インデックスファンドを選ぶ際、多くの人は信託報酬の低さに注目します。
もちろん運用コストは重要ですが、それだけでファンドの優劣を判断することはできません。
同じ指数に連動する商品でも、実際の運用成績には違いがあります。その違いを確認する上で重要なのが「トラッキングディファレンス」です。
前回解説したトラッキングエラーと混同されやすい指標ですが、意味は大きく異なります。
今回は、インデックスファンドを比較する際にぜひ知っておきたいトラッキングディファレンスについて解説します。
トラッキングディファレンスとは
トラッキングディファレンスとは、投資信託やETFの運用成績が、ベンチマークとなる指数と比べてどれだけ差があったかを示す指標です。
例えば、ある年に指数が10%上昇し、そのファンドの上昇率が9.8%だった場合、トラッキングディファレンスはマイナス0.2%となります。
つまり、指数との差そのものを示すのがトラッキングディファレンスです。
一般的には、この差が小さいほど指数に忠実な運用が行われていると評価されます。
トラッキングエラーとの違い
トラッキングディファレンスとトラッキングエラーは似た名称ですが、測っている内容は異なります。
トラッキングディファレンスは、指数との収益率の差を表します。
一方、トラッキングエラーは、その差がどの程度ばらついているかを統計的に示す指標です。
例えば、毎年ほぼ同じ程度だけ指数を下回るファンドは、トラッキングディファレンスは存在しても、トラッキングエラーは比較的小さくなることがあります。
逆に、年によって指数との差が大きく変動するファンドでは、トラッキングエラーは大きくなります。
両者は補完関係にあり、どちらか一方だけでは運用品質を十分に評価できません。
実質コストとの関係
トラッキングディファレンスには、実際に運用で発生したコストが反映されます。
信託報酬だけでなく、売買手数料や監査費用、保管費用、外国株式の売買に伴う各種費用なども影響します。
そのため、信託報酬が低くても、その他の費用が多ければ、指数との差は広がる可能性があります。
反対に、運用効率が高いファンドでは、信託報酬以上に指数へ近い成績を維持することもあります。
つまり、トラッキングディファレンスは、実際の運用コストを総合的に映し出す指標ともいえます。
ファンド選びへの活用
インデックスファンドを比較する際には、同じ指数へ連動する商品同士でトラッキングディファレンスを比較すると参考になります。
長期間にわたり指数との差が小さいファンドは、運用技術が安定している可能性が高いと考えられます。
一方、一時的な成績だけでは判断できません。
市場環境や配当金の受け取り時期、決算日などによって短期間の差は生じるため、できれば3年から5年程度の実績を確認することが望ましいでしょう。
継続的に指数へ近い運用ができているかを見ることが重要です。
信託報酬だけで判断してはいけない
近年は各社が低コスト競争を進めており、信託報酬だけを見ると大きな差がない商品も増えています。
しかし、投資家が最終的に受け取る成果は、実際の運用成績によって決まります。
そのため、目先の信託報酬だけではなく、トラッキングディファレンスやトラッキングエラーなども確認することで、より質の高いインデックスファンドを選びやすくなります。
運用会社の管理能力や売買技術は、長期投資では少しずつ成果の差として現れてきます。
長期投資では小さな差が大きな差になる
年間ではわずか0.1%や0.2%の差でも、10年、20年と積み重なると資産額に影響を与えることがあります。
複利で運用する長期投資では、小さなコストや運用品質の違いが将来の運用成果を左右します。
だからこそ、インデックスファンドを選ぶ際には、指数との差を示すトラッキングディファレンスにも目を向けることが重要なのです。
結論
トラッキングディファレンスとは、インデックスファンドとベンチマーク指数との収益率の差を示す重要な指標です。
信託報酬だけでは分からない実際の運用品質を確認できるため、ファンド選びでは欠かせない判断材料となります。
前回紹介したトラッキングエラーと併せて確認することで、指数への追随精度をより正確に評価できます。
長期的な資産形成では、こうした小さな違いにも目を向け、自分に合った質の高いインデックスファンドを選ぶことが大切です。
参考
日本経済新聞(2026年8月1日朝刊)「インデックス投信、運用革命 誕生50年、業界塗り替える」
一般社団法人 投資信託協会「投資信託の基礎知識」
ジョン・C・ボーグル『インデックス投資は勝者のゲーム』
バートン・G・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』