保険料は何を基準に決まるのか
生命保険へ加入するとき、多くの人は保険料の金額を比較します。
しかし、その保険料がどのように計算されているのかを知る機会はあまりありません。
前回は「標準責任準備金制度」を取り上げましたが、その責任準備金や保険料を計算する際には、いくつかの重要な前提条件があります。
その一つが「予定死亡率」です。
予定死亡率は、生命保険会社が将来どれくらい保険金を支払うことになるかを予測するための基礎となる数字です。
今回は、生命保険の保険料を決める重要な要素である予定死亡率について解説します。
予定死亡率とは将来の死亡率を見込んだ数値
予定死亡率とは、生命保険会社が保険料を計算する際に用いる「将来どのくらいの割合で被保険者が亡くなるか」を見込んだ数値です。
もちろん、個人の寿命を予測することはできません。
そこで生命保険会社は、年齢や性別などごとの統計データをもとに、多数の契約者全体としてどの程度の死亡率になるかを予測します。
この予測値を使って、将来支払う保険金の総額を見積もり、保険料を算出しています。
つまり、予定死亡率は生命保険の価格設定の基礎となる重要な数字なのです。
死亡率が高いほど保険料は高くなる
予定死亡率は保険料に直接影響します。
例えば、高齢になるほど死亡する可能性は高くなります。
そのため、同じ保障額であれば若い人より高齢者の保険料が高くなるのは、予定死亡率が高くなるからです。
また、一般的には長期間の死亡保障ほど将来の保険金支払いの可能性が高くなるため、その分も保険料に反映されます。
保険料は、「保障額」だけで決まるのではなく、「保険会社がどの程度保険金を支払うと見込んでいるか」によっても左右されるのです。
平均寿命が延びるとどうなるのか
日本では医療の進歩や生活環境の改善により、平均寿命は長くなる傾向が続いています。
死亡率が低下すれば、「保険金を支払う人が少なくなるのではないか」と考えるかもしれません。
実際、死亡保障だけを考えれば、予定死亡率の低下は保険料を押し下げる要因になります。
一方で、医療保険や介護保険、個人年金保険では事情が異なります。
長生きする人が増えることで、医療や介護、年金の支払いが長期間に及ぶ可能性も高まります。
そのため、保険会社は商品ごとに異なるリスクを考慮しながら保険料を設計しています。
予定死亡率は定期的に見直される
予定死亡率は、一度決めたら変わらない数字ではありません。
人口動態や医学の進歩、平均寿命の変化などを踏まえて、定期的に見直されます。
例えば、以前より死亡率が低下していることが確認されれば、新しく販売する保険商品の予定死亡率も変更されることがあります。
ただし、これは新契約に適用されるものであり、すでに加入している保険契約の保険料が自動的に変わるわけではありません。
生命保険は契約時の条件を基本として長期間継続する商品だからです。
予定死亡率だけで保険料は決まらない
予定死亡率は重要な要素ですが、これだけで保険料が決まるわけではありません。
生命保険の保険料は、主に次の三つの予定率をもとに計算されます。
・予定死亡率
・予定利率
・予定事業費率
予定死亡率は保険金支払いの予測、予定利率は運用収益の見込み、予定事業費率は保険会社の運営コストを見込むものです。
これら三つを組み合わせることで、適正な保険料が決められています。
次回取り上げる予定事業費率も、この三つの柱の一つです。
統計に基づく仕組みだから保険は成り立つ
生命保険は、多くの契約者が保険料を出し合い、万一の人を支える「相互扶助」の仕組みです。
もし死亡率を正確に見積もれなければ、保険料が安すぎて保険会社が経営できなくなることも、高すぎて契約者の負担が重くなることもあります。
予定死亡率は、そのバランスを取るための重要な指標です。
一人ひとりの寿命を予測するものではなく、多数の契約者全体のデータを基に制度を成り立たせるための基礎となっています。
結論
予定死亡率とは、生命保険会社が将来の保険金支払いを予測するために用いる死亡率の見込みです。
この数値は保険料を計算する重要な要素であり、年齢や性別、統計データなどを基に設定されています。
また、保険料は予定死亡率だけで決まるものではなく、予定利率や予定事業費率と組み合わせて算出されます。
生命保険は、多くの人の統計データを活用することで成り立つ制度です。予定死亡率の役割を理解することで、保険料の仕組みや生命保険制度そのものへの理解も深まるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年7月29日 朝刊
生保解約、金利上昇で拍車 返戻金1~5月4割増、最高ペース 高利回りの投信にシフト