大胆な投資促進税制では、貸付けの用に供した設備は原則として対象外です。
一方、国税庁の通達では、法人が取得した特定機械装置等を委託先へ貸与した場合でも、その設備が専らその法人のためにする製品の加工等に使用されるのであれば、その法人の営む事業の用に供したものとして取り扱うことが示されています。
ここで重要になるのが専らという言葉です。
委託先に貸与した設備が自社製品だけに使われている場合は比較的分かりやすいでしょう。
では、同じ設備を委託先が他社の製品加工にも使っていたらどうなるのでしょうか。
この問題を考えると、設備の所有関係だけでなく実際の使用状況を確認することの重要性が見えてきます。
専らという言葉が重要になる
今回の通達は、委託先へ設備を貸与したすべてのケースを対象としているわけではありません。
ポイントは、その設備が専らその法人のためにする製品の加工等に使用されることです。
つまり、単に自社製品の加工にも使われているというだけではなく、自社のために使用される設備であることが重要になります。
ここを見落とすと、委託先に貸与すれば税制優遇を受けられると誤解してしまいます。
通達が示しているのは、単純な設備貸付けとは異なり、実質的に自社の生産活動の一部を外部へ委託しているケースです。
自社専用設備なら関係が分かりやすい
たとえばA社が特殊な部品を製造するための機械を購入し、加工を委託しているB社の工場へ設置したとします。
B社は、その機械をA社から受注した部品の加工だけに使用します。
他社の製品には使用しません。
この場合、設備がB社の工場に置かれていたとしても、A社の生産活動との関係は明確です。
A社が自社工場で加工する代わりに、工程の一部をB社へ委託していると考えることができます。
このようなケースが、通達の示す考え方を理解しやすい例です。
他社製品にも使用すると事情が変わる
では、B社が同じ機械をC社やD社から受注した製品の加工にも使った場合はどうでしょうか。
設備の所有者は依然としてA社です。
しかし、設備の利用実態はA社専用ではなくなります。
A社自身の生産工程の一部として使用されているという性格と、B社が自らの事業のために設備を利用しているという性格が混在することになります。
この場合には、通達が示す専らその法人のためという考え方との関係を慎重に確認する必要があります。
単純にA社の製品にも使用しているから対象になるとは考えない方がよいでしょう。
使用割合だけで機械的に判断できるとは限らない
ここで注意したいのは、専らという要件を単純な使用割合だけで判断できるとは限らないことです。
たとえば稼働時間の90%をA社向け、10%を他社向けに使用しているから自動的に認められる、といった割合が今回示された通達に明記されているわけではありません。
逆に、わずかな他社利用があった場合に直ちにどのような結論になるのかについても、個別の事実関係を確認する必要があります。
したがって、企業側で独自に一定の割合を設定し、その割合を超えていれば専らに該当すると判断するのは注意が必要です。
重要なのは、通達の文言と設備の実際の使用状況を照らし合わせることです。
契約上の専用設備かどうかを確認する
委託先への設備貸与では、まず契約内容を確認することが重要です。
たとえば契約上、その設備をA社から受託した製品の加工にのみ使用することが定められていれば、設備の性格を説明しやすくなります。
一方、委託先が自由に設備を利用できる契約になっている場合には、単純な貸付けとの区別が難しくなる可能性があります。
そのため、設備を貸与する段階で、
設備の使用目的
対象となる製品
他社向け利用の可否
設備の管理方法
などを明確にしておくことが重要です。
税務上の判断を設備取得後だけで考えるのではなく、委託契約を結ぶ段階から意識する必要があります。
契約書と実際の使用状況は一致している必要がある
契約書に自社専用と記載されていても、それだけで十分とは限りません。
実際には委託先が他社製品にも使用している可能性があるからです。
税制適用を考える場合には、形式と実態の両方を確認することが重要です。
設備の稼働記録や生産記録などから、どの製品の加工に使用されているのかを把握できる場合もあります。
大型設備ほど税制優遇額も大きくなる可能性があります。
そのため、取得時だけでなく、その後の使用状況を確認できる体制を整えておくことが重要になります。
専用設備であることには事業上の理由もある
企業が委託先に専用設備を置く理由は、税制だけではありません。
製品によっては特殊な加工が必要で、一般的な設備では対応できない場合があります。
品質を一定に保つため、発注元企業が仕様を指定した専用機械を使用することもあります。
大量生産を行うために、特定製品専用の生産ラインを設けるケースもあります。
こうした場合には、設備と発注元企業の事業との結び付きが強くなります。
設備の用途を考える際には、なぜその設備を自社で取得し、なぜ委託先に設置しているのかという事業上の理由も整理しておくことが重要です。
設備の使われ方が途中で変わる場合にも注意する
設備を取得した当初は自社専用だったとしても、その後の事業環境によって使われ方が変わることがあります。
生産量が減少したため、委託先が空いている時間に他社製品を加工するようになるかもしれません。
委託契約そのものが変更されることもあります。
設備投資税制では、取得時点の要件だけでなく、その後の取扱いについて確認が必要になる場合があります。
そのため、設備を取得した年度だけ確認して終わりではなく、用途変更があった場合には税務上の影響を検討することが大切です。
外部委託が増えるほど管理が重要になる
企業が外部委託を積極的に利用すると、自社所有の設備が複数の委託先に置かれることも考えられます。
この場合、経理部門だけでは設備の実際の利用状況を把握できない可能性があります。
製造部門、購買部門、設備管理部門、税務部門などが情報を共有する必要があります。
どの設備がどの委託先にあるのか。
何の製品に使われているのか。
他社向け利用が行われていないか。
こうした情報を管理することが、税制適用の確認にもつながります。
結論
委託先へ貸与した設備について大胆な投資促進税制を考える場合、重要な言葉が専らです。
通達では、設備が専らその法人のためにする製品の加工等に使用される場合には、その法人自身の事業の用に供したものとして取り扱うことが示されています。
したがって、自社専用設備として委託先で使用されている場合と、委託先が他社製品にも自由に使用している場合を同じように考えることはできません。
また、今回示された通達から、何%以上自社向けなら専らに該当するといった基準を独自に決めることにも注意が必要です。
契約書だけではなく、実際の設備の使われ方を確認することが重要になります。
誰が設備を所有しているかだけではなく、誰のために設備が使われているのか。
大胆な投資促進税制の貸付用資産を判断するときには、この実態を見る視点が欠かせません。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など
国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について