日本国内で商品を販売すれば、原則として消費税がかかります。
一方、日本から海外へ商品を輸出する場合には、一定の要件を満たせば消費税が免除される輸出免税という仕組みがあります。
ただし、商品を海外へ送れば自動的に輸出免税になるわけではありません。
令和8年度税制改正では、輸出代金を現金などで受け取る一定の取引について、輸出免税を受けるための証明要件が厳しくなります。
令和8年10月1日以後の取引では、輸出許可書だけでなく、輸出先の国で輸入されたことを示す書類まで保存しなければならないケースが出てきます。
輸出取引はなぜ消費税が免除されるのか
消費税は、日本国内で消費される商品やサービスに負担を求める税金です。
日本から海外へ輸出された商品は、基本的に海外で消費されます。
そのため、一定の輸出取引については日本の消費税を課税しない仕組みになっています。
これが輸出免税です。
輸出企業が海外の取引先へ商品を販売するとき、日本の消費税を上乗せせずに販売できるのはこの仕組みによります。
輸出した事実を証明する必要がある
輸出免税を利用するためには、本当に商品が国外へ輸出されたことを証明しなければなりません。
そのため、輸出許可書など一定の証明書類を保存することが求められています。
国内で商品を販売しただけなのに輸出取引として処理すれば、本来納めるべき消費税を納めないことになってしまいます。
輸出免税では、取引が実際に国外へ向けたものであることを客観的な資料によって確認できることが重要です。
現金取引では相手を確認しにくい
令和8年度改正で問題となったのが、輸出代金の受取方法です。
銀行振込で代金を受け取る場合には、誰から入金されたのかを金融機関の記録などから確認しやすくなります。
一方、現金で代金を受け取った場合には、その現金を実際に誰が支払ったのかを後から確認することが難しい場合があります。
輸出書類上の取引相手と、実際に代金を支払った人物や事業者が同じなのかという確認も難しくなります。
このような取引について、輸出免税の証明を強化することになりました。
現金だけが対象とは限らない
新しい取扱いは、現金で代金を受け取った場合だけに限定して考えると正確ではありません。
ポイントは、代金を誰が支払ったのかが明らかかどうかです。
現金による受取りのほか、支払者が取引相手であることを明確に確認できない一定の決済方法についても、新しい証明要件の対象になる可能性があります。
したがって、決済手段の名称だけで判断するのではなく、取引相手から代金を受領したことを客観的に確認できるかを見ることが重要です。
輸出先国の輸入許可書などが必要になる
令和8年10月1日以後の一定の輸出取引では、従来の輸出許可書などに加えて、輸出先の国で商品が輸入されたことを証明する書類の保存が必要になります。
例えば、輸出先国で発行された輸入許可書に相当する書類などです。
日本から商品が出ていったことだけでなく、その商品が実際に相手国へ輸入されたことまで確認するわけです。
これによって、輸出取引の実態をより確実に確認できるようにします。
日本を出たことと海外へ入ったことを確認する
新しい証明要件を理解するには、商品の移動を2段階に分けると分かりやすくなります。
1つは、日本から商品が輸出されたという事実です。
もう1つは、その商品が輸出先の国へ実際に輸入されたという事実です。
従来の輸出許可書は、主として日本から商品が輸出されたことを確認する資料です。
新しい制度では、一定の現金取引などについて相手国側の輸入資料も求めることで、商品の国際的な移動を両側から確認する仕組みになります。
銀行振込なら同じ追加書類が必要とは限らない
すべての輸出取引について、輸出先国の輸入許可書などが追加で必要になるわけではありません。
銀行振込などによって、取引相手から代金を受領したことが明確に確認できる取引については、今回の追加的な証明要件の対象から外れます。
また、支払者を確認できる荷為替手形などによる決済も同様に考えられます。
つまり、今回の改正は輸出免税全体の証明書類を一律に増やすものではありません。
取引相手を確認しにくい決済方法について証明を強化する改正です。
現金取引の多い事業者は早めの対応が必要
海外の取引先や訪日外国人のバイヤーなどから現金で代金を受け取り、その商品を輸出する取引を行っている事業者は注意が必要です。
これまでは日本側の輸出許可書などを保存することで輸出免税を適用していた取引でも、改正後は追加資料が必要になる可能性があります。
相手国の輸入許可書などを後から入手しようとしても、簡単には取得できない場合があります。
そのため、契約段階から必要書類を相手方に提供してもらえるよう取り決めておくことが重要になります。
決済方法そのものを見直す選択肢もある
新しい制度への対応は、保存書類を増やすことだけではありません。
取引相手を確認できる銀行振込などへ決済方法を変更することも考えられます。
現金取引を続ければ、相手国の輸入許可書などを取得し保存する事務負担が増える可能性があります。
一方、取引相手が明確になる決済方法を利用すれば、追加的な証明要件の対象にならない場合があります。
税務上の証明要件が、企業の決済方法の選択にも影響することになります。
結論
令和8年10月1日から、一定の輸出取引について輸出免税の証明要件が厳しくなります。
特に注意が必要なのが、輸出代金を現金で受け取る場合や、代金の支払者が取引相手であることを明確に確認できない一定の決済方法です。
こうした取引では、日本側の輸出許可書などに加えて、輸出先国の輸入許可書に相当する書類などの保存が必要になります。
一方、銀行振込などによって取引相手から代金を受領したことが明確な場合には、今回の追加的な証明要件の対象とはなりません。
今回の改正で重要なのは、現金そのものを問題にしているというより、誰から代金を受け取ったのかを客観的に確認できるかという点です。
輸出事業者は令和8年10月以降の取引に向けて、輸出書類だけでなく、代金の受取方法と相手国側の証明書類まで含めて確認することが重要になります。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集