国税庁は2027年度の定員要求で730人の増員を要求しています。
730人と聞くと、国税庁の職員が一気に730人増えるように感じるかもしれません。
しかし、実際の純増要求数は178人です。
なぜ730人の増員要求が178人になるのでしょうか。
ポイントになるのが定員合理化です。
国の行政機関では、新しい仕事のために人員を増やす一方で、既存業務の効率化などによって定員を減らす仕組みがあります。
増員だけを見ると、実際の組織の大きさを見誤る可能性があります。
730人は何のために必要なのか
国税庁が増員を要求する背景には、税務行政を取り巻く環境の変化があります。
代表的なのが消費税の不正還付への対応です。
この分野では185人の増員が要求されています。
租税回避スキームへの対応でも57人の増員要求があります。
複雑な取引が増えれば、申告書だけを見るのではなく、取引の実態や資金の流れなどを調べる必要があります。
税制や経済取引の複雑化によって、新しい業務が増えているわけです。
増員要求とは何か
ここで注意したいのが増員要求という言葉です。
これは、新しい行政需要に対応するために必要な人員を要求しているという意味です。
そのため、増員要求数だけを見て翌年度の職員数がその人数だけ増えると考えることはできません。
一方では人員を増やし、別の分野では業務の合理化によって定員を削減するからです。
国税庁の場合、2027年度の定員合理化目標数は552人とされています。
この数字を合わせて考える必要があります。
730人から552人を差し引く
計算自体は非常にシンプルです。
増員要求が730人。
定員合理化目標数が552人。
差し引くと178人です。
つまり、730人から552人を差し引いた178人が2027年度の定員の純増要求数になります。
730人という数字と178人という数字は矛盾しているわけではありません。
新しい仕事に730人を配置したい一方、既存の組織や業務から552人分を合理化するという構造です。
定員合理化とは何か
定員合理化とは、行政機関の仕事を効率化することなどによって、一定の定員を削減していく考え方です。
行政需要が増えるたびに職員を純粋に積み上げていけば、組織は際限なく大きくなってしまいます。
そこで、既存業務の見直しや効率化を進めながら、新しく必要になった分野へ人員を振り向けます。
国税庁でも、税務行政のデジタル化などによって効率化できる仕事がある一方、新たに人手が必要となる分野があります。
組織全体としては、人員の再配置を進めながら新しい行政需要に対応することになります。
人が減る仕事と増える仕事がある
税務行政のすべての仕事が同じ方向へ動いているわけではありません。
デジタル化やオンライン化によって効率化できる業務があります。
一方で、複雑な租税回避スキームの分析や消費税の不正還付調査のように、人による確認や専門的な判断が重要になる仕事もあります。
つまり、単純な事務を効率化し、その分の人的資源を高度な調査や分析へ振り向けることが重要になります。
定員合理化と重点分野への増員が同時に行われる背景には、こうした仕事の変化があります。
純増数より内訳を見ることが重要
国税庁の定員を見る場合、職員が何人増えるのかだけでは十分ではありません。
より重要なのは、どの分野に人員を増やそうとしているのかです。
今回の要求では、消費税不正還付への対応に185人、租税回避スキームへの対応に57人が挙げられています。
さらに、飲食料品に係る消費税率の引下げへの対応として74人の時限定員も要求されています。
こうした数字を見ることで、国税庁が現在どの問題を重要視しているのかが見えてきます。
予算だけでなく人員配置も、行政の重点政策を読み取る材料になります。
期間限定で必要になる人員もある
人員要求には恒久的なものだけでなく、期間限定のものもあります。
飲食料品に係る消費税率の引下げへの対応として要求されている74人は、2年間の時限定員です。
税率変更に伴って個別相談が増える。
説明会への講師派遣が必要になる。
還付申告が増える。
こうした一時的な業務量の増加に対応するための人員です。
恒久的に必要な仕事なのか、一時的に増える仕事なのかによって、人員の配置方法も変わります。
人員の再配置が重要になる
730人の増員要求と552人の定員合理化を合わせて考えると、国税庁の人員政策の特徴が見えてきます。
単純に組織を大きくするのではありません。
従来の仕事を効率化しながら、重要性が高まった分野へ人員を移していくことになります。
税務行政が変化すれば、必要とされる職員の専門性も変わります。
大量の定型的な事務を処理する能力だけではなく、複雑な取引を分析する能力やデジタル技術を利用する能力などが、より重要になる可能性があります。
人数だけではなく、職員が何をするのかを見る必要があります。
国税庁の予算とも関係する
2027年度の国税庁の予算概算要求額は6570億4700万円です。
そのうち人件費は5571億円で、全体のおよそ85パーセントを占めます。
税務行政は非常に人件費の比重が大きい行政分野です。
だからこそ、どこへ人員を配置するかは予算の使い方そのものにも直結します。
限られた職員を、相談、徴収、税務調査、不正還付対策、租税回避対策などへどのように配分するのか。
定員要求は、国税庁の今後の方向性を見るうえで重要な資料になります。
結論
国税庁は2027年度に730人の増員を要求しています。
しかし、国税庁の職員がそのまま730人純増するという意味ではありません。
定員合理化目標数が552人あるため、差し引いた純増要求数は178人です。
重要なのは、730人という数字の大きさだけではなく、その人員をどこへ配置しようとしているのかを見ることです。
消費税不正還付への対応には185人。
租税回避スキームへの対応には57人。
飲食料品に係る消費税率の引下げには、別途74人の時限定員が要求されています。
既存業務を合理化する一方、新しい税務リスクや制度変更へ人員を重点的に配置する。
国税庁の定員要求から見えてくるのは、単純な職員数の増減ではなく、税務行政の人員をどこへ振り向けるのかという優先順位の変化なのです。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 国税庁の9年度予算概算要求と定員・機構要求、租税回避対策企画官の新設を