住宅を購入するとき、最も気になる数字の1つが月々の住宅ローン返済額です。
毎月20万円なら払える。
30万円になると少し厳しい。
このように現在の収入と毎月返済額を比較して、購入できる住宅価格を考える人は多いでしょう。
2階建て住宅ローンでは元金の一部を最終返済日まで据え置くため、通常の住宅ローンより月々の返済額を抑えることができます。
すると、これまで手が届かなかった高額な住宅まで購入できるように見えることがあります。
しかし、月々の返済額が小さくなったからといって、住宅そのものが安くなったわけではありません。
返済可能額と借入可能額を分けて考える必要があります。
毎月返済額とは何か
住宅ローンを組むと、毎月一定額を金融機関へ返済します。
一般的には元金と利息から構成されます。
この毎月返済額は、家計に直接影響します。
手取り収入が50万円の家庭で住宅ローン返済が20万円なら、残りの30万円から食費、光熱費、教育費などを支払うことになります。
住宅ローン返済が30万円になれば、ほかの支出に使えるお金はさらに少なくなります。
そのため毎月返済額を確認すること自体は非常に重要です。
借入可能額とは何か
一方、借入可能額は金融機関が融資できると判断する金額です。
一般に収入や年齢、返済期間、既存の借り入れ、適用金利など、さまざまな条件をもとに審査されます。
金融機関から1億円借りられると言われたとしても、それは1億円借りても家計にまったく問題がないことを保証するものではありません。
金融機関は融資の可否を判断します。
実際にその住宅ローンを抱えながら何十年も生活するのは借り手です。
借りられる金額と、無理なく返せる金額は同じとは限りません。
2階建てローンでは毎月返済額を小さくできる
2階建て住宅ローンでは、元金の一部を最終返済日まで据え置きます。
記事で紹介された商品では元金の50%を最後に一括返済します。
例えば1億円借りた場合、5000万円を最終返済日まで据え置く形になります。
返済期間中に少しずつ返す元金が通常の住宅ローンより少なくなるため、月々の返済額を抑えることができます。
現在の家計だけを見ると、高額な住宅を購入しやすくなったように感じるでしょう。
しかし5000万円の借金がなくなったわけではありません。
将来へ移動しただけです。
毎月払えるから買えるとは限らない
例えば通常の住宅ローンでは毎月返済額が大きすぎて購入をためらう物件があったとします。
2階建て住宅ローンを利用すると、毎月返済額が家計の許容範囲に入ったとします。
ここで購入できると判断したくなります。
しかし、本当に確認すべきなのは月々の返済額だけではありません。
最後に残る元金を返済できるか。
住宅価格が下落しても対応できるか。
収入が減少しても返済を続けられるか。
こうした将来の負担まで含めて考える必要があります。
住宅価格が下がったわけではない
金融商品の工夫によって毎月返済額を小さくすると、住宅が買いやすくなったように見えます。
しかし1億5000万円のマンションは、住宅ローンの返済方法を変えても1億5000万円のマンションです。
住宅価格そのものが安くなるわけではありません。
借入額そのものが減るわけでもありません。
変わるのは返済する時期です。
現在の返済を小さくし、将来の返済を大きくすることで、月々の負担を調整しています。
ここを混同すると、家計の実力以上に高額な住宅を購入する可能性があります。
返済比率だけでは分からない
住宅ローンでは、収入に対して返済額がどの程度を占めるかという考え方があります。
毎月の住宅ローン返済が収入に占める割合を見ることで、家計負担を考えることができます。
しかし2階建て住宅ローンでは、毎月返済額だけを見ると負担が小さく見えます。
その一方で最終返済日に大きな元金が残ります。
つまり現在の返済比率だけでは、将来の一括返済負担を十分に表せません。
毎月返済額に加えて、住宅ローン残高の推移を見る必要があります。
将来の収入は変わる
住宅ローンは30年や35年という長期間にわたることがあります。
その間、現在と同じ収入が続くとは限りません。
昇給する可能性があります。
転職する可能性もあります。
定年などによって収入が減少する時期もやってきます。
特に最終返済日が退職後になる場合、現役時代の収入を基準に考えるだけでは不十分です。
最後に大きな元金が残る住宅ローンほど、その時点の年齢と収入を確認することが重要になります。
住宅以外の支出も増減する
家計には住宅ローン以外にも多くの支出があります。
子どもがいれば教育費が増える時期があります。
住宅を所有すれば固定資産税や修繕に関連する支出もあります。
マンションでは管理費や修繕積立金などの負担も続きます。
住宅ローンだけなら払えるとしても、これらを合わせると家計が厳しくなることがあります。
住宅購入では住宅ローン返済額だけではなく、住居に関係する支出全体を見る必要があります。
余裕を残すことが重要
住宅ローンを返済できるかどうかは、予定通りの生活が続いた場合だけで判断するものではありません。
収入が一時的に減った場合。
大きな支出が発生した場合。
金利が変化した場合。
こうした状況でも家計を維持できる余裕があるかを考えます。
毎月の収入をほぼ使い切る住宅ローンでは、少しの環境変化でも資金繰りが厳しくなる可能性があります。
借りられる限界まで借りるのではなく、家計に余白を残すことも長期返済では重要です。
最後に残る借金まで含めて判断する
2階建て住宅ローンでは、現在の毎月返済額と将来の一括返済額をセットで見る必要があります。
例えば1億円を借りて5000万円を最後まで据え置くなら、現在の家計だけでなく、将来5000万円を返済できる家計なのかを考えます。
金融資産を形成できるのか。
退職金を利用するのか。
住宅を売却するのか。
そして、その計画が崩れた場合にも対応できるのか。
ここまで考えて初めて、無理なく返済できる借入額が見えてきます。
結論
月々の住宅ローン返済額が安くなれば、家計の現在の負担は軽くなります。
しかし、それだけで高額な住宅を無理なく購入できるようになったとは言えません。
2階建て住宅ローンでは元金の一部を最後まで据え置くことで、毎月返済額を小さくします。
借金が減ったのではなく、返済を将来へ移しているのです。
金融機関から借りられる金額。
現在の収入で毎月払える金額。
そして将来まで含めて無理なく返せる金額。
この3つは同じとは限りません。
住宅ローンを考えるときに重要なのは、月々の返済額を最小にすることではありません。
現在の生活を維持しながら、最後に残る元金まで返済できる金額に借入額を抑えることです。
毎月払えるから買えるではなく、最後まで返せるから買える。
この視点が、高額な住宅と長期の住宅ローンを考えるうえで重要になります。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴