1ドル161円台――。
為替市場では約2年ぶりとなる円安水準が話題になっています。テレビや新聞では「円安による物価高」「家計への負担増」といった報道が続いています。
確かに円安は私たちの生活に大きな影響を与えます。しかし人生100年時代を迎えた今、本当に考えるべきことは「円安になるか円高になるか」ではありません。
むしろ重要なのは、「円だけに依存した資産構成になっていないか」という点です。
今回は円安161円時代における資産防衛と国際分散の考え方について考えてみます。
円安は日本人全員に平等ではない
円安になると「日本人全員が損をする」と考える人がいます。
しかし実際にはそうではありません。
例えば海外旅行を予定している人は負担が増えます。
輸入食品やエネルギー価格も上昇します。
一方で海外資産を保有している人は恩恵を受けます。
米国株や海外ETFを持っている人は、株価が変わらなくても円換算の資産額が増えるからです。
同じ日本人でも、
・円しか持たない人
・海外資産を持つ人
で結果は大きく異なります。
円安が進むほど、その差は広がっていきます。
なぜ円だけに頼ることが危険なのか
多くの日本人は、
給与は円
預金も円
年金も円
退職金も円
という構造になっています。
つまり人生そのものが円に集中している状態です。
これは一つの会社の株だけを保有している状態と似ています。
投資の世界では分散投資が常識です。
にもかかわらず、通貨については無意識のうちに「円100%」になっている人が少なくありません。
円高になれば安心ですが、円安が長期間続けば購買力は徐々に低下します。
人生100年時代では老後が30年以上続く可能性があります。
30年間も一つの通貨だけに依存することは決して小さなリスクではありません。
世界に分散するという発想
資産防衛の基本は予想ではなく分散です。
為替相場を当てることは誰にもできません。
プロの為替ディーラーでさえ難しい世界です。
だからこそ必要なのが国際分散です。
例えば、
・全世界株式インデックス
・米国株インデックス
・海外債券
・海外REIT
などです。
世界経済全体の成長を取り込むことで、日本だけに依存しない資産構成を作ることができます。
円高になれば円資産が役立ちます。
円安になれば外貨資産が役立ちます。
どちらにも対応できる状態を作ることが重要です。
GPIFも実践する国際分散
日本の公的年金を運用するGPIFは世界最大級の機関投資家です。
その運用方針を見ると、国内資産だけではありません。
国内株式
外国株式
国内債券
外国債券
に分散されています。
GPIFは将来を予測しているのではありません。
予測できない未来に備えているのです。
これは個人投資家にも参考になる考え方です。
人生100年時代では、資産運用の期間も20年、30年、40年と長くなります。
その期間の為替を当て続けることは不可能です。
だからこそ分散が重要になるのです。
外貨資産は何割持つべきか
よく受ける質問があります。
「外貨資産は何割くらい持つべきですか」
正解はありません。
ただし極端な偏りは避けるべきでしょう。
生活費や緊急予備資金は円で持つ必要があります。
税金や社会保険料も円で支払います。
その一方で、老後資産のすべてを円預金で保有するのもリスクがあります。
一般的には、
・生活資金は円
・長期運用資金は世界分散
という考え方が合理的です。
重要なのは比率よりも「円以外も持っている」という状態です。
最強の国際分散は人的資本である
実は最も強い資産防衛は金融資産ではありません。
人的資本です。
語学力
専門知識
資格
経験
発信力
相談力
これらは為替の影響を受けません。
世界中で価値を生み出せる能力だからです。
税理士、司法書士、医師、エンジニアなどの専門職が長く活躍できる理由もここにあります。
人生100年時代では金融資産の国際分散だけでなく、自分自身への投資も重要になります。
結論
円安161円は単なる為替ニュースではありません。
それは日本人に対して「円だけに依存していて大丈夫ですか」と問いかけているメッセージでもあります。
人生100年時代では、老後が30年以上続く可能性があります。
その長い期間を一つの通貨だけに頼ることは大きなリスクです。
円高か円安かを予想することはできません。
しかし、資産を世界に分散することはできます。
そして知識や経験という人的資本を育てることもできます。
これからの資産防衛で重要なのは、未来を当てることではなく、どんな未来にも対応できる準備をしておくことなのです。
参考
日本経済新聞(2026年6月19日朝刊)
「円、一時161円台 2年ぶり安値 FOMC受けドル一強」