会社で古くなった機械や設備を処分した場合、帳簿価額が残っていれば固定資産除却損を計上できることがあります。
実際に使えなくなった設備を廃棄し、帳簿からも外す。
一見すると、それだけで処理は終わったように思えます。
しかし、税務調査を考えると、もう1つ重要な仕事が残っています。
それが、「本当に廃棄したことを証明できる資料を残すこと」です。
資料では、固定資産を廃棄した場合、税務調査で実際に廃棄したのかを問題にされる可能性があると指摘されています。
そのため、廃棄証明書や産業廃棄物管理票など、客観的な証拠を保存しておくことが重要になります。
固定資産の除却は、仕訳をしたところで終わりではありません。
税務調査で数年後に説明できるところまでが、実務上の除却処理と考える必要があります。
固定資産除却損とは何か
機械などの固定資産を廃棄したとき、まだ帳簿価額が残っていることがあります。
例えば、高額な設備を購入して数年間使用したものの、故障や設備更新によって耐用年数の途中で廃棄するケースです。
この場合、資料では、残っている帳簿価額を固定資産除却損として損金算入できると説明されています。
資産そのものがなくなった以上、残っている帳簿価額についても帳簿から外すわけです。
固定資産除却損を計上すれば、その年度の利益が減り、課税所得にも影響します。
だからこそ税務調査では、その除却が本当に行われたのかが重要になります。
帳簿から消しただけでは廃棄の証明にならない
会社が固定資産台帳から機械を削除し、固定資産除却損を計上したとします。
会計帳簿だけを見れば、処理は完了しています。
しかし、その仕訳自体は「会社が除却したと記録した」ということを示しているにすぎません。
本当に機械を廃棄したことまで証明しているわけではありません。
税務調査で確認されるのは、帳簿上の処理だけではなく、その背景にある事実です。
本当に廃棄したのか。
いつ廃棄したのか。
どの資産を廃棄したのか。
こうした事実を説明できるようにしておく必要があります。
なぜ税務調査で廃棄の事実を確認されるのか
固定資産除却損を計上すれば、その分だけ損金が増えます。
そのため、実際には存在している資産を帳簿上だけ除却していないかという点が問題になります。
さらに資料では、もう1つ重要な問題が指摘されています。
それは、実際には廃棄ではなく売却したのではないかという疑いです。
例えば、会社が古い機械を帳簿から除却していたとします。
ところが、その機械を廃棄したことを示す資料が何もありません。
そうすると税務調査では、
まだ会社が保有しているのではないか
別の場所で使用しているのではないか
第三者に売却したのではないか
売却代金を計上していないのではないか
という疑問が生じる可能性があります。
実際に廃棄していたとしても、証拠がなければ後から説明することが難しくなります。
廃棄証明書を保存する
資料で証拠として挙げられているものの1つが廃棄証明書です。
専門業者などへ設備の処分を依頼した場合、その設備を処分したことが確認できる書類を保存しておきます。
重要なのは、除却処理を行った年度だけではありません。
税務調査が行われるのは、その設備を廃棄してから時間が経過した後になることがあります。
その頃には、当時の担当者が異動や退職をしている可能性もあります。
「確かに捨てました」という担当者の記憶だけに頼るのではなく、客観的な書類を残しておくことが重要です。
産業廃棄物管理票も重要な資料になる
資料では、もう1つの証拠として産業廃棄物管理票が挙げられています。
いわゆるマニフェストです。
固定資産を産業廃棄物として処理した場合には、こうした資料が実際に処分したことを説明する材料になります。
固定資産台帳では、その資産が帳簿からなくなったことは分かります。
一方、廃棄証明書や産業廃棄物管理票などがあれば、現物についても処分されたことを説明しやすくなります。
帳簿と証拠資料をセットで保存するという考え方が重要です。
何を廃棄したのか分かるようにしておく
会社が保有する固定資産が1台だけなら、廃棄した資産を特定することはそれほど難しくありません。
しかし、工場などで多数の機械を保有している場合は事情が違います。
似たような機械が何台もあることがあります。
その場合、廃棄関係の資料が残っていても、それが固定資産台帳のどの資産に対応するのか分からなければ、後から確認することが難しくなります。
したがって、除却するときには、固定資産台帳上の資産と廃棄した現物との対応関係を確認しておくことが大切です。
「何かを捨てた」という記録ではなく、「帳簿上のどの固定資産を処分したのか」が分かる状態にしておくということです。
現場と経理の情報共有が重要になる
固定資産の除却漏れが起こりやすい理由の1つは、設備を処分する人と帳簿を管理する人が異なることです。
例えば、工場では現場の判断で古い機械を処分することがあります。
しかし、その情報が経理担当者に伝わらなければ、固定資産台帳には機械が残り続けます。
反対に、経理担当者が決算時に固定資産台帳を見ても、その機械が工場に存在しているかどうかまでは分かりません。
そのため、
設備を処分する
処分したことを経理へ連絡する
廃棄に関する資料を経理へ渡す
固定資産台帳から除却する
という流れを社内で作っておくことが重要です。
設備の入れ替え時は特に確認する
固定資産の除却を確認するよい機会が、設備の入れ替えです。
新しい機械を導入するとき、それまで使用していた古い機械を処分することがあります。
経理では新しい設備の請求書が届くため、新しい固定資産の登録は比較的忘れにくいでしょう。
ところが、古い機械の除却については現場から連絡がなければ分からないことがあります。
その結果、
新しい機械は固定資産台帳に追加された
古い機械も固定資産台帳に残っている
という状態になりかねません。
新規設備を固定資産台帳へ登録するときには、入れ替えによって処分した設備がないかも確認するとよいでしょう。
決算時に固定資産台帳を点検する
固定資産除却損の計上漏れを防ぐには、決算時に固定資産台帳を点検することも重要です。
帳簿に載っている固定資産について、
現在も存在しているか
現在も使用しているか
すでに廃棄していないか
といった点を確認します。
長期間使用している固定資産が多い会社ほど、この確認には意味があります。
固定資産台帳は、減価償却費を計算するためだけの資料ではありません。
会社が実際にどのような資産を保有しているのかを管理する資料でもあります。
帳簿と現物が一致している状態を維持することが基本です。
廃棄時点で証拠を残すことが大切
廃棄の証拠は、税務調査が始まってから集めようとしても難しいことがあります。
数年前に処分した機械について、当時の廃棄業者へ問い合わせる。
当時の担当者を探す。
どの機械だったのか確認する。
こうした作業には時間がかかります。
場合によっては、必要な資料を入手できないこともあります。
だからこそ、設備を廃棄した時点で証拠を保存することが重要です。
除却処理と証拠保存を別々の作業にしないことです。
捨てれば必ず無価値になるとは限らない
固定資産を廃棄するときには、もう1つ注意点があります。
資料では、物理的に設備を廃棄した後でも、スクラップなどに価値が残る場合があることが指摘されています。
廃棄した設備から生じたものに売却価値がある場合、その価値まで無視してよいとは限りません。
資料では、売却が見込まれる価額について「貯蔵品」として計上することが示されています。
つまり、「設備を廃棄したから帳簿価額を全部除却損にして終わり」と単純に考えるのではなく、処分後に価値のあるものが残っていないかも確認する必要があります。
スクラップの計上漏れにも注意する
例えば、大型の機械設備を解体した結果、金属などのスクラップが残ったとします。
そのスクラップを後日売却できるのであれば、会社には経済的な価値が残っています。
資料では、このような場合に売却見込価額を貯蔵品として計上することが説明されています。
これを計上しなければ、税務調査で指摘される可能性があります。
固定資産の除却では、
廃棄した資産の帳簿価額
実際に廃棄したことの証拠
廃棄後に残った価値
まで確認することが重要になります。
実際に捨てなくても除却できるケースもある
固定資産除却には、さらに特殊な取扱いがあります。
機械を解体したり廃棄したりせず、そのままの姿で残しているにもかかわらず、一定の要件のもとで除却処理を行う有姿除却です。
通常の除却では、廃棄証明書などによって「捨てた」という事実を証明できます。
一方、有姿除却では現物そのものが残っています。
そのため、本当に今後使用する可能性がないのかという点がより重要になります。
次の記事では、この有姿除却について詳しく取り上げます。
結論
固定資産を廃棄し、帳簿価額が残っている場合には、固定資産除却損として損金算入できることがあります。
しかし、税務上重要なのは、帳簿に除却損を計上したという事実だけではありません。
本当にその固定資産を廃棄したことを説明できるかどうかです。
資料では、そのための客観的な証拠として廃棄証明書や産業廃棄物管理票が挙げられています。
証拠が残っていなければ、本当に廃棄したのか、実際には売却して代金を計上していないのではないかと疑われる可能性があります。
また、設備を廃棄した後に売却可能なスクラップなどが残る場合には、その価値にも注意が必要です。
固定資産の除却は、
捨てる
帳簿から消す
証拠を残す
残った価値を確認する
というところまで考える必要があります。
税務調査が始まってから証拠を探すのではなく、廃棄したその時点で資料を残す。
これが固定資産除却損を適切に処理するための重要な実務対応です。
参考
企業実務 2026年10月号 減価償却費と節税の疑問と誤解Q&A