簡易課税の2年縛りとは何か 消費税率引下げで特例的に解除される理由編

税理士
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消費税の簡易課税制度を選択すると、原則として一度適用しただけですぐに本則課税へ戻ることはできません。

一定期間、簡易課税を継続する必要があります。

一般に簡易課税の2年縛りと呼ばれるルールです。

ところが2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1パーセントへの引下げでは、この2年縛りについて特例的な対応が設けられます。

なぜ税率を下げるだけで、簡易課税の継続期間まで見直す必要があるのでしょうか。

簡易課税は事業者が選択する制度

簡易課税は、一定の要件を満たす事業者が選択できる消費税の計算方法です。

本則課税では、売上にかかる消費税額から、実際の仕入れや経費について控除できる消費税額を差し引きます。

これに対して簡易課税では、実際の仕入税額を使わず、売上税額に業種ごとのみなし仕入率を掛けて仕入税額を計算します。

経理事務を簡素化できることが大きな特徴です。

ただし、簡易課税を選択した後に、その年の損得を見て自由に本則課税へ切り替えられるわけではありません。

なぜ2年縛りがあるのか

もし事業者が毎年、簡易課税と本則課税のどちらが有利かを確認してから自由に選べるとしたらどうでしょうか。

仕入れが少ない年には簡易課税を利用し、大規模な設備投資をして仕入税額が大きくなる年だけ本則課税へ変更して還付を受けるという選択が可能になります。

そこで簡易課税制度には、一度選択した場合には原則として一定期間継続して適用する仕組みがあります。

簡易課税制度選択不適用届出書を提出して制度をやめる場合でも、簡易課税の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、原則としてその効力を生じさせることができません。

これが一般に2年縛りと呼ばれているものです。

税率1パーセントで前提条件が大きく変わる

今回、このルールが問題になる理由は、事業者自身の事情ではなく税制そのものが大きく変わるからです。

飲食料品の消費税率は、2027年4月から8パーセントから1パーセントへ引き下げられる予定です。

食品を販売する事業者にとって、売上時に受け取る消費税額が大幅に減ります。

一方、設備や広告、システム、事務用品などには標準税率が適用される取引もあります。

本則課税なら、売上税額より控除できる仕入税額が大きくなり、還付が生じる可能性があります。

税率引下げによって、本則課税と簡易課税の関係がこれまでとは大きく変わるわけです。

簡易課税のままだと還付を受けられないことがある

例えば、飲食料品の売上税額が10万円になった一方、実際に控除できる仕入税額が15万円だったとします。

本則課税なら、単純化すると5万円の還付につながります。

ところが簡易課税では、実際の15万円を使って計算するわけではありません。

今回、1パーセントの飲食料品販売については、売上税額と同額を仕入税額として控除する特例が設けられます。

この例なら10万円から10万円を差し引き、この部分の納付税額はゼロになります。

しかし、実際の仕入税額15万円との差額5万円まで簡易課税によって還付される仕組みではありません。

そのため、事業者によっては本則課税へ変更する意味が大きくなります。

2年縛りが残ると変更できない事業者が出てくる

ここで従来の2年縛りが問題になります。

例えば2027年4月の税率引下げ時点で、簡易課税を選択してからまだ所定の期間を経過していない事業者を考えてみます。

通常のルールだけなら、税率引下げによって本則課税の方が適切になったとしても、簡易課税をやめられない場合があります。

しかし、飲食料品の税率が1パーセントになることは、事業者が簡易課税を選択した時点では前提としていなかった大きな制度変更です。

そこで従来の継続適用ルールをそのまま当てはめると、税制変更によって事業者に不利益が生じる可能性があります。

2027年4月を含む課税期間では制限を解除

この問題に対応するため、飲食料品の税率引下げに伴って本則課税へ移行する場合の特例が示されています。

2027年4月1日を含む課税期間から本則課税へ移行する一定の場合には、簡易課税の2年縛りを解除する考え方です。

これによって、通常ならまだ簡易課税を継続しなければならない事業者でも、今回の税率引下げを理由として本則課税への変更を検討できるようになります。

税率引下げという大きな制度変更に合わせ、事業者が課税方式を選び直せるようにする措置といえます。

届出期限についても特例が設けられる

2年縛りを解除するだけでは十分ではありません。

本則課税へ変更するための届出期限にも問題があるからです。

2027年4月1日に税率が変わる時点で、すでに課税期間が始まっている法人があります。

通常の届出期限を適用すると、税率引下げを見てから本則課税へ変更しようとしても、期限を過ぎているケースが生じます。

そこで、税率引下げに伴って本則課税へ移行する一定の場合には、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに所定の届出を行えば、その課税期間から本則課税へ移行できる特例も設けられます。

2年縛りの解除と届出期限の延長を組み合わせることで、実際に課税方式を変更できるようにするわけです。

解除されるから本則課税にすべきとは限らない

ここで注意したいのは、2年縛りが解除されることと、本則課税へ変更した方がよいことは別問題だということです。

本則課税では、実際の仕入税額を計算する必要があります。

帳簿やインボイスの保存など、仕入税額控除のための実務も重要になります。

一方、簡易課税についても、1パーセントの飲食料品販売に対応する特例が設けられます。

したがって、簡易課税を継続する方が事務負担を抑えられる事業者も考えられます。

選択肢が増えることと、どちらを選ぶべきかは分けて考える必要があります。

2年間の時限措置であることも考える必要がある

さらに今回の飲食料品の税率1パーセントは、2年間の時限措置です。

2029年には飲食料品の税率を8パーセントへ戻すことが予定されています。

したがって、2027年の税率引下げだけを見て課税方式を変更すると、その後の税率復元時に再び状況が変わる可能性があります。

設備投資の予定や売上構成、仕入れの内容なども含め、複数年度で考えることが重要になります。

税率が変わるたびに、その年だけの納税額を見て判断するのではなく、制度変更期間全体を見る必要があります。

結論

簡易課税の2年縛りとは、簡易課税を選択した事業者が毎年自由に本則課税との間を行き来することを防ぐため、原則として一定期間継続して簡易課税を適用する仕組みです。

通常であれば、事業者自身の都合だけで簡単に解除できるものではありません。

しかし2027年4月から飲食料品の消費税率が8パーセントから1パーセントへ下がると、本則課税と簡易課税の計算結果が大きく変わる可能性があります。

そこで、2027年4月1日を含む課税期間から本則課税へ移行する一定の場合には、2年縛りを特例的に解除する措置が設けられます。

同時に届出期限についても特例が設けられ、本則課税へ移行する選択肢が確保されます。

重要なのは、2年縛りが解除されるから本則課税へ変更するのではなく、自社の売上税額、実際の仕入税額、設備投資、事務負担、さらに2年後の税率復元まで含めて判断することです。

参考

税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す

税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案

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