地方創生では、地域資源を活用するという言葉がよく使われます。
地域の農産物を使って新しい商品を作る。
古民家を宿泊施設として再生する。
廃校をオフィスやワーケーション施設として利用する。
地域に伝わる祭りや文化を観光資源にする。
一見するとまったく違う取り組みですが、共通していることがあります。
地域にすでに存在しているものを、新しいビジネスの材料として利用していることです。
地域経済を活性化するために、必ずしも巨大な工場やテーマパークを外から誘致する必要はありません。
今まで当たり前すぎて価値に気付かなかったものや、使われなくなって負担になっていたものが、見方を変えると収益を生み出す資産になることがあります。
この考え方を理解するための重要な言葉が地域資源です。
地域資源とは何か
地域資源とは、その地域に存在し、地域の産業や観光、新しい商品やサービスなどに活用できるさまざまな資源を指します。
代表的なものが農林水産物です。
野菜。
果物。
米。
魚介類。
木材。
こうしたものは分かりやすい地域資源です。
しかし、地域資源は農産物などだけではありません。
歴史的な建物。
古民家。
廃校。
町並み。
伝統工芸。
祭り。
食文化。
自然景観。
温泉。
地域企業が持つ技術。
こうしたものも地域ビジネスの材料になる可能性があります。
つまり、地域資源とは最初から商品として売られているものだけではありません。
使い方を変えることで新しい価値を生み出せるものまで含めて考えることができます。
農産物や特産品は分かりやすい地域資源
地域資源の中でも特に分かりやすいのが農産物や特産品です。
ある地域でユズが生産されているとします。
ユズをそのまま出荷すれば農産物として売り上げが発生します。
しかし、それだけが利用方法ではありません。
ユズを使ったジュースを作る。
菓子を作る。
調味料を作る。
クラフトビールを作る。
化粧品などの商品へ展開する。
加工することで、一つの農産物からさまざまな商品を作ることができます。
さらに、ユズ畑で収穫体験を実施すれば、農産物だけではなく体験そのものを販売できます。
地域資源は使い方によって何度も価値を生み出せる可能性があるのです。
原材料のまま売る場合と何が違うのか
農産物を原材料のまま販売すると、価格競争に巻き込まれる場合があります。
同じような農産物を生産する地域が全国にあるからです。
豊作になれば価格が下がることもあります。
そこで加工によって付加価値を加えます。
たとえば100円相当の農産物を使って500円の商品を作ることができれば、加工やブランド、販売などによって新しい価値が生まれます。
もちろん、500円がそのまま利益になるわけではありません。
加工費、容器代、人件費、流通費などが必要です。
それでも、原材料をそのまま地域外へ出すだけでは地域外で発生していた加工や販売の仕事を、地域内に取り込める可能性があります。
地域資源を利用する意味は、単に地元産の商品を作ることだけではありません。
地域の中で生み出される付加価値を増やすことにもあります。
歴史的建築物も地域資源になる
地域資源というと、消費できるものを想像しがちですが、建物も重要な地域資源です。
古い商家。
酒蔵。
武家屋敷。
町家。
古民家。
こうした歴史的建築物は、地域の歴史や文化を伝える存在です。
しかし、建物を保存するだけでは維持管理費がかかります。
屋根や外壁の修理が必要になります。
耐震改修が必要になる場合もあります。
利用者がいなければ、所有者にとって負担になることがあります。
そこで建物に新しい用途を与えます。
古民家をホテルにする。
酒蔵をレストランにする。
町家を店舗にする。
歴史的建築物を結婚式場として利用する。
すると、維持費がかかるだけだった建物が収益を生み出す施設へ変わる可能性があります。
古いからこそ価値が生まれることがある
建物の場合、新しい方が価値が高いとは限りません。
一般的な不動産では、建物は築年数が経過すると価値が下がることがあります。
しかし観光では逆のことが起きます。
100年前の町家。
昔の酒蔵。
歴史的な商家。
こうした建物は、新築では作れない雰囲気を持っています。
宿泊客は単に寝る場所を買っているのではありません。
歴史的な建物で過ごすという体験にもお金を払います。
つまり、建物の古さが欠点ではなく商品価値になることがあります。
地域資源を活用するとは、一般的な評価基準では価値が低いものを、別の市場で価値のあるものへ変えることでもあるのです。
廃校は負担から資産へ変えられる
人口減少や少子化が進む地域では、学校の統廃合によって廃校が増えます。
学校として使われなくなっても建物は残ります。
自治体は建物の維持管理を続けなければならない場合があります。
利用されていない施設に修繕費や管理費がかかれば、自治体にとって負担になります。
しかし、学校には大きな特徴があります。
教室があります。
体育館があります。
校庭があります。
給食室などの設備が残っている場合もあります。
一定規模の建物と土地がまとまっています。
これを別の用途へ転換すれば、地域資源になります。
宿泊施設。
オフィス。
ワーケーション施設。
飲食施設。
工房。
地域交流施設。
企業の研修施設。
さまざまな用途が考えられます。
使われなくなった公共施設を、新しい経済活動の拠点に変えるわけです。
地域文化も商品になる
目に見えるものだけが地域資源ではありません。
地域の歴史や文化も重要な資源です。
祭り。
伝統芸能。
郷土料理。
地域独自の生活文化。
昔から続く製造方法。
こうしたものは形のない資源です。
それ自体を商品として販売することが難しくても、観光や商品開発と組み合わせることができます。
たとえば歴史的な町並みを歩くガイドツアーを作る。
地域の伝統料理を体験できるプログラムを作る。
伝統工芸の制作体験を観光商品にする。
地域文化を宿泊施設や結婚式の演出に取り入れる。
すると、地域に昔から存在していた文化が新しいサービスになります。
使われていないものに価値を見つける
地域資源を考えるうえで重要なのは、現在どれくらい収益を生み出しているかだけで判断しないことです。
今はほとんど使われていないものでも、新しい用途を与えれば価値が生まれる場合があります。
空き家。
空き店舗。
廃校。
耕作放棄地。
古い工場。
使われなくなった倉庫。
こうしたものは、そのままでは地域課題です。
しかし、事業者が新しい用途を見つければ地域資源へ変わります。
つまり、地域課題と地域資源は表裏一体になることがあります。
問題になっているものをビジネスによって解決できれば、地域課題の解決と収益事業を同時に実現できる可能性があります。
地域資源だけではビジネスにならない
ただし、地域資源があるだけで事業が成功するわけではありません。
おいしい農産物がある。
美しい自然がある。
古い建物がある。
これだけでは売り上げは生まれません。
重要なのは、誰がお金を払うのかを考えることです。
観光客が買うのか。
地域住民が利用するのか。
全国の消費者へネット販売するのか。
企業向けに販売するのか。
顧客を決め、その顧客が買いたいと思う商品やサービスへ変える必要があります。
地域資源はあくまでビジネスの材料です。
そこに企画、加工、ブランド、販売、サービスなどを加えることで初めて収益を生み出す資産になります。
複数の地域資源を組み合わせる
一つの地域資源だけを使うより、複数の資源を組み合わせることで価値が高まることがあります。
農産物と観光。
古民家と宿泊。
伝統文化と結婚式。
酒造りとサイクリング。
廃校とワーケーション。
こうした組み合わせです。
たとえば地域の果物を販売するだけなら、顧客が受け取るのは商品です。
しかし、果樹園で収穫し、その果物を使った料理を食べ、地域の宿泊施設に泊まるという仕組みにすれば、一つの農産物から複数の消費を生み出せます。
地域資源を点ではなく組み合わせて考えることで、地域に落ちるお金を増やすことができます。
地域外からお金を呼び込むことが重要になる
人口減少地域では、地域住民だけを顧客にすると市場そのものが縮小します。
そこで地域資源を使って地域外の顧客を獲得することが重要になります。
観光客を呼び込む。
地域の商品をインターネットで全国へ販売する。
企業の研修やワーケーションを誘致する。
地域外から移住者や起業家を呼び込む。
こうした取り組みによって、地域外のお金を地域内へ入れることができます。
地域資源は、その地域にしかないという特徴を持つほど、地域外需要を獲得する武器になります。
全国どこでも買えるものではなく、その地域だからこそ買える商品や体験を作ることが重要になります。
地域資源を見つけ直すことが地方創生になる
地方創生というと、地域にないものを外から持ってくることに目が向きます。
大企業を誘致する。
大型商業施設を作る。
有名な観光施設を作る。
もちろん、こうした政策が有効な場合もあります。
しかし、すべての地域が同じ方法を取ることはできません。
そこで、地域にすでに存在しているものを見つけ直します。
昔から作られている農産物。
使われなくなった建物。
地域独自の文化。
地元企業の技術。
住民にとって当たり前のものでも、地域外の人から見ると価値がある場合があります。
その価値を見つけて商品やサービスへ変えることが、地域資源を活用した地方創生なのです。
結論
地域資源とは、地域に存在し、新しい商品やサービス、観光、産業などに活用できるさまざまな資源です。
農産物や特産品だけではありません。
古民家、歴史的建築物、廃校、自然、伝統文化、地域企業の技術なども地域資源になります。
重要なのは、現在の使われ方だけで価値を判断しないことです。
使われなくなった学校は、そのままなら維持費のかかる施設ですが、宿泊施設やワーケーション拠点として利用できれば収益を生み出す資産になります。
古い建物も、一般的な不動産としては価値が下がっていても、歴史的な空間で過ごす体験として販売すれば新しい価値が生まれます。
農産物も、そのまま販売するだけでなく、加工、観光、体験などと組み合わせることで付加価値を高めることができます。
地域資源とは、最初から価値のあるものだけを指すのではありません。
今まで価値がないと思われていたものに新しい使い方を見つけ、顧客がお金を払う商品やサービスへ変えることで資源になります。
地域に何がないかを探すだけではなく、すでに何があるのかを見つけ直す。
そこから新しいビジネスを生み出すことが、地域資源を活用した地方創生の重要な考え方なのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 地元密着ビジネスが最多 総務省採択、昨年度108件
日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 神奈川・小田原の交付金事業 尊徳が導く相互扶助の輪