会社の固定資産台帳を確認すると、すでに使っていない機械や設備が何年も残っていることがあります。
工場の機械を入れ替えた。
古いパソコンや事務機器を処分した。
店舗を改装して以前の設備を撤去した。
こうした場合、現物はすでに会社からなくなっているのに、帳簿上では固定資産として残っていることがあります。
固定資産を実際に廃棄した場合には、その時点で残っている帳簿価額を固定資産除却損として損金算入できる場合があります。
ただし、単に会計処理で固定資産を消せばよいわけではありません。
税務調査では、本当にその資産を廃棄したのかが問題になることがあります。
固定資産の除却では、会計処理と同じくらい「本当に処分したことを証明できるか」が重要になります。
固定資産は処分しても自動的に帳簿から消えない
機械や備品などの固定資産を購入すると、会社は固定資産台帳に登録し、耐用年数に応じて減価償却していきます。
しかし、設備を廃棄したからといって、会計帳簿から自動的に固定資産が消えるわけではありません。
会社側で除却の処理を行う必要があります。
この処理を忘れてしまうと、現物は存在しないにもかかわらず、帳簿上では固定資産が残り続けることがあります。
特に固定資産を多数保有している会社では、実際の設備と固定資産台帳が一致しているかを定期的に確認することが重要です。
廃棄した固定資産には帳簿価額が残っていることがある
固定資産を廃棄するとき、その資産の減価償却がすべて終了しているとは限りません。
例えば、高額な機械を購入して数年間使用したものの、故障や設備更新などによって途中で廃棄することがあります。
この場合、取得価額の一部がまだ帳簿価額として残っていることがあります。
資料では、機械などの固定資産を廃棄した場合、残っている帳簿価額を固定資産除却損として損金算入できることが説明されています。
使えなくなった資産を帳簿から外すだけでなく、その時点で残っている帳簿価額を損失として処理するわけです。
固定資産除却損を計上すると利益が減る
固定資産除却損は損失です。
そのため、除却損を計上すれば、その年度の利益を減少させることになります。
例えば、すでに廃棄した機械について帳簿価額が残っていれば、その残額が固定資産除却損として損金になる場合があります。
会社にとっては、もう存在していない資産をいつまでも貸借対照表に残しておくのではなく、実態に合わせて帳簿を整理することになります。
結果として損金が増え、課税所得にも影響します。
ただし、ここで重要なのは、「節税のために除却する」という発想ではありません。
実際に廃棄した固定資産について、適切な会計処理と税務処理を行うということです。
税務調査では本当に捨てたのかが問題になる
固定資産除却損について資料が特に注意を促しているのが、税務調査です。
会社が帳簿上で「この機械は廃棄しました」と処理していたとしても、それだけで実際に廃棄したことが証明できるとは限りません。
税務調査では、
本当にその固定資産を廃棄したのか
実はまだ会社で使用しているのではないか
誰かに売却したのではないか
といった点が問題になる可能性があります。
除却損を計上するのであれば、実際に処分した事実を客観的に説明できるようにしておく必要があります。
廃棄証明書を保存する
資料では、固定資産を廃棄したことを証明する資料として、廃棄証明書が挙げられています。
専門業者などに設備の廃棄を依頼したのであれば、いつ、何を、どのように廃棄したのかを確認できる資料を残しておくことが重要です。
数年後に税務調査が行われた場合、担当者の記憶だけでは説明が難しくなることがあります。
当時の担当者が退職している可能性もあります。
だからこそ、廃棄した時点で客観的な資料を保存しておくことが重要になります。
産業廃棄物管理票も証拠になる
資料では、産業廃棄物管理票も証拠資料として紹介されています。
いわゆるマニフェストです。
設備の廃棄について適切な記録が残っていれば、税務調査で「本当に廃棄したのか」と確認された場合にも説明しやすくなります。
固定資産除却損では、仕訳を切ったことより、実際の廃棄という事実が重要です。
帳簿上の処理と現実の資産の動きを一致させ、その事実を資料で裏付けられる状態にしておくことが大切です。
証拠がなければ売却を疑われる可能性もある
固定資産を帳簿から除却したにもかかわらず、廃棄したことを示す資料が何もなければ、税務調査では疑問を持たれる可能性があります。
本当に捨てたのか。
まだ会社のどこかにあるのではないか。
あるいは、実際には売却して代金を受け取っていたのではないか。
資料では、このように売却代金の計上漏れまで疑われる可能性があることが指摘されています。
会社側としては実際に廃棄しただけでも、その証拠がなければ後から説明することが難しくなります。
税務では、事実だけでなく、その事実を説明できる資料を残すことが重要です。
固定資産台帳と現物を照合する
固定資産除却損の計上漏れを防ぐには、固定資産台帳を定期的に確認することが有効です。
固定資産台帳に載っている機械が実際に存在するのか。
現在も事業で使用しているのか。
すでに廃棄されていないか。
こうした確認を行います。
長年事業を続けている会社ほど、固定資産台帳には多くの資産が蓄積していきます。
設備の更新や事務所移転、店舗改装などを繰り返していると、現物と台帳が一致しなくなることがあります。
決算時に帳簿だけを見るのではなく、現物との照合を行うことが重要です。
設備更新のときは古い資産も確認する
新しい設備を購入するときには、新しい設備の取得価額や耐用年数に意識が向きがちです。
しかし、同時に確認したいのが、それまで使用していた古い設備です。
新しい機械を導入した結果、旧型の機械を廃棄したのであれば、その旧型機械が固定資産台帳に残っていないかを確認します。
店舗を全面改装した場合も同じです。
新しい内装や設備を固定資産として計上する一方で、撤去した古い設備が帳簿上に残っていれば、実態と帳簿が一致しません。
設備投資を行ったときには、新しく取得した資産だけでなく、入れ替えによって不要になった既存資産まで確認する習慣が重要です。
帳簿価額が残っているかを確認する
固定資産を廃棄したことが分かったら、次に帳簿価額を確認します。
すでに減価償却が進んでいる資産では、帳簿価額が小さくなっている場合があります。
一方、取得してからそれほど時間が経過していない設備を廃棄した場合には、大きな帳簿価額が残っていることがあります。
資料では、廃棄時に残っている帳簿価額を固定資産除却損として損金算入できるとされています。
そのため、廃棄したという事実だけでなく、除却時点で帳簿上いくら残っているのかを確認する必要があります。
廃棄した年度に適切に処理する
固定資産の除却は、実際の資産の状態と会計処理を一致させることが基本です。
すでに廃棄した資産を何年も帳簿に残し続け、後になってまとめて整理するという方法では、いつ廃棄したのかを説明することも難しくなります。
廃棄した時点で必要な証拠資料を受け取り、固定資産台帳を更新し、除却処理を行う。
この一連の流れを社内で決めておくことが重要です。
経理担当者だけでは、現場で機械が廃棄されたことを把握できない場合があります。
現場と経理との情報共有も必要になります。
物理的に捨てなくても除却できる場合がある
ここで、固定資産の除却には興味深い取扱いがあります。
通常の除却では、機械などを実際に廃棄します。
しかし、資料では、物理的に解体や廃棄をしていなくても、一定の場合に帳簿上の除却を認める「有姿除却」が紹介されています。
つまり、機械そのものは会社に残っているにもかかわらず、一定の要件を満たせば除却損を計上できる場合があります。
ただし、現物が残っているだけに、通常の廃棄以上に慎重な判断が必要です。
本当に今後使用する可能性がないのか。
本当に事業上の価値を失っているのか。
こうした点が重要になります。
有姿除却については、次の記事で詳しく取り上げます。
結論
固定資産は、購入したときだけ管理すればよいものではありません。
使わなくなったとき、廃棄したときにも適切な処理が必要です。
機械などの固定資産を実際に廃棄し、その時点で帳簿価額が残っていれば、その残額を固定資産除却損として損金算入できる場合があります。
しかし、帳簿上で除却処理を行うだけでは十分ではありません。
税務調査では、本当にその資産を廃棄したのかが確認される可能性があります。
そのため、廃棄証明書や産業廃棄物管理票など、処分した事実を客観的に示せる資料を保存しておくことが重要です。
固定資産台帳に載っている資産は本当に存在するのか。
現在も使っているのか。
すでに廃棄したものが残っていないか。
決算時にはこうした視点から固定資産台帳を確認することも大切です。
減価償却では、新しく購入する資産ばかりに目が向きます。
しかし、使わなくなった資産を適切に帳簿から外すことも、固定資産管理の重要な仕事なのです。
参考
企業実務 2026年10月号 減価償却費と節税の疑問と誤解Q&A