借金を家族が肩代わりすると何が起きるのか 贈与税と返済義務の注意点

人生100年時代
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

子どもが多額の借金を抱えていることを知ったとき、「親として何とかしてあげたい」と考えるのは自然なことでしょう。

そこで親が子どもに代わって借金を返済することがあります。

しかし、ここで注意したいのが税金です。

親が子どもの借金を返しても、「家族のお金だから税金は関係ない」とは限りません。返済した金額やその後の親子間の取り決めによっては、子どもに対する贈与として贈与税の問題が生じる可能性があります。

家族の借金問題では、債権者との関係だけでなく、親子間でそのお金をどのように扱うのかまで考えておく必要があります。

親が子どもの借金を返すとどうなるのか

たとえば、子どもが消費者金融などから500万円を借りているとします。

返済できなくなったため、親が自分の預貯金から500万円を出し、子どもの借金を完済しました。

親としては、

「子どもの借金を代わりに払っただけ」

という感覚かもしれません。

しかし、子どもの立場から見るとどうでしょうか。

本来500万円を返済しなければならなかったところ、親が支払ったことによってその負担から解放されています。

つまり、子どもは親から経済的な利益を受けたことになります。

そのため、親が返済した金額について贈与税の問題が生じる可能性があります。

現金を渡さなくても贈与になることがある

贈与というと、

親が子どもの銀行口座へ100万円を振り込む

親が子どもに現金を渡す

といった場面をイメージしやすいでしょう。

しかし、現金を直接渡す場合だけが問題になるわけではありません。

子どもが負っている債務を親が代わりに弁済し、その金額を子どもに返してもらわないのであれば、実質的には子どもへ経済的利益を与えています。

税務上は、債務の免除や第三者による債務の弁済などによって利益を受けた場合について、贈与により取得したものとみなす規定があります。

そのため、

「子どもの口座には一円も振り込んでいないから贈与ではない」

とは限りません。

お金がどこへ移動したのかだけではなく、誰が経済的利益を受けたのかを見る必要があります。

贈与税には年間110万円の基礎控除がある

暦年課税による贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。

その年に受けた贈与の合計額が基礎控除の範囲内であれば、通常は贈与税はかかりません。

しかし、親が子どもの数百万円の借金を一括して肩代わりすれば、110万円を大きく超える可能性があります。

たとえば親が子どもの500万円の債務を実質的に負担し、それが贈与として扱われる場合には、単純に、

500万円だから非課税

とはなりません。

他の贈与の有無や適用される課税方式なども含めて贈与税を検討する必要があります。

家族の借金を助けるつもりだったのに、後から贈与税の問題まで発生する。

こうした事態は避けたいところです。

返してもらうのであれば貸付という方法がある

一方、親が子どもの借金をいったん肩代わりしたとしても、その金額を後から子どもに返してもらうのであれば話は変わります。

親から子どもへの貸付として処理する方法です。

たとえば親が500万円を立て替え、子どもが親へ毎月5万円ずつ返済するとします。

実態として本当に貸付であり、子どもに返済義務があるのであれば、最初から500万円を無償で与えた贈与とは性質が異なります。

ただし、

「貸したことにしておけば贈与税はかからない」

というほど単純ではありません。

税務では形式だけでなく実態が重要です。

親子間貸付では本当に返済しているかが重要

親子間で貸付を行う場合、特に重要なのが返済実績です。

契約書には、

500万円を貸した

毎月5万円返済する

と書いてある。

ところが実際には一度も返済していない。

親も返済を求めていない。

このような状態であれば、

「最初から返してもらうつもりがなかったのではないか」

と疑われる可能性があります。

形式上は貸付でも、実質的には贈与だったと判断される可能性があるわけです。

親子だからこそ、お金の貸し借りを曖昧にしないことが重要になります。

金銭消費貸借契約書を作成する意味

親子間でまとまった金額を貸す場合は、金銭消費貸借契約書などを作成しておくことが重要です。

一般的には、

貸付金額

貸付日

返済期間

返済方法

返済期日

利息をどうするか

などを明確にします。

重要なのは、契約書を作ること自体が目的ではないということです。

契約内容に沿って実際に返済することが必要です。

銀行振込によって毎月返済するなど、返済記録を客観的に残しておけば、

「本当に貸付だった」

ことを説明しやすくなります。

現金で返済して記録が何も残っていない状態より、資金移動が確認できる方法のほうが分かりやすいでしょう。

利息はどう考えればよいのか

親子間の貸付では、

「利息を取らなければ贈与になるのか」

という疑問も生じます。

家族間の貸付については、金額、期間、返済条件、実態などを含めて判断する必要があります。

極端に不自然な条件を設定したり、実際には返済する意思がなかったりすれば、貸付としての実態を疑われる原因になります。

重要なのは、第三者から見ても、

「これは本当に返済することを前提とした貸付だ」

と説明できる状態にしておくことです。

金額が大きい場合には、契約前に税理士などへ相談することも検討したほうがよいでしょう。

債務超過の場合には例外的な扱いもある

借金の肩代わりと贈与税を考える際には、もう一つ重要な制度があります。

債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難な一定の場合です。

相続税法には、債務の免除などによって利益を受けた場合であっても、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難であるときには、その弁済が困難な部分について贈与とみなさない取り扱いがあります。

したがって、

親が子どもの借金を肩代わりしたら必ず贈与税がかかる

というわけでもありません。

子どもの資産、収入、債務状況などによって判断が変わる可能性があります。

この点は金額も大きくなりやすいため、実際のケースでは専門家への確認が重要です。

借金を肩代わりする前に全体像を確認する

家族の借金問題が発覚すると、

「とにかく今日中に返してしまおう」

と考えてしまうことがあります。

しかし、一つの借金だけを返しても問題が解決するとは限りません。

消費者金融から300万円

カードローン200万円

クレジットカードのリボ払い100万円

知人からの借金100万円

といったように、複数の債務が存在することもあります。

親が一部だけを肩代わりしても、その後に別の借金が発覚すれば同じことの繰り返しです。

まず本人に債務をすべて確認させ、

誰から借りているのか

残高はいくらなのか

金利はいくらなのか

毎月いくら返済しているのか

滞納している債務はあるのか

を整理することが重要です。

親が連帯保証人になっているかも確認する

親自身が保証人や連帯保証人になっているかどうかも重要です。

保証人になっていないのであれば、成人した子どもの借金について親が当然に返済義務を負うわけではありません。

一方、親自身が連帯保証人になっていれば、債権者から直接請求される可能性があります。

つまり、

子どもを助けるため任意に支払う場合

自分自身の保証債務として支払う場合

では法律関係が異なります。

最初に、

「自分に法律上の支払い義務があるのか」

を確認することが大切です。

老後資金から肩代わりする場合は特に慎重に考える

親が60代、70代の場合は、税金だけでなく自分自身の生活も考えなければなりません。

子どもの500万円の借金を退職金から返済した。

数年後、再び300万円の借金が発覚した。

さらに親自身に介護費や住宅修繕費が必要になった。

こうしたことも起こり得ます。

現役時代と違い、老後に失った500万円を再び働いて蓄えることは簡単ではありません。

家族を助けることは大切ですが、

「いくらまでなら援助できるのか」

という上限を考えることも必要です。

親自身の生活が破綻すれば、最終的には家族全体の問題になってしまいます。

肩代わりする前に債務整理も検討する

本人の収入では到底返済できないほど借金が膨らんでいるのであれば、親が全額を肩代わりすることだけが解決策ではありません。

任意整理

個人再生

自己破産

などの債務整理を検討できる場合があります。

親が老後資金をすべて使って借金を完済した後で、本人が再び借金を繰り返してしまえば、親の資産だけが失われる結果になりかねません。

本人の債務問題は、まず本人の問題として解決する方法を考えることが基本です。

結論

親が子どもの借金を肩代わりすることは、単なる家族間の助け合いだけでは終わらない場合があります。

子どもが本来負担すべき債務を親が返済し、その金額を返してもらわないのであれば、子どもが経済的利益を受けたとして贈与税の問題が生じる可能性があります。

一方、本当に貸付として処理するのであれば、金銭消費貸借契約書などで条件を明確にし、契約どおり実際に返済することが重要です。

また、資力を喪失して返済が困難な場合には、税務上の例外的な取り扱いが問題になることもあります。

そして最も大切なのは、税金以前の問題として、

親が本当に肩代わりすべきなのか

を考えることです。

子どもを助けることと、子どもの借金をすべて親が引き受けることは同じではありません。

債務の全体像を確認し、必要なら弁護士や税理士などの専門家にも相談したうえで、本人が自分の債務と向き合える解決方法を考える。

家族だからこそ、お金の問題を曖昧にしないことが大切なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月9日朝刊
「息子の連帯保証、母の苦悩 債務巡る請求訴訟」

相続税法

国税庁 贈与税に関する資料

タイトルとURLをコピーしました