事業所税は、課税団体となっている都市に事務所や店舗、工場などを置いていれば、すべての事業者に課税されるわけではありません。
一定規模以下の事業者については税負担を求めない免税点が設けられています。
重要なのは、この免税点が所得税などの基礎控除とはまったく異なる仕組みになっていることです。
資産割では事業所床面積1000平方メートル以下、従業者割では従業者数100人以下が免税点となります。
そして、この基準を超えると、超えた部分だけではなく、原則として課税対象となる床面積や従業者給与総額全体を基準として税額を計算します。
事業所税を理解するうえで、非常に重要なポイントです。
資産割には1000平方メートルの免税点がある
事業所税には、事業所の広さを基準として課税する資産割があります。
資産割の免税点は、事業所床面積1000平方メートル以下です。
したがって、課税団体となっている都市に事業所があっても、その市内にある事業所の床面積の合計が1000平方メートル以下であれば、原則として資産割は課税されません。
例えば、ある企業が市内に800平方メートルの事務所を持っているとします。
この場合、1000平方メートル以下ですから、原則として資産割は発生しません。
一方、床面積が1100平方メートルになれば免税点を超えるため、資産割の課税対象になります。
資産割の税率は、事業所床面積1平方メートルにつき600円です。
事業所の規模が大きくなるほど税負担も大きくなる仕組みです。
従業者割には100人の免税点がある
もう一つの従業者割については、従業者数100人以下が免税点となります。
従業者割は、従業者に支払った給与総額を基準として課税する仕組みです。
税率は従業者給与総額の0.25%です。
ただし、従業者数が100人以下であれば、原則として従業者割は課税されません。
例えば、従業者が90人であれば、給与総額が相当大きくても、従業者割については免税点以下となります。
一方、従業者数が110人になれば免税点を超えるため、従業者割の課税対象になります。
つまり、給与総額だけを見ればよいわけではなく、まず従業者数によって納税義務があるかどうかを判定する必要があります。
免税点は基礎控除ではない
事業所税で特に間違えやすいのが、免税点を基礎控除のように考えてしまうことです。
例えば所得税では、所得から一定額を差し引いたうえで課税所得を計算する基礎控除があります。
事業所税の免税点は、このような控除とは違います。
資産割の場合、1000平方メートルを超えた部分だけに税率600円を掛けるわけではありません。
例えば、課税対象となる事業所床面積が1200平方メートルだったとします。
1000平方メートルを差し引いた200平方メートルだけが課税されるのであれば、税額は12万円となります。
しかし、そのような計算ではありません。
免税点を超えて納税義務が生じれば、原則として1200平方メートル全体を課税標準として計算するため、税額は72万円となります。
免税点は税額を計算するための控除額ではなく、そもそも納税義務が生じるかどうかを判定するための基準なのです。
1000平方メートルを少し超えただけでも影響は大きい
この仕組みのため、免税点の前後では税負担が大きく変わることがあります。
例えば、事業所床面積が990平方メートルであれば、原則として資産割は発生しません。
ところが、事業所を拡張して1010平方メートルになれば、免税点を超えます。
単純に20平方メートル増えただけだから、20平方メートル分の税金が増えるというわけではありません。
原則として課税対象となる1010平方メートル全体について資産割を計算することになります。
従業者割についても基本的な考え方は同じです。
100人以下であれば免税点以下ですが、100人を超えて納税義務が生じれば、原則として課税対象となる従業者給与総額全体を基準として税額を計算します。
このため、事業所の拡張や従業者の増加を予定している企業にとって、免税点は重要な税務管理項目になります。
複数の事業所がある場合は合計して判定する
もう一つ重要なのが、同じ課税団体の区域内に複数の事業所がある場合です。
免税点は、一つ一つの店舗や事務所ごとに独立して判定するものではありません。
原則として、その課税団体の区域内にある事業所を合計して判定します。
例えば、同じ市内に600平方メートルの本社と500平方メートルの営業所があるとします。
それぞれを見ると1000平方メートル以下です。
しかし、市内の事業所床面積を合計すると1100平方メートルになります。
そのため、資産割の免税点を超えることになります。
従業者数についても同様です。
本社に60人、営業所に50人が勤務していれば、それぞれ単独では100人以下ですが、合計では110人になります。
したがって、従業者割についても免税点を超える可能性があります。
市をまたいで事業所がある場合はどうなるのか
一方、事業所税は課税団体ごとに課税される地方税です。
そのため、異なる課税団体にある事業所を全国で一括して合計するわけではありません。
例えば、A市に800平方メートル、B市に700平方メートルの事業所を持っている企業があったとします。
全国合計では1500平方メートルですが、原則として免税点の判定はそれぞれの課税団体ごとに行います。
したがって、A市とB市の床面積を単純に合計して1500平方メートルだから課税される、という考え方にはなりません。
全国に多数の営業所や店舗を持つ企業では、どの課税団体にどれだけの床面積と従業者が存在するのかを把握する必要があります。
資産割と従業者割は別々に判定する
資産割と従業者割の免税点は、それぞれ別々に判定します。
例えば、事業所床面積が1500平方メートルで、従業者数が80人だったとします。
資産割については1000平方メートルを超えているため、納税義務が生じます。
一方、従業者割については100人以下なので、原則として免税点以下です。
したがって、資産割だけが課税され、従業者割は課税されないというケースがあります。
逆に、床面積が800平方メートルでも従業者が120人いれば、資産割は免税点以下ですが、従業者割については課税対象となります。
事業所税という一つの税金であっても、二つの課税方式について別々に納税義務を判定する必要があります。
事業拡大によって突然税負担が生じることがある
企業にとって注意したいのは、事業規模の拡大によって免税点を超えるケースです。
オフィスを増床する、新しい営業所を開設する、従業員を増やすといった通常の事業活動によって、ある時点から事業所税の納税義務が生じる可能性があります。
特に免税点付近にある企業では、事業所の増床や人員増加が税負担に与える影響を事前に確認しておく必要があります。
また、単純な人数だけではなく、事業所税上どの従業者を人数に含めるのか、どの床面積が課税対象になるのかについても確認が必要です。
事業所税は法人税ほど目立つ税金ではありませんが、事業規模が一定ラインを超えた瞬間に税負担が発生するという特徴があります。
結論
事業所税には、小規模な事業者への負担を避けるため免税点が設けられています。
資産割は事業所床面積1000平方メートル以下、従業者割は従業者数100人以下であれば、原則として課税されません。
ただし、この1000平方メートルと100人は基礎控除ではありません。
免税点を超えた部分だけに課税されるのではなく、免税点を超えて納税義務が生じれば、原則として課税対象となる床面積や従業者給与総額全体を基準として税額を計算します。
さらに、同じ課税団体の区域内に複数の事業所がある場合には、それぞれの床面積や従業者数を合計して免税点を判定することになります。
事業所の増床や新規出店、人員増加を進める企業にとって、1000平方メートルと100人は単なる数字ではありません。
事業所税の納税義務が発生する境界線として、継続的に管理しておく必要があります。
参考
税のしるべ 2026年8月10日 事業所税の課税団体が減少、人口減で30万人以上の要件を満たせず