第二次納税義務は、本来の納税義務者ではない第三者に納税義務を負わせる制度ですが、その責任は無制限ではありません。
国税徴収法では、「現に存する利益」の限度で第二次納税義務を負うと定められています。
この「現に存する利益」という考え方は、第二次納税義務の適用範囲を決める重要な基準です。近年の公表裁決でも、この利益の評価方法が争点となり、実態を重視した判断が示されました。
今回は、「現に存する利益」の意味と、その評価方法について解説します。
現に存する利益とは
「現に存する利益」とは、第三者が無償譲渡や債務免除などによって実際に受け、現在も経済的価値として残っている利益をいいます。
つまり、過去に利益を受けた事実だけでは足りません。
その利益が現実に存在していることが必要になります。
この規定は、第三者に過大な負担を課さないための重要な制限として設けられています。
第二次納税義務の上限額になる理由
第二次納税義務は、本来の納税者ではない人に納税義務を課す制度であるため、利益以上の負担を負わせることは適当ではありません。
例えば、500万円相当の財産を無償で取得した場合、その人が負う第二次納税義務は、原則として500万円が上限となります。
仮に滞納税額が1,000万円あったとしても、500万円を超えて負担することはありません。
つまり、「現に存する利益」は責任の限界を定める役割を果たしています。
利益の範囲はどのように判断するのか
利益の有無は、契約書や帳簿上の金額だけで判断されるものではありません。
実際に経済的価値が存在するかどうかが重要になります。
例えば、不動産であれば市場価格、株式であれば評価額、債権であれば回収可能性が考慮されます。
名目上は高額な財産であっても、経済的価値が大きく下落していれば、その価値を反映した評価が行われます。
時価評価との関係
税務では、形式的な取得価額ではなく、時価によって判断する場面が数多くあります。
第二次納税義務でも同様です。
例えば、額面1億円の債権であっても、債務者が著しい債務超過で返済能力を失っている場合には、実際の価値は大幅に低下している可能性があります。
そのため、評価に当たっては、債務者の財産状況や支払能力などを総合的に検討することになります。
裁判例や公表裁決が示した考え方
近年の公表裁決では、連帯保証人が取得した求償債権を免除した事案が問題となりました。
税務署は、求償債権の額面どおりに利益が存在すると判断しましたが、審判所は異なる結論を示しました。
債務者には求償債権を返済する能力がなく、資産を換価しても回収は極めて困難な状況であったため、求償債権そのものの価値はゼロ円と評価しました。
その結果、債務免除によって受けた利益も「現に存しない」と判断され、第二次納税義務は認められませんでした。
この裁決は、形式ではなく実質的な経済価値を重視した代表的な事例といえます。
実務で注意したいポイント
実務では、「利益があるか」ではなく、「どれだけの利益が現実に存在するか」が重要になります。
そのため、債権評価では決算書や財産目録、不動産評価資料、事業計画など、回収可能性を判断できる資料が重要になります。
税務調査や審査請求では、こうした客観的資料が判断を左右することも少なくありません。
形式的な契約内容だけで判断しないことが重要です。
結論
第二次納税義務には、「現に存する利益」という明確な上限があります。
この利益は、帳簿上や契約上の金額ではなく、実際に存在する経済的価値によって判断されます。
今回の公表裁決も、求償債権の回収可能性を詳細に検討し、実際の価値がゼロ円であることから利益も存在しないと判断しました。
第二次納税義務を検討する際には、形式的な金額ではなく、経済的実態を客観的な資料によって評価することが極めて重要といえるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年7月27日
「【公表裁決】求償債権の回収不可能な特別な事情認められ、納付告知処分は違法」
国税徴収法第39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)