近年、多くの企業で「ジョブ型雇用」という言葉を耳にするようになりました。従来の日本型雇用とは異なる人事制度として注目されており、賃金制度にも大きな影響を与えています。
その中で見直しの対象となっているのが、住宅手当や家族手当などの各種手当です。これまで日本企業では生活を支えるための手当が数多く設けられてきましたが、ジョブ型雇用では仕事内容や責任を重視するため、手当の役割も変わりつつあります。
今回は、ジョブ型雇用と手当の関係について解説します。
ジョブ型雇用とは何か
ジョブ型雇用とは、あらかじめ仕事内容や責任範囲を明確に定め、その職務に応じて人材を採用・評価する雇用制度です。
給与も、年齢や勤続年数ではなく、担当する職務の価値や責任の大きさによって決まることが基本となります。
欧米では一般的な制度ですが、日本でもグローバル企業を中心に導入が進みつつあります。
従来の日本型雇用とは考え方が大きく異なるため、賃金制度の見直しも同時に進められています。
メンバーシップ型雇用との違い
従来の日本企業の多くは、メンバーシップ型雇用を採用してきました。
メンバーシップ型では、仕事内容を限定せず、会社の一員としてさまざまな業務を担当します。
転勤や配置転換も前提となっており、勤続年数や経験を重ねながら昇給していく仕組みが一般的でした。
そのため、住宅手当や家族手当、地域手当など、生活環境に応じたさまざまな手当が発達してきました。
参考資料でも、日本では職務や習熟度とは直接関係しない要素を手当として支給することが特徴的な賃金体系であると紹介されています。
ジョブ型では基本給を重視する
ジョブ型雇用では、生活事情よりも職務そのものを評価します。
そのため、住宅手当や家族手当など、個人の生活環境によって支給額が変わる制度は、ジョブ型の考え方とは必ずしも一致しません。
例えば、同じ仕事をしている二人の社員でも、既婚者だけが家族手当を受け取る場合、仕事内容ではなく家庭環境によって給与総額が変わることになります。
ジョブ型では、このような差をできるだけなくし、基本給そのもので職務価値を評価する考え方が重視されます。
その結果、多くの企業では手当を縮小し、その分を基本給へ組み込む動きが見られるようになっています。
手当がなくなるわけではない
ジョブ型雇用になったからといって、すべての手当が廃止されるわけではありません。
例えば、通勤手当は通勤に必要な費用を補うためのものであり、実費補填という性格があります。
また、単身赴任手当や海外赴任手当など、特定の業務を遂行するために必要となる費用を補う手当は、引き続き重要な役割を果たします。
一方で、生活支援を目的とした手当については、基本給への統合や制度の見直しが進む可能性があります。
企業は、どの手当が職務に必要で、どの手当が生活支援なのかを整理しながら制度改革を進めています。
今後の賃金制度はどう変わるのか
今後は、基本給、職務給、成果給の比重が高まり、手当の種類はこれまでより整理される可能性があります。
一方で、人材確保や福利厚生の観点から、住宅支援や育児支援などを福利厚生制度として残す企業も少なくありません。
つまり、「手当をなくす」のではなく、「給与として支給するのか」「福利厚生として支援するのか」という形へ変化していくことが予想されます。
企業ごとに最適な制度設計を模索する動きは、今後さらに広がっていくでしょう。
結論
ジョブ型雇用では、仕事内容や責任を重視するため、生活事情によって支給額が変わる各種手当は見直しの対象となることがあります。
その結果、住宅手当や家族手当などを基本給へ組み込む企業が増え、よりシンプルで分かりやすい賃金制度への移行が進んでいます。
一方で、通勤手当や赴任手当のように業務遂行に必要な費用を補う手当は、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。ジョブ型雇用の普及は、手当をなくすことではなく、手当の目的を見直す契機になっているといえます。
参考
企業実務 2026年8月号
「手当」を手当てするとき