管理不全空家とは何か 放置した実家が行政指導の対象になる仕組み編

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親から実家を相続したものの、誰も住む予定がない。

すぐには売れそうにないので、とりあえず空き家のまま残しておく。

こうしたケースは珍しくありません。

しかし、空き家は誰も住んでいないだけで直ちに問題になるわけではない一方、管理を怠って状態が悪化すると、行政による指導などの対象になる可能性があります。

そこで知っておきたいのが管理不全空家という仕組みです。

2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法によって、放置すれば特定空家になるおそれのある空き家を早い段階から管理不全空家として行政が対応できるようになりました。

相続した実家について、

まだ倒壊するほどではないから大丈夫

と考えていると、思わぬ問題につながる可能性があります。

管理不全空家とは何か

管理不全空家とは、適切な管理が行われていないことによって、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家をいいます。

ポイントは、

すでに非常に危険な状態になっている空き家だけが対象ではない

ということです。

以前の空き家対策では、倒壊の危険などが深刻になった特定空家への対応が中心でした。

しかし、状態がかなり悪化してから行政が動いても、問題の解決には大きな費用と時間がかかります。

そこで、その一歩手前の段階から所有者に適切な管理を求める仕組みが設けられました。

なぜ管理不全空家が設けられたのか

空き家は、突然危険な建物になるわけではありません。

最初は庭の雑草が伸びる程度だったものが、徐々に管理されなくなります。

雨どいが壊れる。

屋根の一部が傷む。

外壁にひびが入る。

庭木が隣地へ越境する。

窓ガラスが割れる。

さらに放置すれば、屋根材や外壁が落下したり、建物そのものが倒壊したりする危険が高まります。

つまり、特定空家になるまでには一定の過程があります。

その途中で行政が所有者に管理を求めれば、比較的小さな修繕や手入れで問題を解決できる可能性があります。

管理不全空家は、空き家が深刻な状態になる前に対応するために設けられた制度です。

特定空家とは何が違うのか

管理不全空家を理解するには、特定空家との違いを知っておく必要があります。

特定空家とは、例えば、

そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある

衛生上著しく有害となるおそれがある

著しく景観を損なっている

周辺の生活環境を守るため放置することが不適切である

といった状態にある空き家です。

これに対して管理不全空家は、現時点では特定空家ほど深刻ではないものの、

このまま管理しなければ特定空家になるおそれがある

という段階です。

管理不全空家は、特定空家の予備軍と考えると分かりやすいでしょう。

古い家だから管理不全空家になるわけではない

築年数が古いというだけで、直ちに管理不全空家になるわけではありません。

築50年の住宅でも、定期的に修繕や清掃を行い、庭木を管理していれば問題にならないことがあります。

逆に比較的新しい住宅でも、長期間まったく管理されず状態が悪化していれば問題になる可能性があります。

重要なのは築年数ではなく管理状態です。

空き家になった時点で、

誰が管理するのか

どのくらいの頻度で確認するのか

修繕が必要になったら誰が判断するのか

を決めておくことが大切です。

どのような状態が問題になるのか

管理不全空家に該当するかどうかは、建物や敷地の具体的な状態を踏まえて判断されます。

例えば、

屋根や外壁が破損している

建物の一部が腐食している

雨水の侵入を放置している

庭木や雑草が著しく繁茂している

害虫や害獣などの問題が生じている

ごみなどが放置されている

といった状態が考えられます。

一つの問題だけで機械的に決まるわけではなく、自治体が建物や敷地の状況、周囲への影響などを確認して判断します。

遠方の実家ほど管理が難しい

相続空き家で特に問題になりやすいのが、相続人が遠方に住んでいるケースです。

例えば東京で暮らしている人が、地方にある親の実家を相続したとします。

毎月実家へ行って、

屋根は壊れていないか

雨漏りしていないか

庭木が伸びていないか

郵便物がたまっていないか

を確認するのは簡単ではありません。

年に一度しか帰省しなければ、その間に台風や大雪などで建物が傷んでも気付かない可能性があります。

相続人に悪意がなくても、結果として管理不全状態になることがあります。

所有者には適切な管理が求められる

空き家を所有している以上、

誰も住んでいないから知らない

遠方なので管理できない

というだけで問題を避けられるわけではありません。

所有者には、空き家が周辺に悪影響を及ぼさないよう適切に管理することが求められます。

自分で管理することが難しいのであれば、

親族に依頼する

地域の事業者へ依頼する

空き家管理サービスを利用する

不動産会社へ相談する

といった方法を検討する必要があります。

保有を続けるのであれば、管理費も空き家を持つためのコストとして考える必要があります。

市区町村はまず指導できる

空き家が管理不全空家に該当すると、市区町村は所有者に対して必要な措置をとるよう指導することができます。

例えば、

傷んだ屋根を修繕する

伸びすぎた庭木を剪定する

破損した外壁を補修する

ごみを撤去する

といった改善を求められることがあります。

この段階で所有者が適切に対応すれば、さらに深刻な措置へ進むことを防げます。

管理不全空家制度の目的は、所有者を罰することではなく、状態が深刻になる前に管理を促すことにあります。

指導を受けたら放置しない

市区町村から指導を受けても、

すぐには倒壊しないだろう

費用がかかるから後で考えよう

と放置するのは危険です。

指導を受けても状態が改善されず、特定空家になることを防止するため必要があると認められる場合には、市区町村から勧告を受ける可能性があります。

この勧告が重要です。

なぜなら、固定資産税の住宅用地特例に影響するからです。

勧告を受けると固定資産税に影響する

住宅が建っている土地には、住宅用地に対する固定資産税の特例があります。

例えば一定の小規模住宅用地については、固定資産税の課税標準が価格の6分の1とされます。

このため、

古い空き家でも建物を残しておいた方が土地の固定資産税が安い

と考える人がいます。

しかし、管理不全空家について市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れることがあります。

つまり、空き家を放置することで土地の固定資産税負担が大きくなる可能性があります。

固定資産税が単純に6倍になるわけではない

ここで注意したいのは、

住宅用地特例から外れると固定資産税が必ず6倍になる

と単純に考えないことです。

小規模住宅用地では課税標準が6分の1になる仕組みがありますが、実際の税額には負担調整措置なども関係します。

そのため、特例がなくなったからといって実際の納税額が必ずちょうど6倍になるわけではありません。

ただし、住宅用地特例が外れることで税負担が大きく増える可能性があることには変わりありません。

空き家を放置する経済的なリスクの一つです。

空き家を残す節税策は通用しにくくなった

以前は、

家を壊して更地にすると固定資産税が高くなるから、古い家でも残しておこう

という判断が行われることがありました。

住宅が存在すれば住宅用地特例を利用できるためです。

しかし、空き家対策の強化によって、この考え方には注意が必要になりました。

適切に管理されていない空き家については、管理不全空家として勧告を受けることで住宅用地特例から外れる可能性があります。

つまり、

建物さえ残しておけば固定資産税を抑えられる

という仕組みではなくなっています。

税負担を軽くするためにも、適切な管理が求められるようになったと考えることができます。

特定空家になる前に対応することが重要

管理不全空家の段階で対応せず、さらに状態が悪化すると特定空家に該当する可能性があります。

特定空家になると、行政による措置はさらに強くなります。

助言や指導、勧告だけでなく、一定の場合には命令や行政代執行まで進む可能性があります。

行政代執行によって危険な建物が解体された場合でも、

行政が無料で解体してくれる

ということではありません。

原則として、その費用は所有者から徴収されます。

そのため、管理不全空家の段階で改善する方が、結果として所有者の負担も小さくなる可能性があります。

管理するか処分するかを決める

相続した実家について最も避けたいのは、

使わない

売らない

貸さない

解体しない

管理もしない

という状態です。

誰も利用する予定がなくても、所有している限り管理責任と費用は残ります。

そこで、

将来自分が住むので管理する

賃貸住宅として活用する

売却する

建物を解体して土地を売る

といった出口を検討する必要があります。

保有を続けるのであれば、定期的な管理を前提に考える必要があります。

相続直後に管理方法を決める

空き家問題を防ぐためには、建物が傷んでから考えるのでは遅い場合があります。

親が亡くなって実家が空き家になった時点で、

鍵を誰が管理するのか

誰が定期的に訪問するのか

庭木を誰が手入れするのか

修繕費を誰が負担するのか

近隣から連絡があった場合に誰が対応するのか

を決めておくことが重要です。

兄弟姉妹で共有している場合には、特に責任の所在が曖昧になりやすくなります。

みんなの家だから誰かが管理するだろう、という状態が最も危険です。

結論

管理不全空家とは、適切な管理が行われていないことによって、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家です。

2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法によって、深刻な状態になる前から行政が所有者に対応を求められる仕組みが整えられました。

管理不全空家は、すでに倒壊寸前の住宅だけを意味するものではありません。

屋根や外壁の傷み、庭木や雑草の放置など、管理状態の悪化が続けば対象となる可能性があります。

市区町村は所有者に対して必要な措置を指導し、改善されない場合には勧告することができます。

特に重要なのが固定資産税への影響です。

管理不全空家について勧告を受けると、その敷地が住宅用地特例の対象から外れ、土地の固定資産税負担が大きくなる可能性があります。

空き家だから何もしなくてよい。

建物を残しておけば固定資産税が安い。

こうした考え方は、現在の空き家対策では通用しにくくなっています。

相続した実家を残すのであれば、適切に管理する。

管理する予定がないのであれば、売却、賃貸、解体などの出口を検討する。

重要なのは、特定空家になるまで放置しないことです。

管理不全空家という制度は、空き家問題が深刻になる前に所有者へ行動を促す仕組みです。

相続した実家についても、誰も住まなくなった日から管理が始まると考えておく必要があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月 マネー相談 黄金堂パーラー 相続空き家 上 登記の手続き

国土交通省 2023年 改正空家等対策特別措置法について

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