消費税率が下がるとなぜ中間納付額が過大になるのか 前年税額をそのまま使えない理由編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

2027年4月から、軽減税率の対象となる飲食料品の消費税率を現在の8パーセントから1パーセントへ引き下げることが予定されています。

食品を多く販売する事業者では、税率引下げによって消費税の納付額が大幅に減少する可能性があります。

ところが、消費税には前年の税額を基準として課税期間の途中で税金を納める中間申告制度があります。

ここで問題が起きます。

今年は税率1パーセントなのに、中間納付額を税率8パーセントだった前年の税額から計算すると、実際に納めるべき年間税額に比べて中間納付額が大きくなりすぎる可能性があるのです。

中間申告では前年の税額が基準になる

消費税の中間申告では、原則として前課税期間の確定消費税額をもとに中間納付額を計算します。

前年の税額が一定額を超える事業者について、その金額に応じて年1回、年3回、年11回の中間申告を行う仕組みです。

前年と今年の売上規模や事業内容が大きく変わらなければ、前年実績を基準にする方法には合理性があります。

まだ今年の年間税額が確定していない段階でも、前年の確定した数字を使えば簡便に中間納付額を算出できるからです。

問題は、前年と今年の税制そのものが大きく変わる場合です。

前年は8パーセントで今年は1パーセントになる

今回の税率引下げは、この問題が非常に大きく表れるケースです。

2027年3月まで、軽減税率の対象となる飲食料品には8パーセントの税率が適用されます。

2027年4月からは、これが1パーセントへ引き下げられる予定です。

単純に税率だけを見ると7ポイントの引下げです。

食品を販売する事業者では、売上にかかる消費税額が大幅に小さくなります。

それにもかかわらず、税率8パーセントだった前年の確定税額をそのまま基準として中間納付額を計算すると、今年の実態との間に大きなズレが生じます。

単純な数字で考えると分かりやすい

例えば、ある食品事業者が前年に年間240万円の消費税を納付していたとします。

事業規模や取引内容が同程度であっても、飲食料品の売上にかかる税率が8パーセントから1パーセントへ下がれば、2027年4月以降の納付税額は前年より大きく減る可能性があります。

仮に年間の実際の納付税額が大幅に減ったとしても、中間申告額を前年の240万円という数字から機械的に計算すれば、税率引下げ後の実態より多くの税金を途中で納めることになりかねません。

最終的な年間税額と、中間納付額のバランスが崩れてしまうわけです。

売上税額だけでなく仕入税額も関係する

実際の消費税計算は、単純に税率が8分の1になるわけではありません。

本則課税では、売上にかかる消費税額から控除できる仕入税額を差し引きます。

飲食料品の売上税率は1パーセントへ下がりますが、店舗設備、システム、広告、事務用品などには標準税率が適用される取引があります。

そのため、売上税額が減る一方で仕入税額はそれほど減らず、納付税額が急減したり、場合によっては還付になったりすることも考えられます。

この点でも、前年の納付税額が今年の税負担を示す適切な目安ではなくなる可能性があります。

過大に納めても最終的には精算される

中間納付額が実際の年間税額より大きくなった場合でも、そのまま余分に税金を取られて終わるわけではありません。

課税期間が終了すれば確定申告を行い、実際の年間税額を計算します。

すでに納付した中間納付額との差額をそこで精算します。

例えば年間税額が100万円なのに中間納付で150万円を納めていれば、差額について精算されることになります。

したがって、最終的な税負担だけを見れば調整されます。

しかし企業にとっては、それだけでは十分ではありません。

問題はお金が一時的に会社から出ていくこと

企業経営では、税金の最終的な金額だけではなく、いつ現金を支払うのかが重要です。

本来100万円程度の年間納付額になる会社が、途中で150万円を納めれば、50万円分の資金を一時的に余分に手放すことになります。

確定申告で精算されるとしても、それまでの期間、その資金を仕入れ、給与、設備投資などに使うことはできません。

中間申告が年11回必要な大規模事業者では、こうした税率変更の影響が年間を通じて資金繰りに及ぶ可能性があります。

今回の問題は単なる税額計算の技術的な問題ではなく、企業のキャッシュフローの問題でもあります。

仮決算による中間申告という方法もある

消費税の中間申告には、前年実績を基準とする方法だけではありません。

一定の場合には、中間申告対象期間について仮決算を行い、実際の売上や仕入れなどをもとに税額を計算する方法もあります。

この方法なら、その時点の事業実態をより直接的に反映できます。

一方で、確定申告に近い計算を課税期間の途中で行うことになるため、事務負担が大きくなります。

税率引下げによって多数の事業者に同じ問題が生じるのであれば、毎回事業者に仮決算を求めるより、制度として簡便な調整方法を用意する方が合理的です。

そこで前年税額そのものを新税率で組み替える

今回示された中間申告制度の特例は、この問題に対応するものです。

2027年4月以降の中間申告期間について、前年の確定申告でも新しい1パーセントの税率が適用されていたものとして納付税額を再計算します。

そして、その再計算した前年税額をもとに中間申告税額を算出できるようにします。

実際の前年は8パーセントだったものの、中間申告を計算するときだけ、もし前年も1パーセントだったら税額はいくらだったかを考えるわけです。

これによって2027年の税率に近い基準額をつくります。

前年実績方式を残しながらズレを修正する

この特例のポイントは、中間申告制度そのものを大きく変えるわけではないことです。

前年実績を利用して簡便に計算するという基本的な仕組みは残します。

その一方で、税率だけを新しい制度に置き換えて前年税額を再計算します。

これなら事業者が毎回、本格的な仮決算をしなくても、税率変更による大きなズレを抑えることができます。

税率引下げという特殊な状況に合わせて、既存制度を調整する仕組みといえます。

2029年の税率復元でも同じ視点が必要になる

今回の飲食料品の1パーセント税率は2年間の時限措置です。

2029年には8パーセントへ戻すことが予定されています。

その場合には、今度は逆方向の問題が生じます。

前年が1パーセントで、今年が8パーセントになるからです。

前年の低い税額だけを基準にすれば、中間納付額が実際の税負担より小さくなる可能性があります。

税率変更では、税率そのものだけでなく、前年実績を利用する制度にどのような影響が出るのかまで考える必要があります。

結論

消費税の中間申告では、原則として前年の確定税額を基準として中間納付額を計算します。

前年と今年の税率が同じなら合理的な方法ですが、2027年4月から飲食料品の税率が8パーセントから1パーセントへ下がると事情が変わります。

今年の実際の納付税額が大幅に減る可能性があるにもかかわらず、8パーセント時代の前年税額を基準にすると、中間納付額が過大になる可能性があります。

最終的には確定申告で精算されますが、それまで企業から必要以上の現金が流出すれば資金繰りに影響します。

そこで、前年にも1パーセントの新税率が適用されていたものとして税額を再計算し、その金額から中間申告税額を算出できる特例が設けられます。

消費税率の引下げでは、最終的な税負担だけではなく、前年税額を基準とする中間申告制度まで調整する必要があるのです。

参考

税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す

税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案

タイトルとURLをコピーしました