私たちの生活に欠かせない水にも、消費税では興味深い境界線があります。
スーパーやコンビニで購入するミネラルウォーターは飲食料品です。
一方、家庭に供給される水道水は、飲むだけではなく風呂、洗濯、掃除などさまざまな用途に使われるため、現在の軽減税率の対象ではありません。
2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1%への引下げが実施されれば、ミネラルウォーターは1%、水道料金には原則として10%という違いが生じます。
どちらも同じ水なのに、なぜ税率が違うのでしょうか。
ミネラルウォーターは飲食料品
スーパーやコンビニなどで販売されるミネラルウォーターは、飲料として販売される食品です。
そのため、現在の軽減税率8%の対象となります。
予定されている制度が実施されれば、2027年4月から税率は1%になります。
ペットボトル入りの水だけ特別扱いされているわけではありません。
お茶やジュースなどと同様に、人が飲むための商品として販売される飲食料品であることがポイントです。
水道水は飲むためだけに使うものではない
一方、家庭に供給される水道水は現在の軽減税率の対象ではありません。
確かに水道水は飲むことができます。
料理にも使います。
しかし、水道水の用途はそれだけではありません。
風呂、シャワー、洗濯、掃除、トイレなど、生活のさまざまな場面で使われます。
水道事業者は、飲食用とそれ以外の用途を区別して水を供給しているわけではありません。
このため、水道水の供給は現在の軽減税率の対象となる飲食料品の譲渡には該当せず、原則として10%が適用されています。
飲めるかどうかだけでは判断できない
この違いは、消費税の税率を考えるうえで重要なポイントです。
水道水も飲むことができるのだから飲食料品ではないかと思うかもしれません。
しかし、飲むことが可能かどうかだけで税率が決まるわけではありません。
どのようなものとして取引されているのかを見る必要があります。
ミネラルウォーターは飲料という商品として販売されています。
水道水は飲用だけではなく生活用水全体として供給されています。
同じ水でも取引の性質が異なるため、消費税の扱いも異なるわけです。
現在でも8%と10%に分かれている
この違いは2027年から突然生まれるものではありません。
現在もミネラルウォーターなどの飲料水には8%、水道料金には原則として10%が適用されています。
差は2ポイントです。
そのため、日常生活でこの税率差を強く意識する機会はそれほど多くないかもしれません。
ところが飲食料品が1%になれば、差は9ポイントに広がります。
これまで目立たなかった税率の境界線が、より分かりやすくなる可能性があります。
1000円なら税率だけで90円違う
税抜価格1,000円で単純に比較してみます。
税率1%なら税込1,010円です。
税率10%なら税込1,100円です。
差は90円です。
現在の8%と10%なら、1,080円と1,100円なので20円の差です。
飲食料品の税率を1%へ引き下げることで、税率による差は大きくなります。
もちろん、実際の水道料金と市販のミネラルウォーターを単純に価格比較することはできません。
水道には供給設備や料金体系があり、ペットボトル飲料とはサービスの性質が大きく異なるからです。
ここで重要なのは、同じ水でも取引の形によって税率が分かれるという点です。
水道料金そのものがすべて同じ扱いとは限らない
水道料金を考えるときには、消費税とは別の論点にも注意が必要です。
請求書には水道料金と下水道使用料などが一緒に記載される場合があります。
家庭から見るとまとめて水道代と考えがちですが、それぞれのサービスには異なる性質があります。
したがって、請求書を見る際には、単に水という商品を買っているのではなく、給水や下水処理など複数のサービスに料金を支払っているという視点も必要です。
市販の飲料水とは取引そのものが違うのです。
用途によって後から税率が変わるわけではない
もう一つ重要なのは、購入した人が実際に何に使ったかによって税率が変わるわけではないことです。
例えばスーパーで購入したミネラルウォーターを料理に使っても、飲んでも、別の用途に使っても、購入時の税率が後から変わるわけではありません。
反対に、水道水をすべて飲料や料理だけに使用したとしても、それだけを理由に水道料金が飲食料品として1%になるわけではありません。
消費税では、個々の消費者が購入後にどのように使用したかではなく、取引時点で何が提供されたのかを基に判断することが基本になります。
9ポイント差で線引きが注目される
現在の8%と10%では、こうした細かな違いを知らなくても日常生活で困ることは少ないでしょう。
しかし1%と10%になれば事情が変わります。
なぜペットボトルの水は1%なのに水道水は10%なのか。
なぜ似たものなのに9ポイントも違うのか。
消費者がこうした疑問を持つ場面は増える可能性があります。
税率差が大きくなればなるほど、何を飲食料品として扱うのかという制度上の境界線について、分かりやすい説明が求められます。
生活必需品だから1%になるわけではない
ここで押さえておきたいのは、生活に必要不可欠なものだから1%になるという制度ではないことです。
水道は生活に欠かせません。
しかし、生活必需品かどうかだけで税率を決めているわけではありません。
飲食料品という一定のカテゴリーを対象として税率を引き下げるため、そのカテゴリーの外側には生活に不可欠でも10%の商品やサービスが残ります。
これは対象を限定した減税を行う場合に避けにくい問題です。
対象を狭くすれば財政負担を抑えられますが、境界線が生まれます。
対象を広げれば境界線は減らせても、減税による税収減は大きくなります。
消費税減税にはこうした制度設計上の難しさがあります。
結論
同じ水でも、消費税では必ずしも同じ税率になるわけではありません。
スーパーなどで飲料として販売されるミネラルウォーターは飲食料品であり、予定されている制度では2027年4月から1%になります。
一方、水道水は飲用だけでなく風呂、洗濯、掃除など幅広い用途に供給されるため、現在の軽減税率の対象ではなく、原則として10%です。
重要なのは、飲めるかどうかだけではありません。
何がどのような取引として提供されているのかによって消費税の扱いが決まります。
現在は8%と10%の2ポイント差ですが、飲食料品が1%になれば差は9ポイントです。
税率差が大きくなるほど、私たちの身近な商品やサービスのどこに消費税の境界線が引かれているのかが、これまで以上に見えやすくなります。
参考
日本経済新聞 2026年9月20日 朝刊 消費減税、類似品に差
国税庁 消費税の軽減税率制度