大胆な投資促進税制を利用するとき、対象設備や税額控除率と並んで重要になるのが期限です。
令和8年度税制改正で創設された同制度では、産業競争力強化法に基づく確認について期間が定められています。
対象となるのは、改正産業競争力強化法の施行日である令和8年7月31日から令和11年3月31日までの間に確認を受けたものです。
ここだけを見ると、令和11年3月31日までに設備を購入しなければならない制度のように思えるかもしれません。
しかし、制度の時間軸はそれほど単純ではありません。
確認を受ける期限と、その後に設備を取得して事業の用に供する期限を分けて考える必要があります。
まず令和8年7月31日が出発点になる
大胆な投資促進税制では、改正産業競争力強化法の施行日である令和8年7月31日が重要な日付になります。
制度では、この日から令和11年3月31日までの期間内に産業競争力強化法の確認を受けた特定生産性向上設備等が関係します。
つまり、税制適用の時間軸を考えるときには、単に法人の事業年度だけを見るのではありません。
産業競争力強化法側の確認時期も確認する必要があります。
令和11年3月31日は何の期限なのか
特に注意したいのが、令和11年3月31日という日付の意味です。
これは、今回示された制度について産業競争力強化法の確認を受ける期間の終期です。
したがって、
令和11年3月31日までに設備をすべて取得しなければならない
令和11年3月31日までに設備をすべて稼働させなければならない
という意味だと単純に理解するのは適切ではありません。
確認の期限と、その後の取得等や事業供用の期限は分けて整理する必要があります。
確認を受けた日から5年間という時間軸がある
大胆な投資促進税制では、確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの間に、対象となる特定機械装置等の取得等を行い、国内にある法人の事業の用に供することが関係します。
ここで新たに重要になるのが、確認を受けた日です。
すべての企業に共通する1つの取得期限が設定されているのではなく、確認日を起点として一定期間を管理する仕組みになっています。
そのため、同じ大胆な投資促進税制を利用する企業でも、確認を受けた日によって設備投資のスケジュールが異なることになります。
早く確認を受けた企業と遅く受けた企業では期限が違う
たとえば、ある企業が制度開始後の比較的早い時期に確認を受けたとします。
その企業は、その確認日を基準として5年間のスケジュールを管理することになります。
一方、別の企業が令和11年3月31日に近い時期に確認を受けた場合には、その企業の5年間はより後の時期まで続くことになります。
つまり、令和11年3月31日という確認期間の終了日と、個々の設備投資についての最終的な期限は同じではありません。
ここを区別しておかないと、制度を利用できる期間を誤解する可能性があります。
大型設備では5年間という期間に意味がある
なぜ確認後すぐに設備を取得することだけを求めず、一定期間が設けられているのでしょうか。
大型設備投資には時間がかかるからです。
新工場を建設する場合には、設計、建設、設備発注、据付け、試運転など多くの工程があります。
特殊な製造設備では、発注してから完成まで長期間かかることもあります。
海外メーカーから大型機械を調達する場合などには、製造や輸送にも時間が必要です。
そのため、確認を受けた直後にすべての設備を取得して稼働させることが難しい投資もあります。
一定の期間を設けることで、大規模な投資プロジェクトにも対応できる仕組みになっています。
取得だけでなく事業供用まで考える
期限管理でもう一つ重要なのが、設備の取得だけを見ないことです。
制度では、対象設備を取得等して、国内にある法人の事業の用に供することが関係します。
大型機械を購入して工場へ搬入したとしても、すぐに生産活動に使えるとは限りません。
据付工事が必要な場合があります。
試運転が必要な場合もあります。
建物であれば、完成してから実際の事業活動を開始するまで時間が空くこともあります。
したがって、設備の納入予定だけで期限管理を行うのではなく、実際の事業供用予定まで含めてスケジュールを組むことが重要です。
契約日や支払日だけでは判断できない
企業内部では、設備投資を契約日や支払日で管理していることがあります。
しかし、税制上重要になる日付と、社内の資金管理上重要になる日付は必ずしも同じではありません。
契約した日
発注した日
代金を支払った日
設備を取得した日
設備を事業の用に供した日
産業競争力強化法の確認を受けた日
これらを区別して管理する必要があります。
大型投資ほど日付が何年にもまたがるため、時系列を整理しておくことが重要になります。
事業年度をまたぐ投資では特に注意する
設備投資が複数の事業年度にまたがる場合には、さらに管理が複雑になります。
たとえば1つの工場建設プロジェクトでも、建物の完成時期と機械装置の導入時期が異なることがあります。
設備ごとに取得や事業供用の時期が違うこともあります。
そのため、プロジェクト全体を1つの日付で管理するのではなく、対象となる設備ごとに確認することが重要です。
どの設備がいつ取得され、いつ事業の用に供されたのかを固定資産台帳などと連携して管理する必要があります。
確認が遅れれば投資計画にも影響する
税制を利用する予定で設備投資を進めていても、必要な確認手続きを投資計画に組み込んでいなければ問題になる可能性があります。
特に令和11年3月31日という確認期間の終了日が近づけば、設備投資の計画だけでなく確認手続きのスケジュールも重要になります。
税務部門が決算直前になって制度の存在に気付いても、必要な確認期間を過ぎていれば対応できない可能性があります。
だからこそ、税制は設備を購入した後の申告処理ではなく、投資計画の一部として考える必要があります。
社内では複数の日付を一元管理する
大胆な投資促進税制を利用する大型プロジェクトでは、税制用のスケジュールを作成しておくと分かりやすくなります。
産業競争力強化法の確認日があります。
設備の契約日があります。
発注日があります。
取得予定日があります。
据付完了日があります。
事業供用予定日があります。
これらを一つの時系列に並べることで、制度上の期限に間に合うかを確認しやすくなります。
経営企画、設備、製造、購買、経理、税務などの部門が同じスケジュールを共有することも重要です。
結論
大胆な投資促進税制の期限を理解するときには、令和11年3月31日だけを覚えるのでは不十分です。
まず、産業競争力強化法の確認を受ける対象期間が令和8年7月31日から令和11年3月31日までとされています。
そのうえで、確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの間に、対象設備の取得等を行い、国内にある法人の事業の用に供することが関係します。
つまり、確認期限と設備投資の期限は同じではありません。
さらに、契約日、発注日、支払日、取得日、事業供用日も区別する必要があります。
特に新工場などの大型投資では、計画から稼働まで何年もかかることがあります。
大胆な投資促進税制を活用するためには、税額控除率や即時償却だけでなく、確認から事業供用までの時間軸を管理することが重要です。
制度の期限は決算時に確認するものではなく、投資計画を立てる時点から管理すべき要件と考える必要があります。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について