2027年3月ごろから始まる予定のSCS評価制度では、多くの中小企業にとって星3個への対応が重要になります。
しかし、中小企業にはサイバーセキュリティーを専門に担当する社員がいないことも珍しくありません。
81件に細分化された基準を確認し、不足している対策を整え、必要な文書を作成する作業を自社だけで進めるのは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、外部の専門事業者による支援です。
経済産業省と情報処理推進機構は、中小企業のサイバー対策を支援するサイバーセキュリティお助け隊サービスについて、SCS評価制度に対応する新しい類型を設ける方針です。
サイバーセキュリティお助け隊サービスとは何か
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、中小企業が必要なサイバーセキュリティー対策を導入しやすくするための仕組みです。
中小企業では、大企業のように専門部署を設置したり、多数のセキュリティー専門家を雇ったりすることが難しい場合があります。
一方で、サイバー攻撃は企業規模に関係なく発生します。
さらに取引先を経由して大企業へ侵入するサプライチェーン攻撃も問題になっています。
そこで、専門的な対策をすべて自社で抱え込むのではなく、外部サービスを活用するという考え方が重要になります。
SCS評価制度向けの新しい類型が設けられる
記事では、経済産業省がサイバーセキュリティお助け隊サービスにSCS評価制度向けの新しい類型を設けるとしています。
経済産業省と情報処理推進機構が、システム構築などを手掛ける事業者を選定し、実証事業を行う予定です。
記事では十数社程度の事業者を選ぶとされています。
SCS評価制度の開始に向け、中小企業が実際にどのような支援を必要とするのかを確認する意味もあります。
なぜ中小企業には支援が必要なのか
星3個への対応は、セキュリティーソフトを購入するだけでは終わりません。
現在の対策状況を調べる。
不足している項目を特定する。
必要な機器やソフトウエアを導入する。
社内規定を整える。
社員教育を行う。
自己評価を文書化する。
専門家による確認を受ける。
このように複数の作業が必要になります。
通常業務を担当する社員が制度内容を一から調べながら進めると、大きな負担になります。
最初に必要なのは現状把握
支援を受ける場合でも、いきなり高額なシステムを導入することが目的ではありません。
重要なのは、現在の会社がどこまで対応できているのかを把握することです。
すでに満たしている基準もあるでしょう。
設定を変更するだけで対応できる項目もあるかもしれません。
社内規定を作ればよい項目もあります。
一方で、新しい機器やサービスの導入が必要になる場合もあります。
専門家が現状と基準との差を整理できれば、必要な対策を優先順位の高いものから進めやすくなります。
セキュリティー会社を選ぶ難しさもある
中小企業にとっては、どのセキュリティー事業者へ相談すればよいのか判断すること自体が難しい場合があります。
専門用語が多く、サービス内容を比較するのも簡単ではありません。
必要以上に高度なサービスを導入すれば、費用が膨らみます。
反対に、安さだけで選んで必要な対策が不足すれば意味がありません。
公的な枠組みの中で一定のサービスが示されれば、中小企業が支援先を選ぶ際の参考になります。
外部委託しても経営者の責任は残る
専門家を利用するといっても、サイバーセキュリティーをすべて外部へ任せればよいわけではありません。
どの情報が会社にとって重要なのか。
どの業務を止めてはいけないのか。
どの取引先と重要なデータを共有しているのか。
事故が起きた場合に誰が判断するのか。
こうしたことは会社自身が決める必要があります。
外部専門家は対策を支援できますが、会社の経営判断そのものを代行するわけではありません。
専門家を社外のセキュリティー部門として使う
専任担当者を採用する余裕がない中小企業では、外部サービスを社外のセキュリティー部門のように活用する考え方もあります。
必要なときだけ相談する。
定期的に対策状況を確認してもらう。
新しい脅威が出たときに助言を受ける。
事故が発生した場合の相談先を確保しておく。
このような仕組みがあれば、社内に多数の専門人材を抱えなくても一定の対応力を確保しやすくなります。
星3個取得後も支援が必要になる
SCS評価制度への対応で注意したいのは、星3個を取得すればサイバー対策が終了するわけではないことです。
新しい攻撃方法は次々に登場します。
社員の入退社もあります。
利用するシステムも変わります。
新しい取引先とデータを共有することもあります。
会社の環境が変われば、必要なセキュリティー対策も変わります。
そのため、認定取得までの支援だけでなく、取得後の継続的な運用も重要になります。
支援サービス市場が広がる可能性
SCS評価制度が企業間取引や入札で利用されるようになれば、星3個などの取得を目指す企業が増える可能性があります。
それに伴い、企業の現状診断、社内規定の整備、システム導入、文書作成などを支援するサービスへの需要も増えると考えられます。
記事でも、大塚商会や日立ソリューションズ、パーソルクロステクノロジーなどが関連する支援を進めていることが紹介されています。
SCS評価制度は企業のサイバー対策を変えるだけでなく、それを支援する新しい市場を広げる可能性があります。
結論
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、専門人材が不足しやすい中小企業が外部の力を使ってサイバー対策を進めるための仕組みです。
SCS評価制度の開始に向けて、経済産業省と情報処理推進機構は制度対応を支援する新しい類型を設ける方針です。
中小企業にとって重要なのは、すべてを自社だけで解決しようとしないことです。
現状把握や不足項目の整理、システム導入、文書整備など、専門性の高い部分では外部の力を活用できます。
一方、自社にとって何が重要なのかを判断し、どこまで対策するのかを決めるのは経営側の役割です。
SCS評価制度の普及によって、サイバーセキュリティーは専門家を抱える大企業だけの問題ではなくなります。
必要な専門知識を外部から取り入れながら、中小企業も一定の安全性を確保する仕組みづくりが重要になりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 サイバー対策、試される中小