人生100年時代の持ち家は本当に資産なのか リースバック活用編

FP
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老後資金の確保や相続対策の方法として、「リースバック」という言葉を耳にする機会が増えています。

リースバックとは、自宅を売却した後も賃貸住宅としてそのまま住み続ける仕組みです。まとまった資金を確保しながら住み慣れた家に住み続けられるため、高齢者を中心に利用が広がっています。

一方で、契約内容を十分に理解しないまま利用した結果、「家賃が高くなった」「更新できず退去を求められた」などのトラブルも増えています。

2026年6月、日本経済新聞は国土交通省がリースバック契約に関する新たなガイドラインを策定する方針を報じました。背景には利用者保護の必要性があります。

今回は、リースバックとは何か、そのメリットと注意点、そして人生100年時代における住宅資産の考え方について考えてみます。

リースバックの仕組み

リースバックは、自宅を不動産会社などへ売却し、その後は賃貸借契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。

通常の不動産売却では、売却後に住み替えが必要になります。しかしリースバックでは、所有権だけを手放し、居住は継続できます。

例えば、

・退職後の生活資金を確保したい
・住宅ローンを完済したい
・相続前に不動産を整理したい
・子どもに不動産管理の負担を残したくない

といった場合に活用されることがあります。

特に高齢化が進む中で、自宅に多くの資産が眠っている一方、現金が不足する「資産はあるが現金がない」という状況への対応策として注目されています。

なぜトラブルが増えているのか

リースバックは「売買契約」と「賃貸借契約」が一体となった複雑な取引です。

利用者の多くは、

「家を売ってもずっと住み続けられる」

と考えがちですが、実際には契約内容によって大きく異なります。

国民生活センターへの相談件数は増加しており、2025年度には214件となりました。5年前と比較すると5倍以上に増えています。

主なトラブルとして、

・売却価格が想定より低かった
・家賃負担が重くなった
・契約更新を断られた
・退去を求められた
・買戻し条件が厳しかった

などがあります。

特に高齢者の場合、契約内容を十分理解しないまま契約してしまうケースも少なくありません。

定期借家契約という落とし穴

リースバックで最も注意したいポイントの一つが「定期借家契約」です。

一般的な賃貸住宅では普通借家契約が多く、借主の保護が比較的強くなっています。

一方、定期借家契約では契約期間満了後に貸主が更新を拒否することが可能です。

つまり、

「この家にずっと住めると思っていた」

にもかかわらず、

「契約期間が終わったので退去してください」

という事態が起こり得ます。

高齢者にとって住み慣れた自宅からの退去は大きな負担になります。

今回の国土交通省のガイドラインでは、このような契約形態について利用者へ明確に説明することが求められる見込みです。

国土交通省が問題視した事実不告知

今回の見直しの中心となるのが「事実不告知」の問題です。

宅地建物取引業法では、不動産売買において重要な事実を故意に伝えない行為を禁止しています。

しかしリースバックでは、不動産会社自身が貸主となるケースも多く、賃貸借契約部分については十分な規制が及ばない場合がありました。

そのため国土交通省は、

・契約解除条件
・賃料の設定方法
・契約更新の可否
・原状回復義務
・定期借家かどうか

などについて利用者へ適切に説明するルールづくりを進めています。

これは利用者保護の観点から大きな前進といえるでしょう。

リバースモーゲージとの違い

リースバックとよく比較される制度にリバースモーゲージがあります。

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から融資を受ける仕組みです。

所有権は本人に残りますが、将来的には売却や相続財産から返済することになります。

一方、リースバックは売却によって所有権を完全に手放します。

比較すると次のようになります。

リースバック
・所有権は失う
・現金を一括で受け取る
・家賃支払いが必要
・住み続けられるが契約条件次第

リバースモーゲージ
・所有権は維持
・融資として資金を受け取る
・利息負担がある
・対象物件に制限がある

どちらが有利かは家計状況や家族構成によって異なります。

人生100年時代の住宅資産

人生100年時代になると、自宅の位置づけも変わってきます。

かつては、

「持ち家は子どもへ残すもの」

という考え方が一般的でした。

しかし少子高齢化が進み、相続人自身も高齢化する中で、

「不動産を残すことが本当に家族のためになるのか」

という視点が重要になっています。

空き家問題が深刻化する現在では、相続した家の管理や処分に悩むケースも増えています。

そのため、

・住むための資産
・老後資金を生み出す資産
・相続対策の資産

という複数の視点から住宅を考える必要があります。

リースバックは、その選択肢の一つとして位置付けられる制度です。

結論

リースバックは、自宅に住み続けながら資金を確保できる魅力的な仕組みです。

しかし、売買契約と賃貸借契約が組み合わさった複雑な取引であり、契約内容を十分理解しないまま利用すると大きなトラブルにつながる可能性があります。

国土交通省がガイドライン策定に乗り出した背景には、利用者保護の必要性があります。今後は契約条件の説明義務が強化されることで、より安心して利用できる環境整備が進むことが期待されます。

人生100年時代において、自宅は単なる住まいではなく重要な資産です。持ち続けるのか、売却するのか、活用するのか。それぞれの選択肢の特徴を理解したうえで、自分や家族にとって最適な活用方法を考えることが求められています。

参考

日本経済新聞 2026年6月4日朝刊
「国交省、住宅リースバック契約に指針 解約や更新可否を告知」

国民生活センター
リースバックに関する消費生活相談の状況

国土交通省
住宅のリースバックに関する研究会資料

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