大胆な投資促進税制を利用するためには、対象設備を取得するだけでは足りません。
一定の要件を満たす特定機械装置等を取得等し、国内にある法人の事業の用に供することが重要になります。
税制では、この事業の用に供するという言葉がよく使われます。
一見すると、設備を購入した日と同じように思えるかもしれません。
しかし、大型設備では契約日、購入代金の支払日、納品日、据付日、試運転日、本格稼働日がそれぞれ異なることがあります。
そのため、設備を買った日と事業で実際に使い始めた日を分けて考える必要があります。
設備を購入しただけでは事業で使っているとは限らない
たとえば企業が大型の製造機械を購入したとします。
機械メーカーから納品を受け、会社の工場に搬入されました。
しかし、まだ据付工事が終わっていません。
電源にも接続されておらず、製品を製造することもできません。
この状態では、会社が機械を取得していたとしても、実際の生産活動にはまだ利用できません。
設備の取得と事業での使用開始には時間差が生じることがあるわけです。
事業供用とは実際に事業で使用できる状態になること
事業の用に供することを考えるときには、その資産が法人の事業活動に実際に使用される状態になっているかが重要です。
製造機械であれば、設置されて製造活動に使用できる状態になっているか。
建物であれば、完成しただけではなく事業活動のために使用されているか。
ソフトウエアであれば、購入や開発が終わっただけではなく実際の業務で利用を開始しているか。
資産の種類によって具体的な状況は異なります。
単に代金を支払ったという事実だけで判断するものではありません。
契約日と事業供用日は違う
大型設備では、契約から実際の稼働まで長い時間がかかります。
たとえば今年、機械メーカーと設備購入契約を締結したとします。
実際に機械が完成するのは翌年かもしれません。
工場への搬入がさらにその数カ月後になることもあります。
その後に据付工事を行い、試運転を経て生産を開始します。
この場合、契約日と事業供用日には大きな時間差があります。
設備投資税制の期限を考える際に、契約日だけを管理していては十分ではありません。
支払日とも一致しない
設備代金の支払日も事業供用日とは別です。
大型設備では、契約時に前払金を支払い、製造途中で中間金を支払い、完成後に残金を支払う契約もあります。
設備が完成する前に多額の代金を支払っていることもあります。
反対に、設備が稼働を始めた後に最終代金を支払うケースも考えられます。
したがって、現金がいつ出ていったのかという資金管理と、設備をいつ事業の用に供したのかという税務上の判断は分けて考える必要があります。
据付けが必要な設備では特に注意する
大型の製造機械は、工場へ運び込んだだけでは使用できないことがあります。
基礎工事を行います。
機械を固定します。
電気や配管を接続します。
周辺設備と連動させます。
そして試運転を行います。
こうした工程を経て、初めて生産活動に利用できる状態になります。
そのため、納品書に記載された日付だけを見て事業供用日を判断するのは注意が必要です。
試運転と本格稼働の関係も考える
設備によっては、本格的な生産を始める前に長期間の試運転を行います。
ここで難しいのが、どの段階から事業の用に供したと考えるのかという問題です。
単なる調整や性能確認のための試運転なのか。
実際の事業活動の一環として稼働しているのか。
具体的な使用状況を確認する必要があります。
本格稼働という社内名称だけで一律に決まるとは限らないため、実際の設備の状態や使用実態を確認することが重要です。
建物でも完成日だけでは判断できない場合がある
建物についても同じ問題があります。
新工場の建物が完成したとしても、中に製造設備が設置されておらず、まだ工場として使用していない場合があります。
物流施設でも、建物が完成してから物流業務を開始するまで時間が空くことがあります。
税制上の事業供用を考える場合には、建物が完成したという事実だけではなく、実際に法人の事業活動に利用されているかという視点が重要です。
建物、建物附属設備、機械装置などで使用開始時期が異なることもあります。
ソフトウエアにも使用開始時期がある
大胆な投資促進税制では、一定のソフトウエアも対象資産になり得ます。
ソフトウエアの場合にも、取得日と実際の利用開始日が異なることがあります。
システムを導入しても、設定やデータ移行、従業員教育などが必要になる場合があります。
システム開発が完了していても、旧システムから新システムへの切替えが数カ月後というケースもあります。
設備投資税制を考える際には、機械だけでなくデジタル資産についても実際の利用開始時期を管理する必要があります。
事業供用日を説明できる資料を残す
事業供用日が重要になるのであれば、後からその日を説明できるようにしておくことも大切です。
たとえば設備の据付完了記録があります。
試運転の記録があります。
生産開始の記録があります。
固定資産台帳への登録資料があります。
社内の稼働開始報告などが残っている場合もあります。
どの資料が必要になるかは設備の種類や状況によって異なりますが、取得価額だけでなく使用開始時期を確認できる資料を整理しておくことが重要です。
税務部門と現場の情報をつなぐ
事業供用日を最もよく知っているのは、必ずしも経理部門ではありません。
製造機械なら工場の担当者が把握しているでしょう。
建物なら施設担当者が詳しいかもしれません。
システムなら情報システム部門が利用開始日を管理しています。
一方、税制適用を判断するのは経理や税務部門です。
そのため、大型設備投資では現場から事業供用に関する情報が経理部門へ届く仕組みをつくることが重要になります。
結論
大胆な投資促進税制では、対象設備を取得しただけではなく、国内にある法人の事業の用に供することが重要になります。
設備投資では、契約日、発注日、支払日、納品日、据付日、試運転日、稼働開始日がすべて同じとは限りません。
特に大型機械や新工場では、設備を取得してから実際に事業活動で利用できるまで長い時間がかかることがあります。
そのため、購入代金を支払った日や設備が工場へ届いた日だけで判断するのではなく、実際に事業活動に使用される状態になった時期を確認することが重要です。
さらに、その時期を後から説明できるよう、据付けや稼働開始などに関する資料を整理しておく必要があります。
設備投資税制では、いくらで買ったのかだけでなく、いつ事業で使い始めたのかも重要です。
大胆な投資促進税制を適切に利用するためには、設備の取得から稼働開始までを一つの流れとして管理することが大切になります。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について