家族が増えて住宅が手狭になった。
転勤することになった。
より便利な場所へ移りたい。
子どもが独立したので小さな住宅へ住み替えたい。
人生の変化によって住み替えるとき、これまで住んでいたマンションをどうするかという問題が生じます。
売却して次の住宅の資金にする方法があります。
一方、そのまま所有して賃貸に出す方法もあります。
住宅を住まいと資産の両面から考える「半投半住」では、この出口の選択が重要になります。
売却の最大の利点は資金を確定できること
マンションを売却する最大の利点は、住宅資産を現金化できることです。
売却代金から住宅ローン残高や売却費用などを差し引いて資金が残れば、次の住宅購入に利用できます。
例えば住み替え先の頭金にすることができます。
新しい住宅ローンの借入額を減らすこともできます。
住宅以外の金融資産として保有することも可能です。
売却すれば、それまで住宅に固定されていた資金を別の目的へ使えるようになります。
半投半住では、住宅資産を次の人生の選択肢へつなげる重要な場面です。
売却すれば住宅ローンを整理できる
住宅ローンが残っている場合には、売却によってローンを整理できることも大きな意味を持ちます。
古い住宅のローンを抱えたまま新しい住宅を購入すれば、家計の負担は大きくなります。
売却代金で従来の住宅ローンを完済できれば、家計を整理したうえで次の住宅購入へ進めます。
特に金利が上昇する局面では、複数の住宅ローンを持つことによる負担も考える必要があります。
住宅を保有し続けることによる利益だけでなく、債務を減らす効果も比較する必要があります。
貸せば住宅を資産として残せる
一方、マンションを売却せず賃貸に出せば、住宅を保有し続けることができます。
借り手が見つかれば家賃収入を得られます。
将来住宅価格が上昇すれば、その時点で売却するという選択肢も残ります。
転勤などで一時的に自宅を離れるだけなら、将来再び住むことも考えられます。
売却してしまえば、その住宅を取り戻すことは基本的にできません。
そのため将来戻る可能性がある場合には、賃貸という選択に意味があります。
家賃収入と手取りは違う
賃貸に出すときに注意したいのが、家賃収入の全額を自由に使えるわけではないことです。
マンションを所有していれば管理費や修繕積立金の負担があります。
固定資産税などもあります。
賃貸管理を外部へ委託すれば管理費用がかかります。
設備が故障すれば修理費が必要です。
入居者が退去した後には原状回復や募集のための費用が発生することもあります。
さらに空室期間には家賃が入りません。
例えば月25万円で貸せるから年間300万円の利益が出るという単純な計算にはならないのです。
住宅ローンの契約条件を確認する
自宅として購入したマンションを賃貸に出す場合には、住宅ローンの契約条件を確認することが重要です。
住宅ローンは一般に、自分や家族が居住する住宅を対象とした融資です。
転勤などやむを得ない事情による賃貸について金融機関の取り扱いが定められている場合があります。
一方、当初から投資目的で住宅ローンを利用することとは話が異なります。
自分の判断だけで賃貸に出すのではなく、事前に金融機関へ確認することが必要です。
半投半住だからといって、自宅用住宅ローンを自由に投資用融資へ変えられるわけではありません。
賃貸需要があるかを考える
自分が気に入って購入した住宅だからといって、賃貸住宅として人気があるとは限りません。
購入需要と賃貸需要は必ずしも同じではないからです。
例えば非常に広く高額なマンションは購入希望者がいても、その金額に見合う家賃を支払える借り手が限られる場合があります。
反対に駅近の比較的コンパクトなマンションなら、単身者や共働き世帯などから安定した賃貸需要を期待できる場合があります。
賃貸に出す可能性があるなら、購入時から「この住宅はいくらで貸せるのか」という視点を持つことも有効です。
売却価格と家賃を比較する
売るか貸すかを判断するときには、感覚ではなく数字で比較することが重要です。
例えば現在6,000万円で売却できるマンションがあるとします。
年間家賃収入が240万円なら、単純な表面利回りは4%です。
しかし実際には管理費、修繕積立金、税金、賃貸管理費、空室、修繕費などがあります。
それらを差し引いた実質的な収益は小さくなります。
一方、6,000万円で売却して住宅ローンを返済し、残った資金を次の住宅購入に使えば、新しい住宅ローンの利息負担を減らせるかもしれません。
家賃収入だけを見るのではなく、売却によって得られる効果まで含めて比較する必要があります。
住宅価格上昇への期待だけで持たない
「これからも値上がりしそうだから売らずに持っておこう」と考えることがあります。
もちろん将来価格が上昇する可能性はあります。
しかし逆に下落する可能性もあります。
保有している間には管理費や修繕積立金などを支払い続けます。
築年数も進みます。
住宅価格上昇への期待だけで保有を続けると、結果的に売却時期を逃すこともあります。
賃貸として十分な収益が得られるのか。
将来自分が再び利用する可能性があるのか。
保有する明確な理由があるかを考えることが重要です。
2戸保有すると資産が不動産に偏る
現在のマンションを賃貸に出し、新たな住宅を購入すると、住宅を2戸保有することになります。
資産額だけを見れば大きくなるかもしれません。
しかし同時に、家計資産の多くが不動産へ集中する可能性があります。
さらに2戸とも住宅ローンが残っていれば、資産だけでなく負債も大きくなります。
不動産価格が下落すれば、2戸とも影響を受ける可能性があります。
管理費や修繕費が同じ時期に増えることもあります。
住宅を複数持つことは、資産形成であると同時にリスクの集中にもなり得るのです。
高齢になるほど管理の負担も考える
若いころには賃貸物件を所有することを負担に感じなくても、年齢を重ねると状況が変わる可能性があります。
入居者への対応。
設備故障。
管理会社との連絡。
確定申告などの税務。
相続への対応。
こうした管理を長期間続ける必要があります。
もちろん管理会社へ多くの業務を委託することはできますが、その分費用が発生します。
老後の資産形成では、資産額だけでなく「管理しやすい資産か」という視点も重要になります。
相続まで考える
マンションを売らずに長期間保有すれば、最終的に相続財産になる可能性があります。
子どもがそのマンションを必要とするとは限りません。
複数の相続人がいれば、不動産をどのように分けるかという問題もあります。
賃貸中のマンションなら、入居者がいる状態で相続する可能性もあります。
「自分が持っていたい」という理由だけではなく、将来誰が管理するのかまで考える必要があります。
半投半住の出口は、売却や賃貸だけでなく相続まで続いているのです。
売るか貸すかに正解はない
売却すれば住宅資産を現金化でき、家計を整理しやすくなります。
賃貸すれば住宅を資産として保有し続け、家賃収入を得られる可能性があります。
どちらが有利かは、住宅の立地、ローン残高、家賃水準、売却価格、税金、家計状況、将来の生活計画などによって変わります。
そのため「値上がりしているから売る」「家賃が入るから貸す」と1つの数字だけで判断するべきではありません。
自分の資産全体のなかで、その住宅を持ち続ける意味を考える必要があります。
結論
住み替えは、新しい住宅を選んだ時点で終わるわけではありません。
それまで住んでいた住宅をどうするかという重要な判断が残っています。
売却する。
賃貸する。
将来自分で再び住む。
それぞれにメリットとリスクがあります。
半投半住で重要なのは、住宅を必ず保有し続けることではありません。
住宅を資産として考えるからこそ、必要なら売却して別の資産や次の住宅へ変えるという判断も必要です。
住宅を持ち続けること自体を目的にするのではなく、その住宅がこれからの人生にどのような役割を果たすのかを考える。
令和の住宅すごろくでは、「どの住宅を買うか」だけでなく、「役割を終えた住宅をどう手放すか」までが住宅戦略になっていくのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年10月2日朝刊 令和の住宅すごろく「半投半住」で選択多様に