設備投資と聞くと、工場の機械や建物を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、企業の生産性を左右する設備は、目に見える機械だけではなくなっています。
生産管理システム、物流管理システム、自動制御システムなど、ソフトウエアが企業の事業活動の中核を担うケースが増えています。
令和8年度税制改正で創設された大胆な投資促進税制でも、対象となる資産には一定のソフトウエアが含まれています。
ただし、ソフトウエアを購入すれば何でも税制優遇を受けられるわけではありません。
機械装置などと同様に、制度が定める要件を満たすことが必要です。
設備投資は有形資産だけではなくなった
かつて設備投資の中心は、工場、製造機械、倉庫などの有形資産でした。
現在は事情が変わっています。
製造現場では、機械の稼働状況をシステムで管理します。
物流では、商品の在庫や配送状況をリアルタイムで把握します。
小売業では、販売データを分析して発注量を調整します。
企業活動のさまざまな場面で、ソフトウエアが設備と一体となって動いています。
そのため、生産性向上のための投資を考える場合、デジタル投資を無視することはできなくなっています。
大胆な投資促進税制にもソフトウエアが含まれる
大胆な投資促進税制では、生産等設備を構成する一定の資産が対象になります。
機械装置だけではありません。
工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物に加えて、一定のソフトウエアも対象資産に含まれます。
ここから分かるのは、政府が企業の生産性向上を物理的な設備だけで考えていないということです。
機械とデジタル技術を組み合わせた投資も重要になっています。
ソフトウエアなら何でも対象になるわけではない
もっとも、会社が使用するすべてのソフトウエアが大胆な投資促進税制の対象になるわけではありません。
制度では、生産等設備を構成する一定の資産であり、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当することなどが重要になります。
したがって、単に業務用ソフトウエアを購入したという事実だけでは判断できません。
そのソフトウエアがどのような事業活動に使われるのか。
生産等設備をどのように構成しているのか。
制度上の特定生産性向上設備等に該当するのか。
こうした点を確認する必要があります。
生産管理システムを考える
製造業では、生産管理システムが重要な役割を果たしています。
どの製品をいつ製造するのかを管理します。
必要な原材料を把握します。
機械の稼働状況を管理します。
製品の品質や製造履歴を記録することもあります。
こうしたシステムによって、在庫を減らしたり、生産時間を短縮したり、不良品を減らしたりできる可能性があります。
機械そのものを新しくしなくても、システムの高度化によって工場全体の生産性が上がる場合があります。
デジタル投資が設備投資として重要になる理由です。
機械とソフトウエアが一体になるケースもある
最近の製造設備では、機械とソフトウエアを明確に分けにくい場合があります。
工作機械をコンピューターで制御することがあります。
複数の機械をネットワークで接続し、稼働状況を一元管理することもあります。
センサーから集めたデータを分析し、設備の故障を予測する仕組みもあります。
このような設備投資では、機械だけを見ても投資の全体像は分かりません。
ハードウエアとソフトウエアを組み合わせて、初めて生産性向上が実現する場合があります。
DX投資と税制の関係が深くなる
DXとは、単に紙を電子化したり、パソコンを新しくしたりすることではありません。
デジタル技術を使って業務や事業そのものを変えていく考え方です。
たとえば工場の生産状況をリアルタイムで把握し、需要に応じて生産量を自動調整できれば、在庫や人員配置を効率化できます。
物流データと販売データを連携させれば、商品の欠品や過剰在庫を減らせる可能性があります。
このような投資では、ソフトウエアが企業の生産性を左右する重要な資産になります。
設備投資税制がソフトウエアを対象に含める意味は大きいといえます。
クラウドサービスとの違いにも注意する
デジタル投資では、企業がソフトウエアそのものを取得するとは限りません。
現在はクラウドサービスを利用し、毎月利用料を支払う形も一般的です。
この場合、企業が税務上のソフトウエアという減価償却資産を取得しているのか、それとも単にサービスの提供を受けて利用料を支払っているのかという違いが生じます。
大胆な投資促進税制は対象となる資産の取得等を前提とする制度です。
したがって、デジタル投資だから一律に対象になると考えるのではなく、その契約によって企業が何を取得しているのかを確認することが重要です。
自社開発の場合も資産性の確認が必要になる
企業がソフトウエアを外部から購入するのではなく、自社で開発する場合もあります。
この場合には、開発に要した費用が税務上どのように取り扱われるのかという問題があります。
すべての開発費が自動的にソフトウエアという資産になるわけではありません。
どのような目的で開発したのか、税務上どのように処理されるのかを確認する必要があります。
大胆な投資促進税制を検討する前提として、まず対象となる資産が税務上どのような資産なのかを整理することが重要です。
ソフトウエアにも事業供用日がある
ソフトウエアについても、取得した日と事業で使い始めた日が同じとは限りません。
システムを購入した後に設定作業を行うことがあります。
既存データを移行することもあります。
従業員への研修期間を設ける場合もあります。
テスト運用を経て、本番環境へ切り替えることもあります。
そのため、ソフトウエアについても実際に事業活動で使用を開始した時期を管理することが重要です。
前回取り上げた事業の用に供するという考え方は、機械装置だけでなくソフトウエアにも関係します。
デジタル投資でも事前確認が重要になる
大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法に基づく確認も重要になります。
したがって、大規模なシステム投資を行った後で税制が使えるかを検討するのではなく、投資計画の段階から対象になる可能性を確認する必要があります。
どのソフトウエアを導入するのか。
どの事業に利用するのか。
どのように生産性向上につながるのか。
取得なのかサービス利用なのか。
いつ事業で利用を開始するのか。
こうした点を事前に整理しておくことが重要になります。
結論
大胆な投資促進税制の対象となり得るのは、工場や製造機械などの有形資産だけではありません。
一定のソフトウエアも対象資産に含まれています。
企業の生産性を高める設備投資が、機械中心からデジタルを組み合わせた投資へ広がっていることを示しています。
ただし、会社が利用するソフトウエアなら何でも対象になるわけではありません。
生産等設備を構成する資産であることや、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当することなど、制度上の要件を確認する必要があります。
さらに、クラウドサービスのようにソフトウエアそのものを取得しない契約もあります。
デジタル投資では、何にお金を使ったのかだけでなく、税務上何を取得したのかを確認することが重要です。
これからの設備投資は、機械かソフトウエアかという二者択一ではありません。
機械とデジタル技術を組み合わせて生産性を高める投資が増えるほど、税制についても両方を一体として検討する視点が重要になります。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について