アフォーダブル住宅とは何か 東京都が官民連携で手ごろな住まいを増やす理由

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東京都で住宅費の上昇が大きな問題になっています。

特に子育て世帯にとって、一定の広さがある住宅を都心やその周辺で確保することは容易ではありません。一方、公営住宅には所得要件があるため、家賃負担は重いものの公営住宅には入居できないという世帯も存在します。

そこで東京都が供給拡大に乗り出しているのがアフォーダブル住宅です。

ポイントは、東京都自身が住宅を大量に建設するだけではなく、官民ファンド、補助金、容積率の緩和、都有地などを組み合わせ、民間事業者が手ごろな住宅を供給しやすい環境をつくろうとしていることです。

住宅政策が公営住宅中心から官民連携へ広がり始めています。

アフォーダブル住宅とは何か

アフォーダブル住宅とは、一般的には家計にとって負担可能な価格で住める住宅を意味します。

東京都の取り組みでは、おおむね周辺相場の8割以下の家賃で提供される賃貸住宅が想定されています。

たとえば周辺の同程度の住宅の家賃が月20万円であれば、16万円以下で提供するといったイメージです。

重要なのは、都営住宅とは仕組みが異なることです。

都営住宅は公的住宅として所得などについて一定の入居資格があります。これに対してアフォーダブル住宅では、民間事業者などが住宅を供給し、入居条件も事業ごとに設定されます。

つまり、

都営住宅には入れない

しかし民間住宅の家賃は高すぎる

という世帯を支える新たな選択肢として期待されています。

なぜ子育て世帯が対象になるのか

住宅費の高騰は、特に子育て世帯に大きな影響を与えます。

単身世帯なら比較的小さな住宅でも生活できますが、子どもがいる世帯では一定の床面積や部屋数が必要になります。

住宅価格や家賃が上昇すれば、広い住宅ほど家計への負担が大きくなります。

住宅費を抑えるため郊外へ移れば、今度は通勤時間や保育、教育環境などとの調整が必要になります。

住宅問題は単純な住居の問題ではありません。

少子化対策、子育て支援、働き方、都市政策などにもつながっています。

東京都がアフォーダブル住宅を子育て支援の一つとして位置付けている背景には、このような事情があります。

官民ファンドで住宅を供給する

東京都の政策で興味深いのが官民ファンドの活用です。

東京都だけで資金を出すのではなく、民間資金と組み合わせて住宅供給につなげます。

記事では、空き家再生を手掛けるヤモリと三菱UFJ信託銀行によるファンドが中古戸建て9戸を改修した事例が紹介されています。

品川区や目黒区、板橋区、練馬区などの物件を改修し、家賃を月9万5000円から19万8000円に設定しています。

周辺相場に対しておよそ65%から80%の水準です。

単純に家賃を安くするだけではありません。

民間資金を活用することで、断熱性能の向上やシステムキッチンの導入など、住宅そのものの質を高める投資も可能になります。

安い住宅は質も低いという構図にしないことが、制度を長く続けるうえでは重要です。

公社住宅でも家賃を引き下げる

東京都住宅供給公社もアフォーダブル住宅の供給を進めています。

子育て世帯や新婚世帯を対象として、一定の年収要件を設けたうえで、公社住宅の家賃を2割引きにして提供しています。

記事によれば、6年間で1200戸を供給する計画です。

ここで注目したいのは、公営住宅と一般の民間賃貸住宅の間に新しい住宅市場をつくろうとしていることです。

住宅政策を考えると、

低所得世帯には公営住宅

それ以外は民間住宅

という二分法になりがちです。

しかし現実には、その中間にいる世帯が数多く存在します。

所得は一定程度あるものの、東京の住宅費を考えると生活に余裕がない世帯です。

アフォーダブル住宅は、この層を住宅政策の対象として捉える試みともいえます。

オフィスを住宅へ転換する

さらに興味深いのが既存オフィスの活用です。

東京都はオフィスビルの改修に合わせてアフォーダブル住宅を導入する事業者に補助金を交付します。

1件あたりの上限は2000万円です。

都市には住宅だけでなく、古くなったオフィスビルも数多く存在します。

これらを単純に建て替えるのではなく、リノベーションによって住宅として活用できれば、

既存建物の再生

住宅供給の増加

空室問題への対応

という複数の課題を同時に解決できる可能性があります。

人口構造や働き方が変化するなかで、都市の建物を用途ごと固定的に考えない発想が重要になってきています。

容積率緩和という強力なインセンティブ

東京都は補助金だけでなく、都市計画上の規制緩和も活用します。

その代表が容積率です。

容積率とは、敷地面積に対してどれだけの延べ床面積の建物を建てられるかを示す割合です。

たとえば1000平方メートルの土地で容積率500%なら、原則として延べ床面積5000平方メートルまで建築できます。

容積率の上限が引き上げられれば、それだけ多くの床をつくることができます。

東京都は相場の8割以下に家賃を抑えた住宅を整備する開発について、その公共貢献を評価し、容積率を緩和できる仕組みを導入しています。

事業者にとっては大きな意味があります。

アフォーダブル住宅部分だけを見ると家賃収入は少なくなりますが、容積率緩和によって増えた床をオフィスや住宅として賃貸できれば、開発全体の収益性を確保できる可能性があるからです。

補助金より重要なのは民間が参加できる仕組み

アフォーダブル住宅政策を見ると、単純な家賃補助とは異なる特徴が見えてきます。

行政が家賃の差額を延々と負担する方式では、住宅を増やすほど財政負担も増えていきます。

そこで東京都は、

官民ファンド

改修補助金

容積率緩和

都有地

公社住宅

など複数の手段を組み合わせています。

民間事業者に社会貢献だけを求めるのではなく、事業として成立する経済的なメリットを与えることがポイントです。

民間企業にとって採算が合わなければ、行政の掛け声だけで住宅供給を増やし続けることは困難です。

公共性と収益性をどのように両立させるかが、この政策の成否を左右します。

都有地は大きな可能性を持つ

今後注目したいのが都有地の活用です。

都営住宅を建て替えると、土地利用の効率化によって余剰地が生まれる場合があります。

東京都はこうした土地についてもアフォーダブル住宅への活用を検討しています。

土地価格が高い東京では、住宅供給コストの大きな部分を土地代が占めます。

行政が所有する土地を活用できれば、民間事業者が市場価格で土地を取得して住宅を建設する場合より、事業コストを抑えられる可能性があります。

土地そのものを行政が提供し、建設や運営に民間のノウハウを使う官民連携は、アフォーダブル住宅を増やす有力な方法になり得ます。

家賃を安くするだけでは解決しない課題もある

一方で、アフォーダブル住宅には難しい問題もあります。

最大の問題は誰を対象にするかです。

対象を広げすぎれば応募者が急増し、供給戸数が追いつきません。

反対に所得制限を厳しくすれば、従来の公営住宅政策との差が小さくなります。

さらに家賃を相場の8割に設定しても、もともとの相場が非常に高い地域では、依然として家計負担が大きい可能性があります。

また割安住宅が増えたとしても、それが数百戸、数千戸の規模にとどまれば、東京全体の賃貸市場に与える影響は限定的です。

制度を一時的な子育て支援策で終わらせず、民間の住宅供給モデルとして定着させられるかが重要になります。

住宅政策が都市政策へ広がっている

今回の東京都の取り組みで特に注目したいのは、住宅政策と都市開発政策が一体になっていることです。

住宅問題だから住宅を建てる。

そうした単純な政策ではありません。

空き家を再生する。

古いオフィスを転用する。

容積率を緩和する。

都有地を活用する。

民間資金を呼び込む。

これらを組み合わせながら住宅供給を増やそうとしています。

人口減少時代には、新しい建物を次々と建設するだけではなく、すでに存在する建物や土地をどう使い直すかという視点がますます重要になります。

アフォーダブル住宅政策は、住宅政策であると同時に東京という巨大都市の再設計でもあるのです。

結論

東京都が進めるアフォーダブル住宅は、単なる家賃の安い住宅ではありません。

民間住宅の家賃高騰と公営住宅の間にある空白を埋める新しい住宅政策として見る必要があります。

特に注目したいのは、行政がすべての住宅を自ら供給するのではなく、官民ファンド、補助金、容積率緩和、公社住宅、都有地などを組み合わせ、民間事業者が参加できる市場をつくろうとしている点です。

住宅政策を持続可能なものにするためには、入居者にとって家賃が手ごろであるだけでは足りません。

住宅を供給する事業者にとっても採算が取れる仕組みでなければなりません。

公共性と収益性を両立できれば、アフォーダブル住宅は一部の政策住宅にとどまらず、新しい賃貸住宅市場へ成長する可能性があります。

東京の住宅問題を考えるうえで、今後の供給戸数だけでなく、民間事業者が自発的に参入する仕組みとして定着するのかに注目したいところです。

参考

日本経済新聞 2026年8月8日朝刊 アフォーダブル住宅 都、民間呼び込む政策次々 オフィス改修に補助金 都有地活用も検討

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