会社では通常、年度が始まる前に1年間の売上や利益について予算を作成します。
しかし、予算は将来の見通しをもとに作るものです。
実際に年度が始まると、予算を作成した時点では予想できなかったことが起こります。
原材料価格が大幅に上昇するかもしれません。
市場の需要が想定以上に減少することもあります。
逆に、新商品が予想以上に売れ、当初予算を大きく上回ることもあります。
こうした状況でも、年度当初に作った予算だけを基準に経営を続ければよいのでしょうか。
予算を作ったときの前提そのものが大きく変化した場合には、年度途中で予算を見直すことがあります。
これが予算修正です。
なお、参考記事は予実管理における差異の原因分析と具体的な行動への落とし込みを中心に説明しており、予算修正そのものについては直接説明していません。
ただし、管理できない外部要因については来期予算の前提を見直す材料にするという考え方が示されており、予算の前提と実際の経営環境を区別する重要性を考えることができます。
当初予算とは何か
当初予算とは、年度が始まる前などに会社が設定した売上や費用、利益などの計画です。
たとえば、年間売上を1億2000万円とします。
毎月1000万円ずつ売り上げる計画です。
さらに、売上原価や人件費、広告宣伝費などを見積もり、年間利益3000万円という予算を設定したとします。
この予算が、その年度に会社が目指す一つの基準になります。
実際の経営活動が始まれば、毎月の実績と比較できます。
4月の売上予算1000万円に対して実績900万円なら、100万円の未達です。
この差を把握し、原因を分析するのが予実管理です。
当初予算があるからこそ、実績が計画通りだったのかを判断できるのです。
修正予算とは何か
修正予算とは、年度途中の状況変化などを踏まえて、当初予算を見直したものです。
たとえば、年間売上1億2000万円を予定していた会社があるとします。
ところが年度開始後、主要市場の需要が大きく落ち込みました。
一時的な落ち込みではなく、今後も需要減少が続くと考えられる状況になったとします。
この場合、年度末まで当初予算だけを使い続けると、現在の経営環境とのずれが大きくなります。
そこで、現在の状況を踏まえて売上や利益などの計画を見直すことがあります。
これが修正予算です。
ただし、修正予算を作ったからといって、当初予算に意味がなくなるわけではありません。
当初は何を目指していたのか。
現在は何を見込んでいるのか。
なぜ両者に差が生じたのか。
それぞれを区別して考えることが重要です。
一時的な未達と構造的な変化
予算を修正するかどうかを考えるときに重要なのが、一時的な差異なのか、それとも予算の前提を変えるような構造的な変化なのかという点です。
たとえば、ある月に商品の納品が遅れたことで売上が予算を1000万円下回ったとします。
翌月には納品できるのであれば、単に売上計上の時期がずれただけかもしれません。
このようなケースで年間予算そのものを修正する必要性は高くありません。
一方、主要顧客を失ったことで年間売上が継続的に減少する見込みになった場合は事情が違います。
原材料価格が一時的に上昇した場合と、高い価格が長期間続く場合でも意味が違います。
重要なのは、予算と実績に差が出たという事実だけで判断しないことです。
なぜ差が生じたのかを掘り下げ、その原因が今後も続くのかを考える必要があります。
差異の原因分析が重要になる
ここで、参考記事で説明されている予実管理の考え方が重要になります。
参考記事では、売上未達について、単に金額を見るだけでなく原因を掘り下げています。
売上が未達だった。
主力製品の販売数量が減っていた。
さらに調べると、主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分になっていた。
このように原因まで掘り下げています。
もし売上未達の原因が訪問回数の減少なのであれば、予算そのものを変更する前に営業活動を改善する余地があります。
訪問回数を元に戻すことで、販売数量も回復するかもしれません。
一方、自社では変えることのできない市場環境が大きく変化しているのであれば、当初の予算前提について考え直す必要が出てきます。
予算修正を考える前に差異の原因を分析することが重要なのです。
外部環境が予算の前提を変えることがある
参考記事では、原料の高騰や天候不順といった外部要因にも触れています。
こうした要因そのものを会社の努力で変えることはできません。
たとえば、予算作成時には原材料を1キログラム100円で購入できると想定していたとします。
ところが年度開始後に市場価格が150円へ上昇し、その水準が長期間続く見込みになったとします。
現場に対して「予算は100円だから100円で仕入れてください」と要求しても、実現できない場合があります。
この場合、問題は担当者の努力不足ではありません。
予算作成時の前提と現在の経営環境が変わっています。
参考記事では、管理できない要因については、来期予算の前提を見直す材料としてメモしておけばよいと説明しています。
予算は絶対に変わらない数字ではなく、どのような前提で作られたのかを見ることも重要なのです。
安易に予算を下げてはいけない理由
一方で、予算未達が発生するたびに予算を修正するのも問題です。
たとえば、売上予算1000万円に対して実績が900万円だったとします。
そこで翌月から「達成できないので予算を900万円に変更しよう」としてしまえば、予算未達の原因が見えなくなる可能性があります。
営業活動が不足していたのかもしれません。
訪問件数が減っていたのかもしれません。
値引きが増えていたのかもしれません。
こうした自社で改善できる問題があるにもかかわらず、予算そのものを下げてしまえば、表面的には予算達成に近づきます。
しかし、会社の業績が改善したわけではありません。
数字の基準を下げただけです。
だからこそ、予算修正の前に差異の原因を分析する必要があります。
予算修正を未達隠しにしない
予算には経営目標としての役割があります。
そのため、達成できそうにないからという理由だけで何度も下方修正すると、目標としての意味が弱くなります。
たとえば年間利益3000万円を目標としていた会社が、業績悪化のたびに2500万円、2000万円、1500万円と予算を下げていけば、最終的には予算を達成できるかもしれません。
しかし、それでは当初3000万円を目指していたことや、なぜ利益が減少したのかが見えにくくなります。
重要なのは、数字を達成したように見せることではありません。
当初予算と現在の状況との差を認識し、その原因を経営改善に利用することです。
そのため、修正予算を作る場合でも、当初予算との比較を残しておくことに意味があります。
修正した後も行動が必要になる
予算を修正しても、それだけで会社の業績が改善するわけではありません。
たとえば、外部環境の悪化によって年間売上予算を1億2000万円から1億円へ修正したとします。
1億円という新しい数字を作っただけでは、実際に1億円を達成できる保証はありません。
そこで必要になるのが具体的な行動です。
参考記事では、原因を掘り下げた後に重要なのは、それを次のアクションへ変換することだと説明しています。
何をするのか。
誰がするのか。
いつまでにするのか。
そして翌月に結果を確認します。
予算を修正する場合でも、この考え方は変わりません。
新しい経営環境を前提として、会社が何を変えるのかを決める必要があります。
当初予算と修正予算を使い分ける
予算を修正した場合には、当初予算と修正予算のそれぞれを見ることに意味があります。
当初予算を見れば、年度開始時に何を目指していたのかが分かります。
修正予算を見れば、現在の経営環境を踏まえてどのような計画を設定しているのかが分かります。
そして実績と比較すれば、修正後の計画に対して会社がどのように進んでいるのかを確認できます。
重要なのは、どれか一つの数字だけを見るのではなく、それぞれの数字が何を表しているのかを理解することです。
予算修正は過去の目標を書き換えて消してしまうためのものではありません。
経営環境の変化を踏まえて、これから会社がどのように行動するのかを考えるためのものなのです。
結論
予算修正とは、年度開始前に作った当初予算について、その後の経営環境の大きな変化などを踏まえて途中で見直すことです。
ただし、予算と実績に差が出たからといって、すぐに予算を変更すればよいわけではありません。
まず必要なのは、差異の原因を掘り下げることです。
一時的な未達なのか。
自社の行動によって改善できる問題なのか。
それとも予算作成時の前提そのものが変わったのか。
この違いを見極める必要があります。
営業活動の不足など自社で改善できる原因であれば、予算を下げる前に具体的な行動を変えることが重要です。
一方、外部環境が大きく変化し、当初予算の前提が現実と合わなくなっているのであれば、予算を見直す意味があります。
予算修正は、達成できない目標を簡単に引き下げるための仕組みではありません。
当初の計画と現在の経営環境の違いを認識し、新しい状況に合わせて次の行動を考えるための経営管理なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで