レバレッジETFはなぜ全損することがあるのか 個別株急落で起きる極端な損失編

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株式を現物で購入した場合、会社が倒産するなどして株価がゼロにならない限り、通常は投資資金が一日ですべて失われることはありません。

ところがレバレッジETFでは事情が違います。

対象となる株式が一日で大幅に下落すると、ETFの理論上の損失率が100パーセントに達する可能性があるからです。

特に近年増えている単一銘柄レバレッジETFでは、この問題が重要になります。

多数の企業に分散する株価指数ではなく、一社の株価変動へ2倍や3倍のレバレッジをかけるためです。

企業に重大なニュースが発生すれば、個別株は一日で数十パーセント動くことがあります。

レバレッジと個別株の大幅な値動きが組み合わさると、通常の株式投資とはまったく異なる損失構造が生まれます。

レバレッジETFの損失は倍率によって拡大する

2倍型レバレッジETFは、一般的に対象資産の一日の値動きのおおむね2倍となる投資成果を目指します。

対象株式が一日に10パーセント上昇すれば、ETFはおおむね20パーセント上昇します。

反対に10パーセント下落すれば、おおむね20パーセント下落します。

3倍型なら、

対象株式が10パーセント下落

ETFはおおむね30パーセント下落

となります。

倍率が高くなるほど利益の可能性が大きくなる一方、損失も急速に拡大します。

2倍型では50パーセント下落が重大な境界になる

単純化した例で考えてみます。

2倍型ETFを100万円購入したとします。

対象株式が一日に20パーセント下落すれば、ETFはおおむね40パーセント下落することになります。

100万円は約60万円です。

対象株式が30パーセント下落すれば、ETFではおおむね60パーセントの下落です。

100万円は約40万円になります。

そして対象株式が50パーセント下落すると、単純計算による2倍の下落率は100パーセントです。

理論上、ETFの価値をすべて失う水準になります。

原株にはまだ50パーセントの価値が残っているのに、2倍型ETFでは全損に相当する事態が生じ得るわけです。

3倍型ではさらに小さな下落でも危険になる

3倍型では全損に相当する境界がさらに近くなります。

対象株式が20パーセント下落すれば、ETFでは単純計算で60パーセント下落します。

対象株式が30パーセント下落すれば約90パーセントの下落です。

そして約33.3パーセント下落すると、単純計算では約100パーセントの損失になります。

一日で3分の1程度下落するだけで、3倍型ETFには極端な損失が発生する可能性があるということです。

個別株では、重大な企業ニュースによってこの程度の値動きが起きることはあります。

個別株はなぜ一日で大きく動くのか

S&P500などの株価指数が一日で30パーセント下落することは極めて異例です。

多数の企業に分散されているためです。

しかし個別株では事情が違います。

例えば、

予想を大幅に下回る決算

業績見通しの大幅な下方修正

重大な不祥事

主力商品の問題

大型訴訟

規制当局による処分

資金繰り不安

破産に関する報道

などが発生すれば、一社の株価だけが急落することがあります。

単一銘柄レバレッジETFは、この個別企業固有のリスクをそのまま受けます。

しかもその値動きを2倍や3倍に増幅します。

指数型レバレッジETFとの違い

指数型レバレッジETFにも大きなリスクがあります。

しかしS&P500などを対象としていれば、多数の企業に分散されています。

一社が50パーセント下落しても、S&P500全体が50パーセント下落するわけではありません。

単一銘柄ETFにはこの分散効果がありません。

対象企業に重大な問題が起これば、その影響がETF全体へ及びます。

つまり単一銘柄レバレッジETFでは、

企業固有のリスク

集中投資のリスク

レバレッジのリスク

が重なります。

これが指数型よりも極端な値動きが発生しやすい理由です。

全損とは必ずしも価格が完全にゼロになることだけではない

実際のETFの運用は単純な掛け算だけで決まるわけではありません。

市場急変時には運用会社がポジションを縮小したり、取引を停止したりする場合があります。

商品によっては運用継続に関する特別なルールが設けられていることもあります。

そのため原株が一定率下落すれば必ずETF価格が数学的に完全なゼロになる、と一律に考えるべきではありません。

しかし経済的には、純資産がほとんど失われれば投資家にとって全損に近い状態です。

その後ETFが上場廃止や償還に向かう可能性もあります。

取引停止が投資家をさらに難しい状況にする

株価が急落しているときに必ずETFを売却できるとは限りません。

異常な価格変動が起これば、取引所が株式やETFの売買を一時停止する場合があります。

売りたいと思っても売れない可能性があるのです。

取引が再開した時点では、価格がさらに大きく下落している場合もあります。

特に重大ニュースが市場時間外に発表されれば、翌日の取引開始時点で価格が前日の終値から大きく飛ぶことがあります。

このような価格の飛びをギャップといいます。

レバレッジETFでは、このギャップリスクも増幅されます。

ストップ注文だけでは防げないことがある

投資家の中には、一定価格まで下落したら自動的に売却するストップ注文を利用すれば損失を限定できると考える人もいます。

しかし市場価格が連続して動くとは限りません。

例えば100ドルだった株式が悪材料によって翌朝60ドルから取引を始めることがあります。

90ドルで売却する注文を設定していても、90ドルで取引できるとは限りません。

さらにETF自体が取引停止になれば、その間は売却できません。

レバレッジ商品では損失管理の仕組みそのものが市場急変によって機能しにくくなる場合があります。

日次リセットとは別のリスクである

レバレッジETFについては、長期保有すると日次リセットやボラティリティドラッグによって投資成果が対象資産の単純な倍率からずれることが知られています。

しかし全損リスクは、それとは別の問題です。

日次リセットは何日も保有することで生じる問題です。

一方、極端な一日下落による全損リスクは一日でも発生します。

つまりレバレッジETFには、

長期保有による複利効果のリスク

一日の急落による壊滅的損失のリスク

という二つの時間軸の異なる問題があります。

下落後に株価が回復しても意味がない場合がある

ここも重要です。

対象企業の株価が暴落した後、数カ月後に元の価格へ回復したとします。

現物株を保有し続けていれば、価格面では損失を取り戻せる可能性があります。

しかしレバレッジETFが暴落によって純資産のほとんどを失い、すでに償還されていたらどうでしょうか。

その後原株が回復しても、そのETFを通じて回復の恩恵を受けることはできません。

投資商品そのものが途中で存続できなくなる可能性があるからです。

長期的には企業の株価が戻るはずだという見通しだけでは、レバレッジETFを長期保有する根拠にはならないのです。

大幅下落から元に戻ること自体が難しい

仮にETFが存続していても、大幅な下落から回復するには非常に大きな上昇率が必要です。

100万円が50パーセント下落すると50万円になります。

50万円を100万円へ戻すには100パーセント上昇する必要があります。

80パーセント下落して20万円になれば、元の100万円へ戻るには400パーセントの上昇が必要です。

90パーセント下落して10万円になれば、900パーセント上昇しなければ元に戻りません。

損失が大きくなるほど、回復に必要な上昇率は急激に大きくなります。

通常の株式投資との最大の違い

現物株式を購入する場合も、もちろん大きな損失が発生する可能性があります。

しかしレバレッジETFでは、原株の値動きを意図的に増幅しています。

例えば原株が30パーセント下落した場合、

現物株なら30パーセントの損失

2倍型なら単純化すると約60パーセントの損失

3倍型なら約90パーセントの損失

という違いになります。

しかもETFには日次リセットやデリバティブ取引など、現物株式にはない商品固有の仕組みがあります。

同じ企業へ強気の投資をする場合でも、現物株とレバレッジETFではリスク構造がまったく違うのです。

高い利益の可能性は高い破綻確率と表裏一体

レバレッジ型商品が投資家を引き付ける最大の理由は、大きな利益を短期間で狙えることです。

対象株式が短期間で大幅上昇すれば、2倍型や3倍型ではさらに大きな利益になる可能性があります。

しかし金融商品には、

上昇だけ2倍

下落は1倍

という都合のよい仕組みはありません。

利益を増幅させる倍率は損失にも作用します。

特に単一銘柄では、企業固有の重大ニュースによる急落を分散できません。

高いリターンの可能性と極端な損失の可能性は、同じレバレッジという仕組みの表と裏なのです。

結論

レバレッジETFが全損に近い状態になる可能性があるのは、対象資産の一日の値動きを2倍や3倍に増幅する仕組みを持っているためです。

単純化すれば2倍型では対象株式の50パーセント程度の下落、3倍型では約33.3パーセントの下落が100パーセントの損失に相当する境界になります。

実際の商品では運用ルールや市場環境などがあるため、この計算通りに必ず価格がゼロになるわけではありません。

それでも一日の急落によってETFの純資産が壊滅的に減少する可能性があることは重要です。

特に単一銘柄レバレッジETFでは、一社の決算、不祥事、規制、破産懸念などが直接ETF全体を直撃します。

多数の企業へ分散する指数型ETFとはリスクの性格が違います。

さらに取引停止や価格のギャップが発生すれば、投資家が途中で売却して損失を限定できない場合もあります。

レバレッジETFの最大の特徴は、利益を大きくできることではありません。

利益と損失の両方を大きくすることです。

特に個別株と高いレバレッジを組み合わせた商品では、対象企業の株式を直接購入する場合とは別の商品としてリスクを考える必要があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月13日朝刊 米で新規ETF設定急増

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