企業経営者にとって、会社の資産と個人の資産は切り離して考えられない時代になっています。
会社の利益をどのように投資へ回すのか。退職金をどのように運用するのか。事業承継後の資産をどう守り、次世代へ引き継ぐのか。
これらは税務だけでは答えが出ない課題です。
近年、国内の投資ファンドが富裕層から資金を集め、中堅・中小企業へ投資する動きも始まりました。オーナー経営者の資産運用の選択肢は、上場株式や不動産だけではなく、未公開企業やプライベートエクイティ(PE)ファンドへも広がっています。
こうした時代に、税理士の役割も変化していくのではないでしょうか。
税務相談だけでは経営者の悩みは解決できない
従来、税理士への相談は、
・節税
・決算対策
・申告書作成
・税務調査対応
が中心でした。
しかし、オーナー経営者が本当に悩んでいるのは、
「会社に利益が残ったが、どう活用すべきか」
「個人資産をどう運用すればよいのか」
「会社を売却した後のお金をどう守るのか」
といった資産全体に関わるテーマです。
税務だけを説明しても、経営者が求める答えには届かない場面が増えています。
経営者の資産は会社と一体で考える
オーナー経営者の場合、
会社の資産
個人資産
家族資産
相続財産
これらは密接につながっています。
例えば、
役員報酬を増やすべきか。
退職金を準備すべきか。
会社で投資するか、個人で投資するか。
自社株をいつ承継するか。
こうした判断は税金だけではなく、将来の資産形成や事業承継まで見据えて考える必要があります。
税理士には、資産全体を俯瞰する視点が求められるようになるでしょう。
投資商品の知識も必要になる
これからの経営者は、
NISA
iDeCo
不動産
海外ETF
PEファンド
プライベートクレジット
など、多様な資産へ投資する可能性があります。
税理士自身が投資商品を販売することはできません。
しかし、それぞれの特徴や税務上の取り扱いを理解していれば、顧客が判断する際の重要な助言者になることはできます。
「税金だけ知っている税理士」から、「資産形成全体を理解する税理士」への進化が求められる時代です。
専門家との連携がさらに重要になる
資産運用には、
証券会社
銀行
IFA
弁護士
司法書士
不動産会社
保険代理店
など、多くの専門家が関わります。
税理士がすべてを一人で担う必要はありません。
それぞれの専門家と連携しながら、税務という視点から全体を整理し、最適な方向性を示すことが重要です。
専門家をつなぐコーディネーターとしての役割は、今後ますます大きくなるでしょう。
AI時代だからこそ人間にしかできない助言がある
税額計算や申告書作成はAIによる自動化が進んでいきます。
しかし、
経営者の価値観
家族構成
会社の将来像
事業承継への思い
人生設計
まで踏まえた提案は、人間同士の対話が欠かせません。
AIは情報を整理できますが、「どの選択がその経営者にとって最善なのか」を一緒に考えることは、税理士の重要な役割として残り続けるでしょう。
税理士自身も学び続ける必要がある
これからの税理士には、
金融
投資
相続
事業承継
企業価値評価
ファイナンシャルプランニング
など、税法以外の知識も求められます。
学び続ける税理士ほど、顧客から長く信頼される存在になるでしょう。
税理士という資格はゴールではなく、経営者を支える総合アドバイザーとして成長し続けるためのスタートラインなのです。
結論
オーナー経営者の悩みは、税務だけでは解決できない時代になっています。
資産形成、事業承継、投資、相続などを一体で考える視点が求められ、税理士にもより幅広い知識と提案力が期待されるようになるでしょう。
税理士自身が金融商品を販売する必要はありません。しかし、経営者の人生と会社の未来を見据え、多様な専門家と連携しながら最適な選択肢を示す存在になることはできます。
AIの普及によって定型業務が自動化される時代だからこそ、経営者に寄り添い、人生全体を見据えた助言ができる税理士の価値は、これまで以上に高まっていくのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年6月26日 朝刊)
富裕層マネー、国内循環狙う ユニゾンが新ファンド 中堅・中小を買収 産業再編促す