数量と販売単価に分けて考える方法です。
同じ100万円の売上未達でも、販売数量が不足した場合と販売単価が下がった場合では、取るべき対策が違います。
さらに数量が減ったのであれば、なぜ数量が減ったのかを営業活動などまで掘り下げます。
単価が下がったのであれば、値引きや競争環境、商品構成などを確認します。
売上未達という結果だけで営業担当者を評価するのではなく、数字を分解して本当の原因を探すことが重要です。
売上差異分析とは、過去の数字を説明するための作業ではありません。
次に何を変えれば売上が改善するのかを見つけるための仕組みなのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで