大胆な投資促進税制は、一定の設備を購入すれば自動的に即時償却や税額控除を受けられる制度ではありません。
重要な要件の一つが、産業競争力強化法に基づく確認です。
対象となるのは、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、一定のソフトウエアなどのうち、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当し、一定の要件を満たすものです。
つまり、税務申告の段階で設備の取得価額を確認するだけでは制度を利用できません。
設備投資そのものが制度の求める投資に該当するのかを、投資計画の段階から確認していくことが重要になります。
設備投資税制には政策目的がある
なぜ設備を購入しただけでは税制優遇を受けられないのでしょうか。
大胆な投資促進税制は、企業が設備を購入する行為すべてを支援する制度ではないからです。
税制優遇には、一定の生産性向上につながる投資を促すという政策目的があります。
企業が通常行う設備更新まで無条件に対象とするのではなく、制度が想定する一定の投資について税負担を軽減する仕組みになっています。
そのため、対象設備について一定の確認を受ける仕組みが設けられています。
税法だけを見ても制度全体は分からない
大胆な投資促進税制を理解する際に特徴的なのが、税法だけでは完結しないことです。
法人税の優遇措置そのものは租税特別措置法などに定められています。
一方、対象となる設備については産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等であることが関係します。
つまり、税制を利用するためには法人税法令だけではなく、産業競争力強化法側の制度も確認する必要があります。
設備を購入した後、決算時に税理士や経理担当者が初めて税制を調べるという進め方では、対応が難しくなる可能性があります。
確認を受ける時期が重要になる
大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法の確認を受ける期間が定められています。
対象となるのは、改正産業競争力強化法の施行日である令和8年7月31日から令和11年3月31日までの期間内に確認を受けたものです。
この期間は、単に設備を購入できる期間という意味ではありません。
確認を受ける時期そのものが制度要件に関係します。
したがって、令和11年3月31日までに設備を買えば必ず対象になるという理解では不十分です。
いつ確認を受けたのかを確認する必要があります。
確認後の取得と事業供用にも期限がある
さらに、確認を受ければいつ設備を取得してもよいわけではありません。
制度では、確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの間に、対象となる特定機械装置等の取得等をして、国内にある法人の事業の用に供することが関係します。
ここでは複数の日付が重要になります。
確認を受けた日があります。
設備を取得する日があります。
そして、設備を実際に事業の用に供する日があります。
大型設備投資では、これらが同じ日になるとは限りません。
発注日と取得日は同じとは限らない
大規模な製造設備では、発注してから納入されるまで数年かかることもあります。
さらに、工場へ搬入した後に据付工事や試運転を行い、本格稼働まで時間がかかる場合もあります。
そのため、
契約した日
発注した日
納品された日
取得した日
事業の用に供した日
を区別して管理することが重要になります。
設備投資の社内管理では契約日や支払日を中心に見ていても、税制では別の日付が重要になることがあります。
事業の用に供するとは何か
設備投資税制では、事業の用に供するという言葉がよく使われます。
設備を購入して会社が所有しただけではなく、実際に事業で使用できる状態になり、事業活動に使われることが重要になります。
たとえば大型機械が工場に到着していても、据付工事が終わっておらず稼働できない場合があります。
建物が完成していても、事業活動が始まっていない場合もあります。
取得と事業供用は必ずしも同じではありません。
そのため、制度の期限を管理するときには、購入日だけを見るのではなく事業供用の時期まで確認する必要があります。
経理部門だけで対応するのは難しい
産業競争力強化法の確認と設備投資税制を組み合わせる場合、経理や税務部門だけで対応するのは難しくなります。
設備投資を最初に計画するのは、経営企画や製造部門かもしれません。
設備の仕様を決めるのは技術部門かもしれません。
発注や契約を担当するのは購買部門かもしれません。
設備の据付けや稼働開始を管理するのは工場側です。
税制を検討するのは経理や税務部門です。
それぞれが持っている情報をつなげなければ、確認から取得、事業供用までの要件を管理できません。
税制は投資計画に組み込む必要がある
大型設備投資では、投資額そのものが数十億円や数百億円になることもあります。
税額控除や即時償却による影響も大きくなる可能性があります。
そのため、設備の購入を決定した後に税制が使えるかを調べるのではなく、投資採算を計算する段階から税制を組み込むことが重要です。
税制を利用できる場合と利用できない場合で、投資後のキャッシュフローが変わることがあります。
特に確認手続きや期限がある制度では、後から条件を満たそうとしても対応できない可能性があります。
税務申告は最後の工程にすぎない
設備投資税制というと、法人税申告書を作成するときの問題と思われがちです。
しかし、大胆な投資促進税制では、申告書を作る時点は一連の手続きの最後に近い段階です。
その前に投資計画があります。
産業競争力強化法に基づく確認があります。
設備の取得があります。
据付けがあります。
事業供用があります。
そして最終的に法人税申告で税制優遇を適用します。
つまり、税務申告だけ正しく行えばよい制度ではありません。
投資開始から申告までを一つの流れとして管理することが重要です。
結論
大胆な投資促進税制は、対象となりそうな設備を購入すれば自動的に利用できる制度ではありません。
重要な要件の一つが、産業競争力強化法に基づく確認です。
対象となる確認期間は令和8年7月31日から令和11年3月31日までです。
さらに、確認を受けた後も、一定期間内に対象設備を取得等し、国内にある法人の事業の用に供する必要があります。
そのため、確認日、取得日、事業供用日という複数の日付を管理することが重要になります。
大型設備では発注から稼働まで数年かかる場合があります。
税制を決算時に初めて検討するのでは遅くなる可能性があります。
大胆な投資促進税制を活用するためには、税務を設備購入後の処理として考えるのではなく、投資計画そのものに組み込むことが重要です。
設備投資を決める段階から確認手続きとスケジュールを整理しておくことが、制度を適切に利用するための重要なポイントになります。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について