東京23区では住宅価格の高騰が続いています。
東京カンテイによると、2026年7月の東京23区における新築小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は9321万円でした。
9000万円を超える住宅を購入するとき、「これだけ高いお金を払うのだから資産になる」と考える人もいるでしょう。
確かに持ち家は売却できる財産です。
しかし、9000万円で購入した住宅が30年後にも9000万円の価値を持つとは限りません。
住宅は土地と建物からできています。
土地と建物では、時間の経過による価値の変化が異なります。
さらに住宅ローンを利用していれば、住宅の価格だけではなく、その時点でいくら借金が残っているかも重要です。
持ち家が本当に資産になるのかを考えるには、購入価格ではなく30年後の土地、建物、住宅ローン残高を分けて考える必要があります。
持ち家は資産なのか
持ち家は一般に資産です。
売却すれば現金化できる可能性があるからです。
しかし「資産である」ことと「買った金額の価値が残る」ことは同じではありません。
例えば9000万円で購入した住宅が30年後に6000万円で売れる場合もあります。
3000万円でしか売れない場合もあります。
反対に、土地価格が大きく上昇して1億円以上で売れる可能性もあります。
住宅の将来価値は購入価格だけでは決まりません。
どこに建っているのか。
土地と建物にいくらずつ払ったのか。
周辺の住宅需要がどう変化したのか。
こうした条件によって大きく変わります。
住宅は土地と建物に分けて考える
戸建て住宅の資産価値を考えるうえで最も重要なのが、土地と建物を分けることです。
例えば9000万円の戸建てについて、
土地6000万円
建物3000万円
だったとします。
30年後、土地が6000万円の価値を維持していても、建物は新築時と同じ3000万円では評価されない可能性があります。
逆に土地価格が上昇すれば、建物の価値が下がっても住宅全体では高い価格を維持することがあります。
戸建ての長期的な資産価値では、土地の比重が大きくなりやすいのです。
建物は時間とともに古くなる
新築住宅には新築としての価値があります。
誰も住んでいない。
設備が新しい。
断熱性能などが新しい基準に対応している。
こうした特徴があります。
しかし30年経過すれば建物は中古住宅になります。
外壁や屋根は劣化します。
給湯器やキッチン、浴室なども交換が必要になります。
間取りや住宅性能が、その時代の購入者の希望に合わなくなることもあります。
適切な修繕を行えば建物を長く利用できますが、築年数による市場評価の変化を完全に避けることはできません。
建物の価値がゼロになるとは限らない
一方で「木造戸建ては一定年数がたてば価値がゼロになる」と単純に考えるのも適切ではありません。
税務上の減価償却や固定資産税評価と、中古住宅市場で実際に売買される価格は別のものです。
築年数が古くても、
適切に維持管理されている
耐震性能が高い
断熱性能が高い
間取りが使いやすい
大規模なリフォームをしている
といった住宅なら、建物にも市場価値が認められる可能性があります。
中古住宅市場が成熟すれば、建物の状態そのものを評価する考え方がさらに重要になるでしょう。
30年後には土地の価値がより重要になる
建物が古くなるほど、戸建て住宅全体の価格に占める土地の重要性が高まります。
例えば9000万円で購入した住宅について、30年後の建物価値が大きく低下したとしても、土地が7000万円で売れるなら一定の資産価値が残ります。
反対に土地需要が弱くなり、土地価格そのものが大きく下落すれば、住宅全体の資産価値も低下します。
つまり戸建てを30年後まで保有するなら、「今どんな建物が建っているか」だけでなく「30年後もその土地を欲しい人がいるか」を考えることが重要です。
立地によって30年後の価値は大きく変わる
住宅の資産価値を左右する最大の要素の一つが立地です。
例えば、
駅に近い
都心への交通利便性が高い
買い物が便利
学校や病院が近い
住宅地として人気がある
といった場所には将来も一定の需要が期待できます。
東京23区でもすべての住宅が同じように値上がりするわけではありません。
同じ9000万円で購入した住宅でも、30年後には立地によって大きな価格差が生まれる可能性があります。
住宅を資産として考えるなら、建物以上に土地選びが重要になる場合があります。
人口減少時代には住宅の選別が進む
日本全体では人口減少が進んでいます。
世帯数も将来的には減少することが予想されます。
住宅を必要とする人が減れば、すべての住宅が同じように価値を維持することは難しくなります。
便利な地域。
人気のある地域。
雇用のある地域。
交通網が充実している地域。
こうした場所には需要が残りやすい一方、人口流出が続く地域では住宅を売りたくても買い手が見つかりにくくなる可能性があります。
今後は「持ち家だから資産」というより「需要が残る場所の持ち家だから資産」という考え方が重要になります。
住宅ローン残高を差し引いて考える
住宅の市場価格だけを見ても、本当の資産額は分かりません。
住宅ローンが残っているからです。
例えば30年後に住宅が5000万円で売れるとします。
住宅ローン残高が1000万円なら、単純化すれば差額は4000万円です。
一方、住宅が5000万円で売れても住宅ローンが6000万円残っていれば、売却代金だけではローンを完済できません。
資産価値を考える場合には、
住宅の市場価格から住宅ローン残高を差し引く
という視点が必要です。
住宅価格だけを見ると5000万円の資産でも、借金を考慮すれば実質的な持分は違います。
頭金によって純資産の増え方も変わる
同じ9000万円の住宅でも、資金調達方法によって状況は変わります。
例えば3000万円を自己資金で支払い、6000万円を住宅ローンで借りる人がいます。
一方、ほぼ全額を住宅ローンで借りる人もいます。
住宅価格が購入直後に下落した場合、借入額が大きいほど住宅価格よりローン残高のほうが多い状態になりやすくなります。
住宅購入では物件価格だけでなく、自分がその住宅の価値のうちどれだけを実質的に所有しているかを見る必要があります。
住宅ローン返済には資産形成という面もある
賃貸住宅では家賃を支払っても、その住宅の所有権は取得できません。
一方、住宅ローンでは返済のうち元本部分を返すことで借入残高が減っていきます。
住宅の市場価値が一定だとすれば、ローン残高が減るほど自分の純資産部分は増えます。
この意味では持ち家には資産形成の側面があります。
ただし住宅ローン返済額のすべてが資産になるわけではありません。
利息は金融機関への支払いです。
税金や保険、修繕費も必要です。
持ち家の資産形成効果を見るときには、こうした支出も考える必要があります。
9000万円で買って6000万円で売れても3000万円損とは限らない
住宅価格だけを見ると、9000万円で購入した住宅を30年後に6000万円で売れば3000万円値下がりしたことになります。
しかし、その住宅に30年間住んでいます。
もし住宅を購入していなければ、その間は賃貸住宅の家賃を支払っていた可能性があります。
そのため住宅購入の損得を考える場合、
購入価格
売却価格
住宅ローン利息
税金
保険
修繕費
購入や売却の諸費用
賃貸だった場合の家賃
などを比較する必要があります。
単純な購入価格と売却価格の差だけでは、30年間の居住による経済的な損得は判断できません。
マンションと戸建てでは価値の残り方が違う
マンションも戸建ても持ち家ですが、資産価値の構造は異なります。
戸建てでは土地と建物を比較的明確に分けて考えられます。
建物が古くなっても、土地を利用して新しい住宅を建てることができます。
マンションでは土地を区分所有者で共有し、建物全体の管理状態が個々の住戸の価値にも影響します。
大規模修繕が適切に行われているか。
修繕積立金が十分か。
管理組合が機能しているか。
こうした要素も重要です。
戸建てでは土地の立地、マンションでは立地に加えて建物全体の管理という違いがあります。
売りやすさも資産価値の一部である
資産は価格だけではなく、必要なときに現金化できるかも重要です。
例えば査定価格が5000万円でも、買い手が見つからなければ簡単には現金化できません。
駅に近い住宅。
一般的な間取り。
適度な広さ。
需要の多い価格帯。
こうした住宅は購入希望者の範囲が広くなりやすいと考えられます。
反対に非常に特殊な間取りや極端に大きな住宅などは、購入希望者が限定される可能性があります。
自分にとって理想的な住宅と、将来市場で売りやすい住宅は必ずしも同じではありません。
自宅は金融資産とは性格が違う
持ち家を資産として考えるときには、預貯金や株式との違いも理解する必要があります。
株式なら一部だけ売却できます。
1000万円の株式のうち100万円分だけ現金化することもできます。
しかし自宅は通常、玄関だけ100万円分売るということはできません。
さらに自宅を売却すれば、次に住む場所が必要になります。
つまり持ち家には資産価値があっても、生活に必要な資産であるため自由に使える金融資産とは性格が異なります。
老後資金を考えるときには、この違いが重要になります。
30年後を考えて買うことが重要になる
新築住宅を購入するときには、どうしても現在の生活を中心に考えます。
通勤しやすいか。
子ども部屋があるか。
設備が新しいか。
しかし住宅を30年、40年保有するなら、将来の視点も必要です。
子どもが独立した後も住みやすいか。
高齢になって3階建てで生活できるか。
売却しやすいか。
建て替えられる土地なのか。
地域の人口は維持されそうか。
住宅は購入時点だけではなく、人生の変化とともに評価する必要があります。
結論
持ち家は資産です。
しかし、9000万円で買った住宅が30年後にも9000万円の資産として残るとは限りません。
戸建て住宅では、土地と建物の価値を分けて考えることが重要です。
建物は年月とともに古くなります。
一方、土地は立地への需要が続けば長期間価値を維持し、場合によっては価格が上昇する可能性もあります。
そのため30年後の資産価値を大きく左右するのは、現在の建物の豪華さより、その土地を将来も欲しい人がいるかという点です。
さらに住宅ローンが残っているなら、住宅価格だけでなくローン残高を差し引いて考える必要があります。
そして持ち家には30年間住むという利用価値もあります。
住宅は単なる投資商品でも、単なる消費財でもありません。
住むために使いながら、土地や建物という資産を保有する特殊な財産です。
東京で住宅価格が9000万円、1億円という時代になったからこそ、「いま買えるか」だけでは十分ではありません。
30年後にその住宅はいくらで売れるのか。
そのとき住宅ローンはいくら残っているのか。
そして、その場所を次に買いたい人がいるのか。
持ち家を本当に資産にするためには、購入時から30年後を考えて住宅を選ぶことが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年8月13日朝刊「新築戸建て9000万円台続く 7月東京23区 マンション高騰で需要増」