相続は、ある日突然始まります。
家族が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく、さまざまな手続きを進めなければなりません。
相続人を確認し、財産を調べ、相続するか放棄するかを決め、遺産を分ける――。
相続には法律で定められた流れがあり、その全体像を理解しておくことで、必要以上に慌てず対応できるようになります。
今回は、相続開始から遺産分割までの基本的な流れを見ていきます。
相続は死亡によって始まる
相続は、被相続人が亡くなった瞬間に開始します。
遺族が手続きを始めた日でも、死亡届を提出した日でもありません。
法律上は、死亡という事実そのものによって相続が開始されます。
この瞬間から、相続人には権利だけでなく義務も発生します。
財産だけでなく借金なども引き継ぐ可能性があるため、相続開始後は財産の内容を早めに確認することが重要になります。
相続財産はいったん相続人全員の共有になる
相続が始まると、遺産はすぐに個人のものになるわけではありません。
遺産分割が終わるまでは、相続人全員が共同で所有している状態になります。
これを「遺産共有」といいます。
例えば、相続人が三人いる場合、自宅や預金は誰か一人のものではなく、三人全員が共有している状態です。
そのため、一人だけの判断で自由に処分することは原則としてできません。
まずは相続人全員で話し合いを進めることが前提になります。
相続するか放棄するかを決める
相続人には三つの選択肢があります。
一つ目は、財産も借金もすべて引き継ぐ「単純承認」です。
二つ目は、相続した財産の範囲内で借金を引き継ぐ「限定承認」です。
三つ目は、一切の相続をしない「相続放棄」です。
借金が多い場合には相続放棄が有効なこともあります。
こうした判断は、原則として相続開始を知った日から三か月以内に行う必要があります。
相続財産の内容を早めに把握することが重要なのは、この期限があるためです。
遺産分割で取得する財産が決まる
相続人が確定し、相続する意思も固まると、次は遺産分割に進みます。
遺言があれば、その内容を基本として相続が行われます。
遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
預貯金は誰が取得するのか。
自宅は誰が住み続けるのか。
株式は誰が引き継ぐのか。
このようなことを話し合いで決め、合意すれば遺産分割協議書を作成します。
その後、預金の払戻しや不動産の相続登記など、それぞれの名義変更を進めていきます。
相続は一つひとつの手続きがつながっている
相続の流れを見ていくと、それぞれの手続きが独立しているように見えるかもしれません。
しかし、実際にはすべてがつながっています。
相続人が確定しなければ遺産分割はできません。
財産が分からなければ相続放棄を判断できません。
遺産分割が終わらなければ、不動産や預金の名義変更もできません。
だからこそ、相続では全体の流れを理解し、順序立てて進めることが大切なのです。
結論
相続は、死亡によって始まり、遺産共有、相続の承認や放棄、遺産分割を経て、それぞれの相続人が財産を取得するという流れで進みます。
一つひとつの手続きには意味があり、前の手続きが終わらなければ次へ進めないものも少なくありません。
相続を円滑に進めるためには、個々の制度だけでなく、全体の流れを理解しておくことが何より重要です。
次回からは、この流れの中でも最初の重要なテーマである「法定相続人」について詳しく解説していきます。
参考
日本税理士会連合会 令和7年度全国統一研修会「相続法概説」(早川眞一郎)