事業所税には、資産割について事業所床面積1000平方メートル以下、従業者割について従業者数100人以下という免税点があります。
そのため、自社だけを見れば免税点以下なので事業所税はかからないと考える企業もあるでしょう。
ところが、親会社と子会社など特殊な関係にある事業者が同じ家屋で事業を行っている場合には注意が必要です。
事業所税には、一定の関係にある事業者の事業を共同事業とみなして免税点を判定する、みなし共同事業という仕組みがあるからです。
自社単独では床面積1000平方メートル以下、従業者数100人以下でも、特殊関係者の事業所床面積や従業者数を加えて判定した結果、免税点を超えることがあります。
企業グループで同じビルを利用している場合には特に注意したい制度です。
みなし共同事業とは何か
みなし共同事業とは、特殊な関係にある複数の事業者が同一家屋で事業を行っている場合に、一定の要件のもとで、それらの事業を共同事業とみなして事業所税の免税点を判定する仕組みです。
事業所税には一定規模以下の事業者を課税対象から外す免税点があります。
しかし、企業グループが事業を複数の会社に分け、それぞれの会社が免税点以下になれば、実質的には大規模な事業を行っているにもかかわらず事業所税が課税されないケースが生じかねません。
そこで、一定の特殊関係者が同じ家屋で事業を行っている場合には、形式的に別法人であっても、その関係を考慮して免税点を判定する仕組みが設けられています。
会社ごとに法人格が分かれているというだけで、必ず個別に免税点を判定できるわけではありません。
親会社と子会社が典型的なケースになる
みなし共同事業で問題になりやすいのが、親会社と子会社などの企業グループです。
例えば、親会社が子会社の株式を一定割合以上保有しているなど、資本関係や人的関係などから特殊関係者に該当する場合があります。
その親会社と子会社が同じビルで事業を行っていると、みなし共同事業の規定が関係する可能性があります。
ただし、親会社と子会社であれば無条件にすべての事業所を全国で合算するという制度ではありません。
特殊関係者に該当するか、同一家屋で事業を行っているかなど、法律上の要件を確認する必要があります。
企業グループ内の会社だからというだけで判断するのではなく、資本関係や実際の事業所の状況を確認することが重要です。
なぜ床面積を合算して判定するのか
例えば、ある会社が同じビル内で親会社と子会社に分かれて事業を行っているとします。
親会社の事業所床面積が700平方メートル、子会社の事業所床面積が500平方メートルだったとします。
それぞれを単独で見れば1000平方メートル以下です。
通常の考え方だけであれば、どちらも資産割の免税点以下に見えます。
しかし、一定の特殊関係者に該当してみなし共同事業の対象となれば、免税点の判定では特殊関係者の事業所床面積を加えて考えることになります。
700平方メートルと500平方メートルを合わせれば1200平方メートルです。
その結果、自社単独では免税点以下でも、みなし共同事業による判定では1000平方メートルを超える可能性があります。
従業者数についても合算して判定する
同じ考え方は従業者割にもあります。
例えば、親会社に70人、子会社に50人の従業者が勤務しているとします。
それぞれ単独では100人以下です。
しかし、一定の要件を満たす特殊関係者として同一家屋で事業を行っている場合には、免税点の判定で従業者数を加えて考えることがあります。
70人と50人を合わせれば120人です。
その結果、従業者割の100人という免税点を超える可能性があります。
企業グループ全体として多数の従業者が同じ建物で働いている場合には、各法人の人数だけを見て事業所税がかからないと判断するのは危険です。
同じビルに入居していることが重要になる
みなし共同事業を理解するうえで重要なのが、同一家屋という考え方です。
例えば、親会社と子会社が同じビルの別々のフロアに入居しているケースがあります。
法人としては別々であり、賃貸借契約も別々になっているかもしれません。
しかし、事業所税では、同一家屋で特殊関係者が事業を行っているという事実が重要になる場合があります。
本社機能を一つのビルへ集約している企業グループでは、特に注意が必要です。
グループ再編によって会社を分割した場合や、新しい子会社を設立して同じ本社ビルへ入居させた場合にも、事業所税への影響を確認する必要があります。
免税点判定と税額計算は分けて考える
みなし共同事業で特に重要なのは、免税点の判定と実際の税額計算を混同しないことです。
特殊関係者の床面積や従業者数を加えて免税点を判定するからといって、自社が特殊関係者の事業所税までまとめて納付するという意味ではありません。
みなし共同事業の仕組みは、まず納税義務があるかどうかを判定する場面で重要になります。
例えば、自社の床面積が700平方メートル、特殊関係者の床面積が500平方メートルで、免税点判定上1200平方メートルとなったとします。
これによって自社について資産割の免税点を超えることになったとしても、自社の税額を計算するときに、当然に特殊関係者の500平方メートルまで自社の課税標準として課税するということではありません。
免税点を判定するための数字と、実際に各事業者が負担する税額を計算するための数字は区別して考える必要があります。
会社を分けても事業所税を避けられるとは限らない
みなし共同事業の存在は、企業の組織再編を考える場合にも重要です。
例えば、一つの会社で行っていた事業を二つの子会社へ分割したとします。
法人が三つに分かれれば、それぞれの床面積や従業者数が小さくなります。
形式的には、それぞれが1000平方メートル以下、100人以下になることもあります。
しかし、それだけで事業所税の免税点以下になるとは限りません。
特殊関係者として同一家屋で事業を行っていれば、みなし共同事業の規定によって合算判定が必要になる可能性があります。
法人を分割することによって免税点を形式的に下回ることを防ぐ役割も、この制度にはあります。
企業グループでは資本関係の変化にも注意する
特殊関係者に該当するかどうかは、企業間の関係によって変化する可能性があります。
例えば、株式取得によってある会社を子会社化した場合、それまで無関係だった二つの会社が特殊関係者となることがあります。
その二社が偶然同じビルに入居していた場合には、買収後に事業所税の免税点判定が変わる可能性があります。
反対に、株式売却などによって資本関係が解消されれば、取扱いが変わることも考えられます。
M&Aや企業再編では、法人税や消費税だけでなく、事業所税についても確認しておく必要があります。
特に同一ビル内に複数のグループ会社を集約している企業では、資本関係の変更が思わぬ税負担につながる可能性があります。
本社ビルへのグループ会社集約にも影響する
企業グループでは、業務効率化や賃料削減のため、複数のグループ会社を一つの本社ビルへ集約することがあります。
経営面では合理的な判断でも、事業所税の観点では注意が必要です。
それまで別々の建物で事業を行っていた会社が同一家屋へ集約されることで、みなし共同事業の要件に該当する可能性が生じるからです。
オフィス統合によって賃料や管理費を削減できても、新たに事業所税の納税義務が発生すれば、想定していたコスト削減効果が小さくなることもあります。
オフィス移転やグループ会社の集約を検討するときには、床面積だけではなく資本関係と従業者数まで含めて確認することが重要です。
形式ではなく事業の実態を見る仕組み
みなし共同事業の考え方は、事業所税が単に法人単位だけを見て課税する制度ではないことを示しています。
企業グループが複数の法人に分かれていても、特殊な関係にある事業者が同じ家屋で事業を行っているのであれば、その実態を考慮して免税点を判定します。
これは、1000平方メートルと100人という免税点を適正に機能させるための仕組みともいえます。
一方で、企業側からすると、自社の床面積と従業者数だけでは納税義務を判断できないケースが生じます。
そのため、グループ会社との関係まで含めた管理が必要になります。
結論
みなし共同事業とは、親会社と子会社など一定の特殊関係者が同一家屋で事業を行っている場合に、その関係を考慮して事業所税の免税点を判定する仕組みです。
自社単独では事業所床面積1000平方メートル以下、従業者数100人以下であっても、特殊関係者の床面積や従業者数を加えて判定した結果、免税点を超えることがあります。
特に注意したいのは、免税点判定のための合算と実際の税額計算は同じではないことです。
特殊関係者の床面積や従業者数を加えて免税点を判定したからといって、その特殊関係者の床面積や給与総額まで当然に自社の課税標準になるわけではありません。
企業グループでは、子会社の設立、M&A、会社分割、本社移転、グループ会社のオフィス集約などによって、みなし共同事業の適用関係が変わる可能性があります。
事業所税の免税点を判断するときには、自社だけを見るのではなく、同じ建物で事業を行う特殊関係者まで確認することが重要です。
参考
税のしるべ 2026年8月10日 事業所税の課税団体が減少、人口減で30万人以上の要件を満たせず