デットマチュリティとは何か REITの借り換えリスクを読み解く編

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REITの財務を見るとき、LTVや借入金利と並んで重要なのがデットマチュリティです。

デットマチュリティとは、簡単にいえば借入金や社債の返済期限、つまり満期のことです。

REITは投資家から集めた資金だけで不動産を購入しているわけではありません。銀行からの借入金や投資法人債なども利用しながら、多くの不動産を保有しています。

そのため、借入金の満期がいつ到来するのかは、REITの財務リスクを考えるうえで非常に重要です。

特に金利が上昇する局面では、満期を迎えた借入金をより高い金利で借り換えなければならない可能性があります。

今回は、REITのデットマチュリティと借り換えリスクについて見ていきます。

デットマチュリティとは

デットは借金、マチュリティは満期を意味します。

したがって、デットマチュリティとは借入金や社債などの返済期限を指します。

例えば、REITが銀行から100億円を金利1%、期間5年で借りたとします。

5年後には借入金の満期が到来します。

REITが100億円を手元資金で返済できれば問題ありません。

しかし、REITは利益の多くを投資家へ分配する仕組みになっているため、多額の現金を内部に蓄積することには向いていません。

そこで一般的には、新たな借入金を調達して既存の借入金を返済します。

これが借り換えです。

REITは借り換えを繰り返している

REITでは借入金を完全に返済するというより、借り換えながら資産を保有し続けることが一般的です。

例えば100億円の借入金が満期になった場合、新たに100億円を借り、その資金で従来の借入金を返済します。

不動産から安定した賃料収入が得られ、金融機関からの信用力が維持されていれば、この仕組みを継続できます。

ところが金融市場が不安定になると状況は変わります。

金融機関が融資姿勢を厳しくしたり、借入金利が大幅に上昇したりすると、従来と同じ条件で借り換えられなくなる可能性があります。

これが借り換えリスクです。

金利上昇で借り換えコストが増える

金利上昇局面で特に問題になるのが、借り換え後の金利です。

例えば100億円を金利1%で借りていた場合、年間の支払利息は1億円です。

満期を迎え、金利3%で借り換えると、年間の支払利息は3億円になります。

単純計算では年間2億円の負担増です。

不動産から得られる賃料が変わらなければ、その分だけREITの利益が減少します。

利益が減れば、投資家へ支払う分配金にも影響する可能性があります。

金利上昇の影響は、変動金利の借入金だけに現れるわけではありません。

固定金利で借りていても、満期を迎えて借り換える際には、その時点の市場金利の影響を受けるのです。

満期が集中するとリスクが高まる

そこで重要になるのが満期分散です。

例えば500億円の借入金について、すべて同じ年に満期が到来するREITを考えてみます。

その年に金融危機や急激な金利上昇が起きれば、500億円を一度に借り換えなければなりません。

これは大きな財務リスクです。

一方、500億円の借入金について、毎年100億円ずつ5年間に満期を分散していた場合はどうでしょうか。

一度に借り換える金額を抑えることができます。

市場環境が悪化した場合でも、すべての借入金が同時に影響を受けるわけではありません。

このように返済期限を複数年度へ分散させることを満期分散といいます。

デットマチュリティラダーという考え方

REITの財務分析では、デットマチュリティラダーという考え方があります。

ラダーとは、はしごという意味です。

借入金の満期を年度別に並べると、はしごのような形で返済予定を確認できるため、このように呼ばれます。

例えば、

2027年 100億円

2028年 120億円

2029年 90億円

2030年 110億円

2031年 80億円

というように、借入金の満期を年度ごとに把握します。

特定の年度だけ突出して借り換え額が多ければ、その年度の資金調達リスクが高いことが分かります。

REITの財務を見る場合、借入金総額だけではなく、いつ返済期限が到来するのかを見ることが重要なのです。

長期化も重要な財務戦略

満期分散と同時に重要なのが、借入期間の長期化です。

短期借入が多ければ、頻繁に借り換えを行わなければなりません。

そのたびに市場金利の影響を受けます。

一方、長期固定金利で資金を調達すれば、一定期間は金利上昇の影響を抑えることができます。

そのためREITでは、市場金利が低い時期に長期固定金利へ切り替える戦略が取られることがあります。

金利上昇局面では、借入期間と固定金利比率が財務の安定性を左右する重要なポイントになります。

投資法人債も資金調達手段になる

REITの資金調達方法は銀行借入だけではありません。

投資法人債を発行する方法もあります。

投資法人債は、一般企業が発行する社債に相当するものです。

銀行借入と投資法人債を組み合わせれば、資金調達先を分散できます。

特定の銀行だけに依存しないことで、金融環境が変化した場合のリスクを抑えることができます。

資金調達先の分散もデットマネジメントの重要な要素です。

金利上昇局面では財務力の差が表れやすい

低金利時代には、多少借入金が多くても支払利息はそれほど大きな負担になりませんでした。

しかし金利が上昇すると、REITごとの財務戦略の違いが表れやすくなります。

重要になるのは、単純な借入金の多さだけではありません。

LTVはどの程度なのか。

固定金利比率はどの程度なのか。

平均残存期間はどのくらいなのか。

特定年度に満期が集中していないか。

こうした項目を組み合わせて見る必要があります。

物件売却という選択肢もある

借り換え環境が厳しくなった場合、REITが必ず新たな借入金を調達するとは限りません。

保有不動産を売却し、その資金で借入金を返済する方法もあります。

特に含み益のある物件を売却すれば、利益を確保しながら有利子負債を減らせる可能性があります。

ただし、収益を生み出していた物件を売却すれば、その後の賃料収入は減少します。

したがって、物件売却による借入金返済は、財務改善と将来の収益力とのバランスを考える必要があります。

これは今後、金利上昇局面におけるREITの重要な経営判断になっていくでしょう。

私募REITでも重要になる

デットマチュリティは上場REITだけの問題ではありません。

私募REITでも重要です。

私募REITは借入金を利用して不動産を取得しており、金利上昇による調達コスト増加の影響を受けます。

特に比較的新しい私募REITでは、低金利時代に組成され、当時の資金調達環境を前提として資産を拡大してきたケースがあります。

その借入金が今後満期を迎えれば、より高い金利での借り換えを迫られる可能性があります。

私募REITの統合や再編を考えるうえでも、デットマチュリティは重要なポイントになります。

結論

デットマチュリティとは、REITが抱える借入金や投資法人債の満期を意味します。

REITは借入金を利用しながら不動産を保有するため、満期を迎えた資金をどのような条件で借り換えられるかが収益力を大きく左右します。

特に金利上昇局面では、低金利で調達していた借入金が満期を迎えることで、支払利息が段階的に増えていく可能性があります。

そのため、REITを見る際にはLTVや現在の借入金利だけでなく、満期の分散状況、固定金利比率、平均残存期間などにも目を向けることが重要です。

金利のある世界では、保有不動産の質だけではなく、どのように借金を管理しているのかという財務戦略そのものが、REITの競争力を左右する時代になっているのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月7日 朝刊
私募REIT曲がり角 国内初の解散、調達コスト増 金利上昇が再編促す

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