会社の中では、フロントとバックオフィスが対立することがあります。
営業は、
「経理は細かいことばかり言う」
と感じる。
経理は、
「営業はルールを守ってくれない」
と感じる。
営業からすれば、目の前の顧客や商談が最優先です。
バックオフィスからすれば、必要な書類をそろえ、会社のルールを守ることが重要です。
どちらかが間違っているとは限りません。
それぞれが自分の役割を果たそうとするからこそ、対立が生まれることがあります。
だからこそ必要なのは、どちらかを変えることではなく、お互いの仕事が見える関係をつくることです。
対立の原因は立場の違いにある
フロントとバックオフィスでは、日常的に見ているものが違います。
フロントが見ているのは、顧客や商談、売上などです。
バックオフィスが見ているのは、申請書や領収書、数字、社内ルールなどです。
同じ会社で働いていても、見えている景色は違います。
その違いを理解しないまま仕事をしていると、
「どうしてこんな簡単なことができないのか」
と相手に感じるようになります。
しかし、相手から見れば、自分たちにも同じように理解できないことがあるかもしれません。
バックオフィスから見えるフロントは一部分
元資料では、筆者自身がフロントの仕事に対する見方を変えた経験が紹介されています。
バックオフィスにいたころは、自分が長時間働く一方で、フロントが高額な出張費や会食費を使い、領収書を遅れて提出する姿を見て、ネガティブな感情を抱くことがあったとされています。
出張についても、おいしいものを食べ、気分転換ができるように感じることがありました。
しかし、実際に営業の商談やマーケティングの地方イベント、経営会食などに関わるようになると、印象は変わります。
外から見えていたものは、フロントの仕事の一部分にすぎなかったのです。
現場へ行けば見え方が変わる
実際の出張では生活リズムが崩れ、食事を楽しむ余裕もない。
経営会食では、難しく緊張感のあるやり取りが続き、精神的にも消耗する。
こうしたことは、経費精算書だけを見ていても分かりません。
「出張費が高い」
「会食費が発生している」
という数字だけでは、そこでどのような仕事が行われているのかまでは見えないからです。
元資料が勧めているのは、書類だけで相手を判断しないことです。
現場を知ることで、相手への見方は大きく変わる可能性があります。
部門間の壁をなくす第一歩は会話
では、どうすればフロントとバックオフィスがお互いを理解できるのでしょうか。
大がかりな制度を導入する前にできることがあります。
会話です。
元資料では、フロントのメンバーと話し、苦労していることを直接聞いてみることが勧められています。
普段ほとんど話したことがないのであれば、そこから始めればよいのです。
仕事上の書類だけでつながっている関係では、相手の実情はなかなか分かりません。
直接話すことで、書類には表れない事情が見えてきます。
稟議を読むことも現場理解になる
すべてのバックオフィス担当者が営業へ同行できるわけではありません。
それでも、現場を知る方法はあります。
元資料では、申請書だけではなく、稟議などを読んで状況を把握することが挙げられています。
なぜこの取引を行うのか。
どのような背景があるのか。
会社として何をしようとしているのか。
こうした情報を知ったうえで申請書を見るのと、何も知らずに見るのでは、受け止め方が違います。
書類を処理する前に、その書類が生まれた背景へ関心を持つことが大切です。
可能なら実際の現場へ行ってみる
元資料では、可能なかぎり現場へ同行することも勧められています。
営業同行だけではありません。
イベントがあれば、
「何か手伝うことはありますか」
と声をかけることもできます。
実際に現場へ入れば、フロントがどのような環境で働いているのかを自分の目で見ることができます。
同時に、フロントにとってもバックオフィスが身近な存在になります。
普段は書類を差し戻してくる人だった相手が、一緒に仕事をする人へ変わります。
こうした経験の積み重ねが、部門間の壁を低くしていきます。
フロントにもバックオフィスを理解してもらう
相互理解は一方向ではありません。
バックオフィスだけがフロントを理解すればよいわけではありません。
元資料では、こちらが相手への敬意を示すことで、相手もバックオフィスの業務を尊重してくれるという考え方が示されています。
なぜこの書類が必要なのか。
なぜ期限を守る必要があるのか。
なぜこの確認をしなければならないのか。
バックオフィス側も、自分たちの仕事を説明することが重要です。
お互いが相手の事情を知ることで、初めて対等な関係が生まれます。
相互理解と馴れ合いは違う
部門間の壁をなくすというと、
「営業の要望を何でも受け入れるのか」
と思うかもしれません。
そうではありません。
元資料では、フロントへの敬意を持つことと、バックオフィスが卑屈になることは明確に分けられています。
バックオフィスには会社の資産を守る役割があります。
締めるべきところは締めなければなりません。
必要な書類は提出してもらう。
守るべきルールは守ってもらう。
問題があれば指摘する。
相手を理解することは、判断を甘くすることではありません。
役割が違うからこそ組織になる
フロントとバックオフィスが完全に同じ考え方になる必要もありません。
役割が違うからです。
フロントは顧客と向き合い、事業を動かします。
バックオフィスは、その活動を支えながら会社の資産を守ります。
元資料では、会社の給与は経営活動やフロントが獲得した売上から支払われているという原点を意識することの重要性が示されています。
一方で、事業を継続していくためには、バックオフィスによる管理も必要です。
どちらが上で、どちらが下という関係ではありません。
異なる役割が組み合わさることで会社が成り立っています。
「対立しない」とは意見が一致することではない
フロントとバックオフィスの意見がぶつかること自体は、必ずしも悪いことではありません。
フロントは、
「この取引を進めたい」
と考える。
バックオフィスは、
「ここは確認が必要です」
と考える。
役割が違えば、意見が異なることはあります。
重要なのは、その違いが相手への不信や感情的な対立に変わらないことです。
相手の仕事を理解していれば、
「なぜそんなことを言うのか」
ではなく、
「役割上、この点を確認しているのだ」
と考えやすくなります。
部門間の壁は日常の行動で低くできる
部門間連携というと、組織変更や大きな制度改革を想像しがちです。
しかし、元資料から読み取れる方法は、もっと日常的です。
相手と話す。
苦労を聞く。
稟議を読む。
可能なら現場へ同行する。
イベントを手伝う。
そして、必要な書類を求めるときにも、相手の仕事への敬意を言葉にする。
こうした小さな行動を続けることで、お互いの仕事が見えるようになります。
それが部門間の壁を低くしていくのです。
結論
フロントとバックオフィスが対立する背景には、それぞれが見ている景色の違いがあります。
フロントにはフロントの事情があります。
バックオフィスにはバックオフィスの役割があります。
大切なのは、その違いをなくすことではありません。
違いを知ることです。
バックオフィスは現場を知る。
フロントにもバックオフィスの役割を知ってもらう。
お互いの仕事に敬意を持つ。
そのうえで、必要な意見はきちんと言う。
強い組織とは、意見の違いがない組織ではなく、役割の違いを理解したうえで協力できる組織なのではないでしょうか。
フロントとバックオフィスの間にある壁を低くする第一歩は、大きな仕組みをつくることではなく、相手の仕事を知ろうとすることから始まります。
参考
企業実務 2026年10月号
松岡俊「フロントへの想像力と敬意が、バックオフィスの信頼をつくる」