委託先に貸した機械でも税制優遇を受けられるのはなぜか 形式より設備の使われ方を見る考え方編

税理士
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大胆な投資促進税制では、対象設備を貸付けの用に供した場合、原則として即時償却や税額控除の対象になりません。

ところが、令和8年度の法人税関係法令の改正を受けて国税庁が公表した通達では、法人が取得した設備を委託先へ貸与した場合でも、一定の条件を満たせば自社の事業の用に供したものとして取り扱うことが明らかにされています。

ポイントは、その設備が専らその法人のためにする製品の加工等に使用されているかどうかです。

形式上は他社へ設備を貸していても、実態として自社の生産活動の一部を担っているのであれば、単純な貸付けとは区別するという考え方です。

製造業では委託先に設備を置くことがある

企業が製品をつくる場合、すべての工程を自社工場で行うとは限りません。

部品の製造、加工、組立などの一部を外部企業へ委託することがあります。

その際、委託先が所有する設備を使うだけでなく、発注元の企業が専用設備を購入して委託先の工場へ設置することもあります。

製品ごとに特殊な加工が必要であったり、品質を一定に保つために専用機械が必要だったりするからです。

この場合、設備の所有者は発注元企業ですが、実際に機械を操作するのは委託先です。

ここで貸付用資産に該当するのかという問題が生じます。

形式だけを見ると設備の貸付けに見える

たとえばA社が製造機械を取得し、加工会社であるB社の工場へ設置したとします。

機械の所有者はA社です。

機械が置かれている場所はB社の工場です。

実際に操作するのもB社の従業員です。

外形だけを見れば、A社がB社へ機械を貸しているように見えます。

大胆な投資促進税制では貸付けの用に供した設備は原則として対象外ですから、形式だけで判断すれば税制優遇を受けられないようにも思えます。

しかし、それだけでは設備の経済的な役割を正確に捉えられない場合があります。

誰のための加工に使われているのかを見る

重要なのは、B社がその機械を何のために使用しているのかです。

A社がB社へ自社製品の加工を委託し、その機械が専らA社のための製品加工に使われているとします。

この場合、B社は機械を自由に利用しているわけではありません。

実質的にはA社の生産工程の一部を外部で担当しています。

A社が自社工場に機械を設置して加工する代わりに、加工工程をB社へ委託していると考えることができます。

そこで通達では、このような設備についてA社自身の事業の用に供したものとして取り扱うことが示されています。

単純な賃貸との違いは何か

これに対して、A社が機械をB社へ貸し、B社がその設備を自由に利用できる場合を考えてみます。

B社がA社以外の顧客向け製品にもその機械を使用しているのであれば、事情は異なります。

A社自身の生産工程のための専用設備という性格が弱くなるからです。

つまり、同じ設備貸与でも、

単純に他社へ設備を貸しているのか。

それとも自社の生産活動の一部を委託するために設備を貸与しているのか。

という違いがあります。

税制上、この実態を区別することが重要になります。

専らという要件に注目する

今回の通達で特に重要なのが、専らその法人のためにする製品の加工等の用に供されるという考え方です。

委託先へ貸した設備ならすべて認められるわけではありません。

設備が自社のために使われているという事実が重要になります。

たとえば委託先が同じ設備を複数企業の製品加工に利用している場合には、専ら自社のためという要件との関係を慎重に確認する必要があります。

そのため、設備を貸与する企業は、所有関係だけではなく利用状況まで把握しておく必要があります。

設備の設置場所だけで判断しない

今回の取扱いから分かるもう一つのポイントは、設備がどこに置かれているかだけでは判断しないということです。

自社工場にある設備なら自社事業用、他社工場にある設備なら貸付用と単純に分けるわけではありません。

企業活動では、製造工程が複数企業にまたがることがあります。

自社の生産工程の一部が外部企業の工場で行われることもあります。

そのため、物理的な設置場所だけでなく、その設備が企業の事業活動の中でどのような役割を果たしているのかを見る必要があります。

委託契約の内容が重要になる

委託先へ設備を貸与する場合には、契約内容を整理しておくことも重要です。

誰が設備を所有するのか。

何のために設備を貸与するのか。

どの製品の加工に使用するのか。

委託先は他社向け製品にも使用できるのか。

設備の維持管理は誰が行うのか。

こうした事実関係によって、設備の実態を説明しやすくなります。

特に大胆な投資促進税制の適用を検討する場合には、税務部門だけでなく製造部門や購買部門などとも情報を共有しておくことが重要です。

契約書だけではなく実際の使用状況も確認する

契約書に自社専用設備と書かれていたとしても、実際の使われ方が異なっていれば問題になる可能性があります。

そのため、契約上の用途と実際の使用状況を一致させておくことが重要です。

委託先でどの製品を加工しているのか。

設備の稼働状況はどうなっているのか。

他社向け製品の加工に使われていないか。

こうした点を把握できるようにしておけば、その設備が自社の事業のために使用されていることを説明しやすくなります。

大型設備ほど税制優遇の金額も大きくなるため、設備取得時だけでなく、その後の使用状況にも注意が必要です。

分業型の生産体制に対応した考え方

現代の製造業では、企業間の分業が広く行われています。

企画や設計を自社で行い、部品加工を外部へ委託し、最終組立を別の拠点で行うこともあります。

このような生産体制では、自社の事業活動が自社の敷地内だけで完結するとは限りません。

もし設備の設置場所だけで判断すれば、外部委託を利用している企業の投資実態を十分に反映できない場合があります。

今回の通達は、設備の形式的な貸与関係だけでなく、実際の生産活動との結び付きを見る考え方を明確にしたものといえます。

結論

大胆な投資促進税制では、貸付けの用に供した設備は原則として対象外です。

しかし、委託先へ設備を貸与しているという事実だけで、直ちに貸付用資産になるわけではありません。

法人が取得した設備が、委託先において専らその法人のための製品加工などに使用されている場合には、その法人自身の事業の用に供したものとして取り扱われます。

重要なのは形式より実態です。

設備の所有者が誰なのか、どこに設置されているのかだけではなく、その設備が誰の事業のために使われているのかを見る必要があります。

そのため、委託先へ設備を貸与する企業では、委託契約、設備の用途、実際の使用状況を整理しておくことが重要です。

そして次に問題になるのが、通達が示す専ら自社のためという要件です。

自社専用設備なら分かりやすい一方、委託先が同じ設備を他社の製品加工にも使用した場合にどう考えるのかは、さらに重要な論点になります。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など

国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について

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