内部監査とは何か 現場から独立した部署が会社の仕事をチェックする理由編

会計
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会社にはさまざまなチェックの仕組みがあります。

製造部門では品質を確認します。

経理部門では会計処理を確認します。

法務部門では契約や法令上の問題を確認します。

それぞれの部署が自分の仕事を適切に管理していれば、それだけで十分なようにも思えます。

しかし、同じ部署の中だけでチェックしていると、その部署では当たり前になっている問題に気づけないことがあります。

昔からこの方法でやっている。

上司も認めている。

今まで問題になったことがない。

こうした考え方が組織内で共有されると、本来はおかしい仕事のやり方でも誰も疑問を持たなくなる可能性があります。

そこで重要になるのが内部監査です。

現場とは異なる立場から会社の仕事を確認し、ルールどおりに業務が行われているか、内部統制が実際に機能しているかを調べます。

内部監査とは何か

内部監査とは、企業内部の独立した立場から、会社の業務や内部統制などが適切に行われているかを確認する活動です。

例えば、

社内規程どおりに業務が行われているか。

必要な承認を得ているか。

不正やミスを防ぐ仕組みが機能しているか。

法令や契約を守っているか。

重大なリスクが放置されていないか。

といった点を調べます。

問題が見つかれば、その原因を分析し、改善を求めます。

内部監査の目的は、社員のミスを探して処分することだけではありません。

会社の仕組みに弱いところがないかを見つけ、重大な問題になる前に改善することにあります。

なぜ現場とは別の部署が確認するのか

例えば、ある工場で顧客の承認を得ないまま部品を変更する仕事のやり方が長年続いていたとします。

担当者も知っています。

上司も知っています。

工場長も知っています。

しかし、

性能には問題がない。

昔からこうしている。

顧客から苦情もない。

という認識が共有されています。

この状態になると、工場内部から問題を指摘することが難しくなります。

そこで、その慣行を共有していない内部監査部門が確認します。

規程ではどうなっているのか。

顧客との契約ではどうなっているのか。

承認記録は残っているのか。

実際の仕事と正式なルールは一致しているのか。

外側の視点から確認することで、現場では普通になっていた問題を発見できる可能性があります。

内部監査と品質保証は何が違うのか

製造業では品質保証部門も製品の品質を確認しています。

では、内部監査とは何が違うのでしょうか。

品質保証部門は、主として製品や製造工程が品質上の要求を満たしているかを確認します。

例えば、

製品が規格を満たしているか。

必要な検査が行われているか。

設計変更や工程変更が適切に管理されているか。

品質問題への対応が適切か。

といった点です。

一方、内部監査は品質だけに限定されません。

会計。

購買。

情報システム。

人事。

法務。

コンプライアンス。

子会社管理。

さまざまな業務を対象にします。

品質保証が品質を守る専門的な管理機能だとすれば、内部監査は会社の管理の仕組みそのものが機能しているかを独立した立場から確認する役割を持つと考えると分かりやすいでしょう。

内部監査は現場の仕事を代わりに管理する部署ではない

内部監査について誤解しやすい点があります。

内部監査部門があるから、現場は細かくチェックしなくてもよいという考え方です。

これは違います。

日常的に品質を管理するのは製造部門や品質保証部門です。

日常的に会計処理を確認するのは経理部門です。

法令への対応を管理するのは法務やコンプライアンス部門などです。

内部監査は、それらの部署が行っている管理が適切に機能しているかを確認します。

つまり、現場の管理を内部監査へ丸投げするものではありません。

内部監査が年に一度確認するから、それまで問題を放置してよいということにはならないのです。

監査役監査とは何が違うのか

会社には監査役が置かれている場合があります。

内部監査と名前が似ていますが、役割は異なります。

監査役は会社法上の機関として、取締役の職務執行などを監査します。

経営者が適切に会社を運営しているかを監視する役割があります。

一方、内部監査部門は企業内部の組織として、具体的な業務や内部統制の状況を確認します。

例えば、海外子会社の購買業務を詳しく調べたり、工場の変更管理が適切に行われているか確認したりします。

監査役と内部監査部門は役割が違いますが、両者が情報を共有することで会社全体の監査機能を強くすることができます。

会計監査とも違う

上場企業などでは、監査法人による会計監査も行われます。

これも内部監査とは異なります。

会計監査では、企業が作成した財務諸表が適正に表示されているかについて、独立した外部の監査人が確認します。

一方、内部監査は企業内部の幅広い業務を対象にできます。

品質管理の仕組み。

情報セキュリティー。

購買手続き。

海外子会社の管理。

コンプライアンス体制。

こうした財務諸表以外の領域も確認します。

会社には異なる目的を持つ複数の監査やチェックが存在し、それぞれが別の角度からリスクを確認しているのです。

内部監査には独立性が必要になる

内部監査で特に重要なのが独立性です。

例えば、工場長の部下が工場長の仕事を監査するとします。

重大な問題を発見しました。

しかし、それを報告すれば工場長の評価が下がるかもしれません。

自分自身の人事評価も工場長が決めています。

このような関係では、厳しい指摘をすることが難しくなります。

そのため内部監査部門は、監査対象となる現場から一定の独立性を持つ必要があります。

事業部門から指示を受けるのではなく、経営トップなどへ直接報告できる体制が重要になります。

監査する相手に人事や予算を完全に握られていれば、本当に必要な指摘ができなくなる可能性があるからです。

経営者へ直接報告する意味

内部監査部門が重大な問題を見つけた場合、それを誰へ報告するかも重要です。

例えば、ある事業部で長年にわたる不適切な品質管理を発見したとします。

その報告を事業部長だけへ提出した場合、事業部内で処理され、本社経営陣まで届かない可能性があります。

そこで、重要な監査結果について経営トップや取締役会などへ報告できる仕組みが必要になります。

通常の業務報告とは別の経路を持つわけです。

現場の管理職が問題を小さく評価したとしても、内部監査から経営陣へ別ルートで情報が届けば、重大な問題が組織内部で止まる可能性を下げられます。

書類を見るだけでは分からない

内部監査というと、会議室で大量の書類を確認する姿を想像するかもしれません。

もちろん書類の確認は重要です。

しかし、書類が整っていることと実際の業務が適切であることは同じではありません。

例えば、マニュアルには顧客承認を得ると書いてあります。

変更申請書の様式もあります。

社内規程も整備されています。

書類だけを見れば問題のない会社に見えます。

しかし現場では、

申請すると時間がかかるから使っていない。

重大な変更だけ申請している。

という可能性があります。

そのため、内部監査では実際の記録を確認したり、現場の社員へ聞き取りをしたり、業務の流れを追跡したりすることが重要になります。

サンプルから実態を調べる

すべての取引や製品を一件ずつ監査することは現実的ではありません。

そこで一定の取引や案件を選び、詳しく確認する方法が使われます。

例えば、1年間に行われた設計変更の中から複数の案件を選びます。

変更申請はあるか。

必要な部署が承認しているか。

顧客承認が必要な案件では承認を得ているか。

実際の製造開始日は承認後になっているか。

こうして一連の流れを確認します。

もし複数の案件で同じ問題が見つかれば、個別のミスではなく仕組みそのものに問題がある可能性が高くなります。

監査で問題を見つけるだけでは足りない

内部監査で重要なのは、問題を指摘して終わらないことです。

例えば、

変更承認が一部で行われていなかった。

という問題を見つけたとします。

現場が、

今後気をつけます。

と回答して終了したのでは、再発する可能性があります。

なぜ承認されなかったのかを調べる必要があります。

手続きが複雑すぎたのか。

承認者が不足していたのか。

納期が短すぎたのか。

社員がルールを理解していなかったのか。

管理職が黙認していたのか。

原因によって必要な改善策は変わります。

改善したかどうかまで確認する

監査で指摘された問題について改善策を決めても、実際に実行されなければ意味がありません。

そこで重要になるのがフォローアップです。

例えば、3カ月後や6カ月後に、

新しい承認制度が導入されたか。

未承認の変更がなくなったか。

社員への教育が実施されたか。

品質保証部門の権限が強化されたか。

などを確認します。

改善しましたという報告書を受け取るだけではなく、実際の業務が変わったかを見る必要があります。

内部監査は問題発見から改善確認まで一連の流れとして考えることが重要です。

内部監査が弱い会社では何が起きるのか

内部監査部門の人数が極端に少ない場合、大規模な企業グループ全体を十分に確認できない可能性があります。

国内外に多数の子会社や工場があるのに、一部の拠点しか監査できない。

品質や会計など重要なリスクについて専門知識を持つ人材が不足している。

監査結果を経営陣へ直接報告できない。

このような状態では、内部監査という制度が存在していても実効性が弱くなります。

特にM&Aによって企業グループが急速に拡大した場合には、事業の成長に合わせて内部監査体制も強化する必要があります。

内部監査は経営者の目と耳になる

大企業の経営者が、すべての現場を直接見ることはできません。

海外工場で何が起きているか。

子会社でルールが守られているか。

本社の方針が実際の現場まで浸透しているか。

経営会議の資料だけでは分からないことがあります。

内部監査は現場へ入り、実際の仕事を確認し、その結果を経営陣へ届けます。

その意味では、内部監査は経営者の目と耳の役割を持っています。

だからこそ、経営者にとって耳の痛い情報であっても、正確に報告できる独立性が必要なのです。

結論

内部監査とは、企業内部の独立した立場から、業務や内部統制が適切に機能しているかを確認する活動です。

品質保証部門が品質を管理し、経理部門が会計を管理していたとしても、それだけですべての問題を発見できるとは限りません。

同じ部署で長期間仕事をしていると、本来は例外だった処理が当たり前になり、誰も疑問を持たなくなることがあります。

そこで内部監査が別の視点から確認します。

正式なルールと実際の仕事は一致しているか。

必要な承認は行われているか。

内部統制は形だけになっていないか。

問題を見つけた後、本当に改善されたか。

こうした点を確認します。

そして重要なのは、内部監査が現場から一定の独立性を持ち、重大な問題を経営陣へ直接伝えられることです。

内部監査とは、社員のミスを探すためだけの部署ではありません。

会社の中で当たり前になってしまった異常を見つけ、経営者から見えなくなっているリスクを表面化させるための重要な仕組みなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック、品質不正850件

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデックの品質不正「業績圧力が原因」 コスト低減、強く要求

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック社長「顧客の信頼失った」 一問一答

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 調査報告書要旨

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