売上が予算を下回ったとき、「営業は何をしていたのか」と担当者の責任を追及したくなることがあります。
売上を担当しているのは営業部門なのだから、売上未達も営業部門の責任だという考え方です。
しかし、予算未達にはさまざまな原因があります。
営業担当者の訪問回数が減っていたことが原因かもしれません。
一方で、原料価格の高騰や天候不順など、自分たちでは直接変えられない要因が影響している場合もあります。
参考記事では、予実管理で重要なのは差異の原因を掘り下げ、自分たちの手で動かせる要因について具体的なアクションを決めることだと説明されています。
予算未達について考えるときも、「誰が悪いのか」から始めるのではなく、「なぜ未達になったのか」「何を変えられるのか」と考えることが重要です。
予算未達と責任
予算未達とは、設定した予算に対して実績が届かなかった状態です。
たとえば、月間売上予算1000万円に対して実績が960万円だったとします。
40万円の未達です。
この数字だけを見れば、営業部門が40万円不足させたように見えるかもしれません。
しかし、40万円という差だけでは原因は分かりません。
参考記事では、売上40万円の未達について原因を掘り下げています。
最初に分かったのは、主力製品の販売数量が減っていたことです。
さらに調べると、主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分になっていました。
ここまで掘り下げることで、初めて改善できる具体的な原因が見えてきます。
予算未達という結果だけで責任を判断するのではなく、その数字が生まれた原因を見る必要があるのです。
本人が管理できる要因
予算未達の原因の中には、営業担当者や営業部門の行動によって変えられるものがあります。
参考記事の例であれば、主要得意先への訪問回数です。
訪問回数が半分になったことで販売数量が減少し、それが売上未達につながっているのであれば、営業活動を見直す余地があります。
そこで参考記事では、上位10社への訪問を月2回に戻すという具体的なアクションを設定しています。
さらに、営業部長が担当し、今月中に訪問予定を組み直すというところまで決めています。
このように、自分たちで動かせる原因であれば、責任の所在を考えるだけでなく、次の行動を決めることができます。
予実管理で重要なのは、この改善可能な部分を見つけることです。
忙しかったという説明で終わらせない
参考記事の事例では、主要得意先への訪問回数が減った理由は繁忙でした。
「忙しかったから訪問できませんでした」
これも一つの原因です。
しかし、ここで分析を止めてしまえば改善策は見つかりません。
忙しいのであれば、なぜ忙しくなったのかを考える必要があります。
参考記事ではそこから先の原因までは示されていないため、具体的な事情を推測することはできません。
重要なのは、原因を説明すること自体を目的にしないことです。
訪問回数を戻すためには何を変える必要があるのかを考え、具体的なアクションにつなげます。
原因分析は言い訳を作るためではなく、行動を変えられる場所を見つけるために行うものなのです。
外部環境や会社側の要因
予算未達の原因が、すべて営業担当者の行動にあるとは限りません。
参考記事では、自分たちで管理できない要因の例として、原料の高騰や天候不順を挙げています。
たとえば、天候不順によって商品の需要が落ちたとしても、営業担当者が天候そのものを変えることはできません。
原料価格が高騰した場合も、担当者が市場価格そのものを自由に下げられるわけではありません。
こうした原因まで担当者個人の責任としてしまうと、本来考えるべき問題が見えなくなります。
重要なのは、その人が実際に動かせる要因なのかどうかを区別することです。
管理できない原因にも対応の余地はある
ただし、外部要因だから何も考えなくてよいということではありません。
参考記事でも、管理できない要因について対応の余地は残されているとしています。
重要なのは、原因そのものと、それに対する自社の対応を分けて考えることです。
天候そのものは変えられません。
原料価格の高騰そのものも、自社だけでは変えられないことがあります。
しかし、そうした外部環境を踏まえて何らかの対応を検討できる場合はあります。
参考記事では、管理できない要因について会議で嘆くことに時間を使うのではなく、来期予算の前提を見直す材料として記録しておけばよいという考え方も示されています。
自分たちで変えられない原因と、変えられる行動を切り分けることが重要です。
責任追及と原因分析は違う
予算未達が発生したとき、
誰が悪かったのか
と考えることと、
なぜ未達になったのか
と考えることは似ているようで違います。
責任追及から始めると、担当者は自分に責任がないことを説明しようとするかもしれません。
一方、原因分析の目的は、数字が悪化した理由を理解し、次に何を変えるのかを見つけることです。
参考記事では、差異を掘り下げて原因までたどり着いても、翌月の行動が変わらなければ未来の数字も変わらないと説明されています。
つまり、原因を特定する最終的な目的は、誰かを責めることではありません。
次の行動を変えることです。
営業担当者だけを責めると問題が隠れる
売上は営業部門が作る数字だから、未達なら営業担当者を叱る。
このような管理は分かりやすいかもしれません。
しかし、それだけでは本当の原因を見落とす可能性があります。
参考記事の範囲で考えても、売上未達という一つの結果から、販売数量、さらに訪問回数というように原因を掘り下げています。
つまり、表面に現れた数字だけでは改善すべき場所は分かりません。
「売上が足りないからもっと売ってこい」と要求するだけでは、具体的に何を変えるのかも不明確です。
それよりも、
どの数字が悪化したのか
なぜ悪化したのか
その原因は自分たちで動かせるのか
何を変えればよいのか
と順番に考える方が、具体的な改善につながります。
頑張りますで責任を取ったことにはならない
予算未達の会議で、担当者が「来月は頑張ります」と答えることがあります。
一見すると、担当者が責任を認めて前向きに行動しようとしているように見えます。
しかし、参考記事では「頑張ります」はアクションではないとしています。
「意識する」「徹底する」といった言葉についても同じです。
何をするのかが決まっていないからです。
本当に必要なのは、精神論ではありません。
参考記事の例であれば、
上位10社への訪問を月2回に戻す
営業部長が担当する
今月中に訪問予定を組み直す
という具体的な行動に変えています。
責任を明確にするとは、「もっと頑張ります」と言わせることではありません。
改善行動の担当者を明確にすることなのです。
翌月に確認するのは責任ではなく行動と結果
具体的なアクションを決めたら、翌月に検証します。
参考記事では、翌月の予実会議は数字を見る前に、先月決めたアクションを検証するところから始めるとしています。
訪問回数は本当に戻ったのか。
販売数量は回復したのか。
アクションが効いているのであれば続けます。
効いていないのであれば、別の手を打ちます。
ここでも目的は、担当者を叱ることではありません。
行動によって数字が変わったのかを確認することです。
行動しても結果が変わらなければ、最初に考えた原因が違っていた可能性もあります。
もう一度原因を考え、新しいアクションを決めます。
この繰り返しによって予実管理が改善の仕組みになります。
結論
予算未達が発生したとき、営業担当者だけを責めても業績が改善するとは限りません。
重要なのは、未達という結果から原因を掘り下げることです。
参考記事の例では、売上未達から販売数量の減少、さらに主要得意先への訪問回数の減少まで原因を掘り下げています。
訪問回数のように自分たちで変えられる原因であれば、具体的な改善行動を決めることができます。
一方、原料の高騰や天候不順など、自分たちでは直接変えられない原因もあります。
その違いを無視して、すべてを担当者の努力不足として扱ってはいけません。
予実管理の目的は、誰が悪かったのかを決めることではなく、未来の数字を変えることです。
原因を分析する。
自分たちで動かせる部分を見つける。
何を、誰が、いつまでに行うのかを決める。
翌月にその行動と結果を確認する。
責任追及ではなく改善につながるところまで原因を掘り下げることが、予算未達を経営改善に生かすために重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで