事業所税には、事業所の床面積を基準として課税する資産割と、従業者の給与総額を基準として課税する従業者割があります。
このうち資産割は、企業がどれだけ広い事務所や店舗、工場などを使用して事業を行っているかに着目した税金です。
税率は、事業所床面積1平方メートルにつき600円です。
法人税のように企業の利益を基準とする税金ではないため、利益が多いか少ないかにかかわらず、一定規模以上の事業所を使用していれば負担が生じます。
さらに、建物を自社で所有している場合だけではなく、賃貸オフィスや賃貸店舗を利用している場合でも課税対象となる可能性があります。
資産割は、建物の所有ではなく、そこで事業を行っていることに着目した税金だからです。
事業所床面積とは何か
資産割の課税標準となるのが事業所床面積です。
事業所床面積とは、事務所、店舗、工場、倉庫など、事業のために使用している事業所等の床面積をいいます。
例えば、企業が大きな本社ビルで事業を行っていれば、その事業に使用している床面積が資産割の計算に関係します。
店舗を展開する小売業であれば店舗の床面積、製造業であれば工場などの床面積が関係します。
ただし、建物のすべての面積が必ずそのまま課税対象になるわけではありません。
事業所税には非課税となる施設や課税標準の特例が設けられているため、それらに該当する部分については別途調整する必要があります。
また、テナントビルでは廊下や階段、エレベーターなどの共用部分についても、一定の方法で各事業者に対応する床面積を計算することがあります。
単純に賃貸借契約書に記載された専有面積だけを確認すればよいとは限りません。
資産割の税率は1平方メートル600円
資産割の税率は、事業所床面積1平方メートルにつき600円です。
例えば、課税標準となる事業所床面積が2000平方メートルであれば、単純計算では次のようになります。
2000平方メートルに600円を掛けるため、資産割は120万円です。
5000平方メートルであれば300万円となります。
1万平方メートルの大規模な事業所であれば600万円です。
床面積が大きくなるほど、基本的には税負担も比例して増えていきます。
そのため、大規模な本社、工場、物流施設、店舗などを持つ企業では、事業所税が一定の固定的な税負担となることがあります。
1000平方メートルの免税点がある
もっとも、すべての事業者に資産割が課税されるわけではありません。
資産割には1000平方メートルという免税点があります。
同じ課税団体の区域内にある事業所等の床面積の合計が1000平方メートル以下であれば、原則として資産割は課税されません。
重要なのは、1000平方メートルが控除額ではないことです。
例えば、事業所床面積が1200平方メートルだった場合、1200平方メートルから1000平方メートルを差し引いた200平方メートルだけに課税するわけではありません。
免税点を超えて納税義務が生じれば、原則として課税対象となる1200平方メートル全体を基準として資産割を計算します。
したがって、免税点付近の企業では、事業所の増床や新しい営業所の開設によって税負担が大きく変わる可能性があります。
賃貸オフィスでも資産割は課税される
資産割という名称から、固定資産税のように建物の所有者へ課税される税金と思われるかもしれません。
しかし、事業所税の資産割は建物を所有しているかどうかだけで決まる税金ではありません。
事業所等で事業を行っている者に課税されます。
そのため、自社ビルだけではなく、賃貸オフィスや賃貸店舗で事業を行っている企業も課税対象になる可能性があります。
例えば、企業がビルの一部を借りて大規模なオフィスを構えている場合、その企業自身が建物を所有していなくても、事業所税の納税義務を判定する必要があります。
一方、ビルを所有しているだけで、そこを他の企業へ貸している場合には、事業所税の考え方は固定資産税とは異なります。
誰が建物を所有しているかではなく、誰がその場所で事業を行っているかが重要になるのです。
賃貸オフィスでは共用部分にも注意が必要
テナントビルを利用している場合には、共用部分の扱いにも注意が必要です。
オフィスビルには、各企業が専用で使用する部分だけでなく、廊下、階段、エレベーターホールなど、複数のテナントが共同で使用する部分があります。
事業所税では、こうした共同使用部分について、一定の方法により各テナントに対応する床面積を計算する場合があります。
そのため、賃貸借契約上の専有面積が1000平方メートル未満だから、必ず資産割の免税点以下になるとは限りません。
共用部分を含めた事業所税上の床面積を確認した結果、1000平方メートルを超えるケースも考えられます。
特に免税点に近い面積のオフィスを借りている企業では注意が必要です。
複数の事業所があれば合計する
同じ課税団体の区域内に複数の事業所がある場合には、それぞれの事業所床面積を合計して免税点を判定します。
例えば、同じ市内に700平方メートルの本社と500平方メートルの営業所があるとします。
それぞれ単独では1000平方メートル以下です。
しかし、合計すると1200平方メートルになります。
したがって、原則として資産割の免税点を超えることになります。
全国に店舗や営業所を展開している企業では、一店舗ごとではなく、課税団体ごとに事業所床面積を集計する必要があります。
事業所の所在地を基準として管理することが重要になります。
事業所を新設した場合は月数で調整する
資産割は、事業年度の途中で事業所を新設した場合にも対応する仕組みがあります。
例えば、12カ月の事業年度の途中で新しい営業所を開設した場合、その営業所を最初から12カ月使用していたものとして税額を計算するわけではありません。
事業所を使用していた期間に応じて、床面積を月数で調整して課税標準を計算します。
これにより、事業年度の終盤に開設した事業所と、事業年度の最初から使用していた事業所の税負担が同じにならないようになっています。
新店舗や営業所を頻繁に開設する企業では、単に期末時点の床面積を集計するだけではなく、それぞれの事業所をいつ新設したのかという情報も重要になります。
事業所を廃止した場合も月数が関係する
反対に、事業年度の途中で事業所を廃止した場合についても、事業所を使用していた期間を踏まえて計算します。
例えば、事業年度の途中で店舗を閉鎖した場合、その店舗について事業年度末には存在していないから税金がまったく発生しない、という単純な仕組みではありません。
その事業年度中に一定期間その場所で事業を行っていた以上、その期間に対応した資産割を計算する必要があります。
このため、企業の税務担当者は、新設だけでなく移転、統合、廃止などについても正確な日付を管理する必要があります。
事業所の再編が多い企業ほど、資産割の計算は複雑になります。
オフィス移転でも事業所税が変わる
資産割は床面積に比例するため、オフィス移転も税負担に影響します。
例えば、事業拡大によって800平方メートルのオフィスから1500平方メートルのオフィスへ移転すれば、免税点を超えて新たに資産割が発生する可能性があります。
逆に、大規模なオフィスを縮小した結果、課税団体内の事業所床面積が1000平方メートル以下になれば、資産割が免税となる可能性があります。
近年はテレワークの普及などによってオフィス面積を縮小する企業もあります。
オフィス戦略の変更は、賃料だけではなく事業所税にも影響することになります。
利益が減っても床面積が同じなら負担は残る
資産割のもう一つの特徴は、企業の利益と直接連動しないことです。
法人税であれば、基本的には課税所得が減れば税負担も減少します。
しかし、資産割は事業所床面積を基準として計算します。
業績が悪化して赤字になったとしても、大規模な事業所を引き続き使用していれば資産割が発生する可能性があります。
企業にとっては、賃料や光熱費などと同様、事業所を維持することで発生する固定的な負担としての性格があります。
事業所の広さを決める際には、賃料だけでなく事業所税も含めたコストを考える必要があるのです。
結論
事業所税の資産割は、事業所の床面積を基準として課税される地方税です。
税率は事業所床面積1平方メートルにつき600円で、原則として課税団体内の事業所床面積が1000平方メートルを超えると納税義務が生じます。
重要なのは、建物を所有しているかどうかではありません。
賃貸オフィスや賃貸店舗であっても、そこで事業を行っていれば資産割の対象となる可能性があります。
また、同じ課税団体内に複数の事業所があれば床面積を合計して免税点を判定し、事業年度の途中で事業所を新設または廃止した場合には使用期間に応じた調整も必要になります。
資産割は企業利益ではなく事業所の規模に着目した税金です。
そのため、オフィスの増床、店舗の新設、工場の拡張、事業所の統廃合といった企業活動が、そのまま税負担の変化につながることになります。
参考
税のしるべ 2026年8月10日 事業所税の課税団体が減少、人口減で30万人以上の要件を満たせず