自己株式の取得とは何か 会社が自社株を買い戻す仕組み編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

会社は新たに株式を発行して資金を集めることがあります。

では、一度発行した株式を会社自身が買い戻すことはできるのでしょうか。

答えは「できます」。

会社が自社の株式を株主から買い取ることを「自己株式の取得」といいます。

近年では、上場企業による自社株買いがニュースになることも珍しくありません。しかし、実は非上場会社でも自己株式の取得は頻繁に行われています。

特に事業承継や株主構成の見直しでは、非常に重要な手法です。

今回は、自己株式の取得とはどのような制度なのか、その基本的な仕組みを解説します。


自己株式とは何か

自己株式とは、会社が自社で発行した株式を取得して保有している株式のことです。

通常、株式は株主が保有しています。

しかし、会社が株主から株式を買い取ると、その株式は会社自身が保有することになります。

これが自己株式です。

会社が自分自身の株式を持つという点で、少し不思議に感じるかもしれませんが、会社法で認められている制度です。


なぜ会社が株式を買い取るのか

自己株式を取得する理由は一つではありません。

非上場会社では、次のような場面で利用されることがあります。

  • 退任する経営者や役員から株式を買い取る
  • 相続人が取得した株式を会社が引き取る
  • 株主数を整理する
  • 事業承継の準備を進める
  • 株主間のトラブルを解消する

例えば、創業者が亡くなり、相続人が会社経営に関与しない場合でも、自社株を相続することがあります。

そのままにすると株主が分散し、将来の経営に支障をきたす可能性があります。

そこで会社が株式を買い取り、株主構成を整理することがあります。


上場会社の自社株買いとの違い

上場会社でも自社株買いはよく行われます。

目的は、

  • 株主還元
  • 一株当たり利益(EPS)の向上
  • 株価対策

などが中心です。

一方、非上場会社では事情が異なります。

株価対策というより、

事業承継や経営権の安定

が大きな目的になります。

同じ「自己株式の取得」でも、上場会社と非上場会社では利用目的が大きく異なるのです。


株主にとっては株式の売却になる

会社が株式を取得するということは、

株主から見ると株式を売却することになります。

つまり、

会社側には自己株式の取得、

株主側には株式の譲渡、

という二つの側面があります。

しかし、税務では通常の株式譲渡とは異なる取扱いが適用される場合があります。

講義資料でも、自己株式の取得は通常の株式譲渡とは異なる課税関係が生じるため、特有の税務上の検討が必要であることが説明されています。


最大の特徴は「みなし配当」

自己株式の取得で最も重要なのが、

みなし配当

という制度です。

会社が株式を買い取る場合、

受け取った代金のすべてが株式の売却代金になるとは限りません。

一定の場合には、

売却代金の一部が「配当を受け取ったもの」とみなされることがあります。

この仕組みが、通常の株式譲渡との最も大きな違いです。

実務でも、多くの税務判断は、このみなし配当の有無を中心に行われます。


株価の決め方も重要になる

自己株式を取得する際にも、

株価を自由に決められるわけではありません。

高すぎても、

安すぎても、

税務上の問題になる可能性があります。

そのため、

非上場株式の評価方法によって適正な株価を求めたうえで取得価格を決定することが重要になります。

これまで学んできた原則評価方式や配当還元方式も、この場面で活用されます。


事業承継では重要な選択肢になる

自己株式の取得は、事業承継でも有効な手法の一つです。

例えば、

後継者が取得しない株式を会社が引き取ることで、

株式を後継者へ集中させやすくなります。

また、

相続人が現金を必要としている場合には、

会社が株式を買い取ることで資金を確保できるというメリットもあります。

一方で、

税務上の取扱いを誤ると、想定外の課税が生じることもあります。

そのため、自己株式の取得は、会社法だけではなく税法も十分に理解した上で進めることが重要です。


今後学ぶ重要テーマ

自己株式の取得は、一見すると単純な株式売買のように見えます。

しかし実際には、

  • みなし配当
  • 譲渡所得
  • 法人税
  • 株価評価

など、さまざまな税務が関係します。

講義資料でも、この部分に多くのページが割かれており、実務上の重要論点であることが分かります。

次回以降は、自己株式取得で最も重要な論点である「みなし配当」について詳しく解説していきます。


結論

自己株式の取得とは、会社が自社の株式を株主から買い取る制度です。

非上場会社では、事業承継や株主構成の見直し、経営権の安定などを目的として活用されることが多くあります。

一方で、通常の株式譲渡とは異なり、「みなし配当」という特有の税務ルールが適用されることがあり、適正な株価評価も欠かせません。

自己株式の取得は、会社法と税法の両方を理解することが求められる実務上重要なテーマです。次回は、この制度の中心となる「みなし配当とは何か」を分かりやすく解説します。


参考

東京地方税理士会「非上場株式を譲渡・移転する場合の税務 自己株式を買取る場合の課税上の注意点」講義資料 江本尚浩税理士・東京国際大学非常勤講師

タイトルとURLをコピーしました