免税事業者が課税事業者を選ぶとはどういうことか 消費税還付と課税事業者選択届出書の関係編

税理士
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消費税には、一定の要件を満たす小規模な事業者について消費税の納税義務を免除する仕組みがあります。

いわゆる免税事業者です。

免税事業者であれば、原則として消費税の申告や納税をする必要はありません。

それなら、わざわざ自分から課税事業者になる必要はないように思えます。

ところが、2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1パーセントへの引下げでは、免税事業者が自ら課税事業者になることを選択するケースが出てくる可能性があります。

その大きな理由が消費税の還付です。

免税事業者とは何か

消費税では、一定の要件のもとで小規模な事業者の納税義務が免除されます。

代表的な基準となるのが基準期間における課税売上高1000万円以下という要件です。

ただし、実際に免税事業者となるかどうかは特定期間の課税売上高やインボイス発行事業者の登録など、ほかの条件にも左右されます。

そのため、売上高が1000万円以下なら必ず免税事業者になると単純に考えることはできません。

重要なのは、免税事業者は消費税の納税義務が免除されている事業者だという点です。

免税事業者でも仕入れでは消費税を負担する

免税事業者だからといって、事業活動の中で消費税を一切負担しないわけではありません。

商品を仕入れたり、備品を購入したり、さまざまなサービスを利用したりすれば、その代金に消費税が含まれていることがあります。

例えば、店舗の設備を購入すれば、その購入代金に消費税がかかります。

広告やシステム利用料などについても、課税取引であれば消費税を含む代金を支払います。

免税事業者もこうした支払いを行います。

しかし、課税事業者とは大きな違いがあります。

免税事業者は原則として消費税の還付を受けられない

課税事業者が本則課税で申告する場合、売上税額から控除できる仕入税額を差し引いて消費税額を計算します。

仕入税額の方が大きければ、一定の要件のもとで還付を受けることができます。

一方、免税事業者はそもそも消費税の納税義務が免除されています。

原則として消費税の申告による還付を受ける仕組みには入っていません。

つまり、仕入れや設備投資で多額の消費税を負担したからといって、免税事業者のままその消費税を申告して返してもらえるわけではありません。

ここが重要なポイントです。

自ら課税事業者になることができる

免税事業者であっても、一定の手続きをすることで自ら課税事業者になることができます。

その際に重要になるのが、消費税課税事業者選択届出書です。

この届出を行い課税事業者になると、消費税の申告と納税を行う立場になります。

本則課税を適用して仕入税額控除の要件を満たせば、売上税額より控除できる仕入税額が大きい場合に還付を受けられる可能性も生まれます。

納税義務が免除されているにもかかわらず課税事業者を選択する理由の一つが、この還付です。

消費税1パーセントで選択の意味が大きくなる

飲食料品の消費税率が8パーセントから1パーセントへ下がると、食品を販売する事業者の売上税額は大幅に減少します。

一方、設備、広告、システムなどには標準税率が適用される取引があります。

そのため、本則課税では売上税額より控除できる仕入税額の方が大きくなるケースが考えられます。

例えば、売上にかかる消費税額が10万円で、控除できる仕入税額が15万円なら、単純化すると5万円の還付につながります。

しかし、免税事業者のままであれば、このような計算による還付を受けることは原則としてできません。

そこで課税事業者を選択する意味が出てきます。

通常は事前に届出が必要になる

ただし、還付が生じそうだから申告時に課税事業者を選べばよいというものではありません。

課税事業者を選択する場合、原則として所定の期限までに消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。

通常は、課税事業者になろうとする課税期間が始まる前に判断する必要があります。

ところが今回の税率引下げは2027年4月1日から始まります。

法人によっては、その時点ですでに課税期間が始まっています。

通常の期限だけを適用すると、制度変更を踏まえて課税事業者になろうとしても、届出が間に合わないケースが生じます。

今回は届出期限を後ろ倒しする特例

そこで飲食料品の税率引下げに伴い、本則課税事業者へ移行する場合の特例が設けられます。

一定の場合には、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに所定の届出を行うことで、その課税期間から本則課税へ移行できる仕組みです。

これは簡易課税事業者だけでなく、税率引下げを受けて課税事業者となり、本則課税による申告を行う免税事業者にとっても重要な措置になります。

税率変更という特殊な事情に合わせ、通常より判断できる期間を広げるわけです。

課税事業者になれば納税義務も生じる

還付だけを見て課税事業者を選択することには注意が必要です。

課税事業者になれば、還付を受けられる可能性が生まれる一方、消費税の申告や納税を行う必要があります。

ある年には設備投資が多く還付になったとしても、翌年には売上税額の方が大きくなり納税になる可能性があります。

また、課税事業者を選択した場合には、原則として一定期間継続しなければならないルールにも注意が必要です。

その年だけの還付額を見て判断するのではなく、複数年度で検討する必要があります。

インボイスとの関係も確認が必要

現在の消費税制度では、インボイス制度との関係も無視できません。

適格請求書発行事業者として登録している事業者は、原則として消費税の課税事業者となります。

したがって、自社が現在どのような立場にあるのかを確認することが出発点になります。

免税事業者なのか、すでにインボイス発行事業者として課税事業者になっているのか、簡易課税を適用しているのか、本則課税なのかによって必要な対応は異なります。

税率1パーセントへの変更を考える前に、自社の現在の課税関係を整理しておくことが重要です。

税率引下げで課税方式の選択が経営判断になる

これまで免税事業者にとって、消費税は申告や納税をしないという比較的分かりやすい制度でした。

しかし飲食料品の税率が1パーセントへ下がると、食品事業者では状況が変わる可能性があります。

免税を維持して消費税の申告をしないのか。

課税事業者になって本則課税を適用し、実際の仕入税額を控除するのか。

還付の可能性だけではなく、申告事務、帳簿やインボイスの管理、将来の納税額まで考える必要があります。

消費税の課税方式そのものが、一つの経営判断になってくるわけです。

結論

免税事業者とは、一定の要件のもとで消費税の納税義務が免除されている事業者です。

しかし、免税事業者であっても仕入れや設備投資などでは消費税を負担します。

免税事業者のままでは、原則としてその仕入税額について消費税の申告による還付を受けることはできません。

そこで、消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となり、本則課税によって還付を受けるという選択肢があります。

2027年4月から飲食料品の税率が1パーセントへ下がれば、食品事業者では売上税額より仕入税額が大きくなる可能性が高まり、この選択がこれまで以上に重要になります。

今回の税率引下げでは届出期限についても特例が設けられます。

ただし、課税事業者になれば将来の納税義務や事務負担も生じます。

還付だけを見るのではなく、自社の売上、仕入れ、設備投資、課税期間、インボイスへの対応などを総合的に確認することが重要です。

参考

税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す

税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案

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