保育園を増やせば子育て世帯は増えるのか 流山市が17園から106園まで増やした理由編

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子育て世帯を呼び込みたい自治体にとって、保育環境の充実は重要な政策です。

特に共働き世帯では、希望する保育所に子どもを預けられるかどうかが、住む場所を決める条件になることがあります。

千葉県流山市では、認可保育所が2010年の17園から2026年9月には106園まで増えました。

約6倍です。

同じ期間に流山市は子育て世帯の流入が進み、2026年の15歳未満人口は5年前より2,788人増えました。

では、保育園を増やせば子育て世帯も増えるのでしょうか。

実際にはそれほど単純ではありません。

流山市では鉄道、住宅、保育、送迎、子育て支援を組み合わせることで、子育て世帯が暮らせる環境をつくってきました。

認可保育所は17園から106園へ増えた

流山市では、2010年に17園だった認可保育所が2026年9月には106園になりました。

16年ほどで89園増えたことになります。

背景にあるのが子育て世帯の増加です。

つくばエクスプレスの開業後、沿線では住宅開発が進みました。

マンションや戸建て住宅が増え、東京都心へ通勤する若い世代が流入しました。

子育て世帯が増えれば、当然ながら保育需要も増えます。

人口増加に合わせて保育施設を増やす必要がありました。

共働き世帯には保育所が生活インフラになる

共働き世帯にとって、保育所は選択できれば便利なサービスというだけではありません。

子どもを預けられなければ、親のどちらかが働き方を変えなければならない場合があります。

勤務時間を短くする。

休職する。

場合によっては退職する。

こうした選択を迫られる可能性があります。

反対に、安心して利用できる保育所があれば、夫婦ともに働き続けやすくなります。

その意味では、保育所は道路や鉄道などと同じように、子育て世帯の生活を支える重要なインフラと考えることができます。

住宅を増やせば保育需要も増える

流山市では、つくばエクスプレス沿線で土地区画整理や住宅開発が進みました。

住宅を増やせば人口を受け入れることができます。

しかしファミリー向け住宅を大量に供給すれば、保育需要も同時に増えます。

住宅だけを先につくり、子育て世帯が入居した後で保育所を整備しようとすると、施設不足が起きる可能性があります。

そこで重要になるのが、住宅政策と保育政策を一緒に考えることです。

流山市では大規模マンションの開発事業者に、保育施設を提供するよう求めてきました。

人口増加によって生じる需要を、街づくりの段階から考えているわけです。

保育所は数だけ増やせばよいわけではない

保育所が100園あったとしても、自宅や駅から非常に遠ければ利用しにくい場合があります。

特に東京都心へ通勤する家庭では、朝の時間が重要です。

自宅から保育所へ行く。

子どもを預ける。

そこから駅へ向かう。

電車に乗って会社へ行く。

保育所の場所によって、この一連の移動時間が大きく変わります。

したがって、保育政策では施設数だけでなく、どこに施設があるのかという立地も重要になります。

駅前送迎保育ステーションが立地の問題を補う

流山市では2007年、千葉県内で初めて駅前送迎保育ステーションを導入しました。

保護者は駅前で子どもを預けます。

そこからバスなどで市内の保育所へ子どもを送ります。

夕方は各保育所から駅前へ戻ってきた子どもを、仕事帰りの保護者が迎えます。

この仕組みがあれば、保育所そのものが駅前になくても利用しやすくなります。

駅から離れた保育所も活用できるため、市全体の保育施設を効率的に使うことにもつながります。

鉄道があるから保育政策の効果も高まる

流山市には、2005年に開業したつくばエクスプレスが通っています。

市内には3駅があり、秋葉原方面へつながっています。

これによって東京都心へ通勤する世帯が流山市に住みやすくなりました。

ここで重要なのは、鉄道と保育を別々に考えないことです。

東京へ通勤しやすい。

駅周辺に住宅がある。

子どもを預けられる。

駅前で送迎サービスを利用できる。

これらが組み合わさることで、共働き世帯の生活が成立します。

保育所だけを増やした場合とは意味が違います。

子どもの増加数は全国最多になった

流山市の2026年の15歳未満人口は3万4,646人です。

5年前より2,788人増えました。

増加率は8.8%で全国10位ですが、増加数では全国最多となりました。

全国では15歳未満人口が5年間で10.9%減っています。

そのなかで流山市では逆に子どもが増えています。

これは流山市だけで出生数が急増したというより、子育て世帯が地域外から流入している影響が大きいと考える必要があります。

保育環境は、そうした世帯が流山市を居住地として選べる条件の一つになっています。

保育所を増やしたから人口が増えたとは限らない

ここで注意したいのが因果関係です。

認可保育所が17園から106園へ増えた。

同じ時期に子育て世帯も増えた。

だから保育所を増やせば人口が増える。

このように単純に結論付けることはできません。

人口が増えたから保育所が必要になった面もあります。

一方、保育環境が整備されたことで、さらに子育て世帯が住みやすくなった面もあるでしょう。

人口増加と保育所増加は、どちらか一方だけが原因というより、互いに影響しながら進んだと考える方が自然です。

子育て支援センターも増やしている

子育て支援は、保育所だけで終わりません。

流山市では2024年度から子育て支援センターを毎年増設し、現在は15カ所あります。

乳幼児を育てている家庭には、保育所以外にもさまざまな需要があります。

育児について相談したい。

親子で外出できる場所が欲しい。

同じ地域の子育て世帯と交流したい。

こうした支援も、長く住み続けられる地域をつくるうえで重要です。

子どもを預かる政策から、家族の生活全体を支える政策へ広げていることが分かります。

保育所を増やし続ければよいわけではない

現在子どもが増えている地域でも、将来同じ状況が続くとは限りません。

日本全体では少子化が進んでいます。

流山市でも、将来は子どもの増加ペースが鈍る可能性があります。

同じ年代の子育て世帯が大量に流入した地域では、時間がたてば子どもたちも成長します。

保育所を利用する年齢の子どもが減る可能性もあります。

そのため現在の需要だけを見て施設を増やし続けるのではなく、将来の人口構成を予測する必要があります。

人口増加後の施設利用まで考える必要がある

保育所には建物があります。

保育士などの人材も必要です。

施設をつくれば長期間運営することになります。

人口増加期には必要でも、将来需要が減少した場合にどう活用するのかという視点も重要です。

子育て支援施設へ転換する。

別の福祉サービスに利用する。

地域の交流拠点として活用する。

人口構成の変化に応じて用途を変えられる施設設計も、これから重要になる可能性があります。

人口増加への対応と、将来の人口減少への備えを同時に考える必要があります。

結論

流山市では認可保育所が2010年の17園から2026年9月には106園まで増えました。

同時に子育て世帯の流入が進み、15歳未満人口は5年間で2,788人増え、増加数では全国最多となりました。

しかし、この数字だけを見て「保育園を増やせば子どもが増える」と考えるのは単純すぎます。

流山市では、つくばエクスプレスによる交通利便性、沿線の住宅開発、保育所の増設、駅前送迎保育ステーション、子育て支援センターなどを組み合わせています。

重要なのは保育所という一つの施設ではありません。

東京へ通勤できる。

住む住宅がある。

子どもを預けられる。

送り迎えの負担を抑えられる。

子育てについて相談できる。

こうした条件が一つの生活としてつながることで、子育て世帯が暮らしやすい地域になります。

保育政策は単なる福祉政策ではありません。

住宅や交通と組み合わせれば、子育て世帯から選ばれる地域をつくる人口戦略の一部にもなるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 中央区、子ども増に対応 晴海の小学校、新校舎急ぐ

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