住宅価格が上昇するなか、毎月の返済負担を抑える住宅ローンへの関心が高まっています。
その1つが2階建て住宅ローンです。
元金の一部を最終返済日まで据え置くことで、毎月の返済額を小さくします。
一方、住宅の将来価値を活用して毎月の返済負担を抑える考え方として、残価設定型住宅ローンがあります。
どちらも最後に大きな金額が残るため、似た仕組みに見えます。
しかし、何を根拠に最後の金額を残すのか、最終的にどのように処理するのかという点には違いがあります。
住宅ローンを比較するときには、毎月返済額だけでなく最後に何が起こるのかを見ることが重要です。
残価とは何か
残価とは、将来その住宅に残っていると想定する価値です。
例えば現在5000万円の住宅について、一定期間後にも2000万円の価値が残ると想定したとします。
この2000万円が残価にあたります。
残価設定型住宅ローンでは、この将来価値を利用して返済方法を設計します。
考え方としては、自動車の残価設定型ローンと似た部分があります。
住宅価格のすべてを毎月の返済だけで処理するのではなく、将来残ると想定する価値を返済の出口に利用します。
残価設定型住宅ローンの仕組み
一般的な考え方として、残価設定型住宅ローンでは住宅の将来価値に相当する部分を最後まで残します。
そのため通常の住宅ローンより、返済期間中の元金返済を抑えられる場合があります。
例えば5000万円の住宅について、将来の残価を2000万円と設定するとします。
単純化すれば、返済期間中は残価部分を除いた3000万円を中心に返済していくイメージになります。
そして最後に残った2000万円をどう処理するかを考えます。
ここが通常の住宅ローンとの大きな違いです。
2階建て住宅ローンの仕組み
2階建て住宅ローンでは、借入額そのものを返済方法の異なる部分に分けます。
記事で紹介されたドコモSMTBネット銀行の商品では、元金の50%を最終返済日に一括返済します。
例えば1億円借りれば、5000万円を最終返済日まで据え置く形です。
残りの部分は返済期間中に元金を返していきます。
そのため毎月の返済額を通常の住宅ローンより抑えることができます。
重要なのは、元金の一部について返済時期を最後へ移していることです。
何を基準に最後の金額を残すのか
2つの仕組みの違いを理解するポイントが、最後に残す金額を何によって考えるかです。
残価設定型では、住宅の将来価値という考え方が重要になります。
将来その住宅にどの程度の価値が残るのかを前提として、残価部分を設定します。
一方、今回の2階建て住宅ローンでは、借入元金の50%を最終返済日に残す仕組みです。
つまり住宅の将来価値をそのまま50%と評価しているという意味ではありません。
最後に大きな金額が残る点は似ていますが、その金額が生まれる考え方は同じではありません。
最終返済時の選択肢を見る
最後に残った金額をどうするのかも重要です。
2階建て住宅ローンでは、最終返済日に据え置いた元金を返済する必要があります。
その資金を金融資産から用意することもできます。
退職金などを利用することも考えられます。
住宅を売却し、その代金を返済に充てる方法もあります。
一方、残価設定型住宅ローンでは商品設計によって最終的な選択肢が異なるため、契約条件の確認が欠かせません。
住宅の売却や残価部分の返済など、最後にどのような選択肢が用意されているのかを見る必要があります。
住宅価格下落の影響
どちらの住宅ローンでも注意したいのが住宅価格の下落です。
例えば最後に2000万円が残る計画で、その時点の住宅価格が3000万円なら、売却によって返済できる可能性があります。
しかし住宅価格が1500万円まで下がっていれば、売却代金だけでは2000万円を用意できません。
2階建て住宅ローンでも同様です。
5000万円の元金が残っているとき、住宅が4000万円でしか売れなければ、単純計算で1000万円不足します。
最後に大きな金額を残す住宅ローンでは、住宅価格とローン残高の関係が特に重要になります。
毎月返済額が小さい理由は同じ方向にある
残価設定型住宅ローンと2階建て住宅ローンには共通する考え方もあります。
将来に一定の金額を残すことで、現在の元金返済を抑えることです。
現在の返済を少なくすれば、毎月の家計には余裕が生まれます。
その代わり、将来に大きな金額を処理する必要があります。
つまり現在と将来のどちらに返済負担を置くのかという時間配分を変える金融商品と見ることができます。
毎月返済額が小さいことだけをメリットとして捉えないことが重要です。
住宅を長く持つのか売るのか
こうした住宅ローンを考えるときには、住宅を将来どうするのかも重要になります。
長期間住み続けたいのか。
一定期間後に売却する予定なのか。
子どもへ残したいのか。
老後には小さな住宅へ住み替えたいのか。
住宅の使い方によって、適した出口戦略は変わります。
将来の売却を想定する商品なら、住宅の資産価値が重要になります。
長く住み続けるなら、最後に残った元金を住宅売却以外の資金で返済する準備が必要になる場合があります。
商品名より契約条件を見る
残価設定型、2階建てという名称だけでは、住宅ローンのリスクを判断できません。
重要なのは契約条件です。
最後にいくら残るのか。
その金額はどのように決まるのか。
金利はいくらか。
返済期間中に元金はいくら減るのか。
最終返済時にどのような選択肢があるのか。
途中で住宅を売却する場合にはどうなるのか。
こうした条件を確認することで、住宅ローンの本当の姿が分かります。
通常の住宅ローンとも比較する
新しい住宅ローンを検討するときには、通常の住宅ローンとの比較も重要です。
通常の住宅ローンでは毎月の返済額が大きくなる場合があります。
その一方で、時間の経過とともに元金が減り、最終返済時には残高がゼロになることを基本とします。
最後に大きな金額を残すローンでは、現在の返済負担を小さくできます。
しかし将来の返済資金を別に準備する必要があります。
現在の負担と将来の負担のどちらを重視するかによって、住宅ローンの見え方は変わります。
結論
残価設定型住宅ローンと2階建て住宅ローンは、どちらも最後に一定の金額を残すことで、返済期間中の負担を抑えるという共通点があります。
しかし仕組みは同じではありません。
残価設定型では、住宅の将来価値である残価という考え方が重要になります。
一方、記事で紹介された2階建て住宅ローンでは、借入元金の50%を最終返済日まで据え置きます。
1億円借りれば5000万円です。
住宅ローンを比較するときに大切なのは、毎月いくら払うかだけではありません。
最後にいくら残るのか。
なぜその金額が残るのか。
そのお金を何によって返すのか。
住宅価格が下落した場合はどうなるのか。
最後の返済まで確認して初めて、住宅ローン全体の負担を比較することができます。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴