転職や再就職を考えるとき、多くの人は求人サイトで現在募集している企業を探します。
しかし、求人を探す前に考えておきたいことがあります。
世の中にはどのような職業があるのか。
その仕事では何をするのか。
どのような知識やスキルが必要なのか。
自分の経験を生かせる別の仕事はないのか。
こうした職業そのものについて調べるために利用できるのが、厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagです。
特に長年同じ会社や職種で働いてきたシニアは、自分が知っている職業の範囲で再就職先を探してしまうことがあります。
職業情報を幅広く調べ、自分の経験や能力との共通点を探すことは、職種転換の可能性を広げることにつながります。
job tagとは何か
job tagは、さまざまな職業について仕事内容や必要なスキルなどを調べることができる職業情報提供サイトです。
厚生労働省が提供しています。
以前は日本版O NETという名称で知られていました。
求人サイトとの大きな違いは、
特定企業の求人を探すこと
が中心ではなく、
職業そのものを知ること
を目的としている点です。
例えば、ある職業について、
どのような仕事をするのか
どのような知識やスキルが求められるのか
どのような働き方をするのか
などを調べることができます。
転職先の会社を探す前に、転職先となり得る職業を探すための道具と考えることができます。
求人サイトとは役割が違う
求人サイトとjob tagは、似ているようで役割が異なります。
求人サイトでは、
現在どの企業が募集しているのか
を探します。
一方、job tagでは、
その職業とはどのような仕事なのか
を調べます。
例えば経理の求人を探す場合、求人サイトなら、
会社名
勤務地
賃金
勤務時間
応募条件
などを比較します。
job tagでは、経理という職業について仕事内容や必要な能力などを確認します。
つまり、
職業を知る
job tag
と、
具体的な就職先を探す
求人情報
を組み合わせて利用することが重要です。
知らなかった職業を探すことができる
長年同じ会社で働いていると、世の中にどのような職業があるのか意外に知らないことがあります。
自分が働いてきた会社。
取引先。
家族や友人の仕事。
普段目にする仕事。
こうした範囲で職業を考えがちです。
しかし実際には多くの職業があります。
job tagを利用すると、自分がこれまで知らなかった仕事についても調べることができます。
これは職種転換を考えるシニアにとって重要です。
以前と同じ職種の求人が少なくても、経験を生かせる別の職業が存在する可能性があるからです。
職業ごとの仕事内容を確認できる
職業名だけでは、実際に何をする仕事なのか分からないことがあります。
同じような名称でも仕事内容が異なる場合があります。
反対に、名称がまったく違っていても似た仕事をしている場合があります。
そこで仕事内容を具体的に確認します。
例えば、
顧客への説明
データ分析
関係者との調整
書類作成
人材育成
設備管理
など、実際に行う仕事を見ます。
すると、
以前の仕事と共通する部分
が見つかることがあります。
職業名ではなく仕事内容を比較することが、職種転換を考える第一歩になります。
必要な知識やスキルを確認できる
仕事を変えるときに重要なのが、
その仕事に何が必要なのか
を知ることです。
例えば別の職業に興味を持っても、必要な知識やスキルが分からなければ、自分にできる仕事なのか判断できません。
職業情報を利用すれば、
どのような知識が必要なのか
どのようなスキルが重要なのか
を調べる材料になります。
そして自分の能力と比較します。
すでに持っている能力。
不足している能力。
この二つを分けます。
不足部分が小さければ、比較的移りやすい職業かもしれません。
不足部分が大きければ、リスキリングが必要になります。
自分の経験を職種名から切り離す
シニアが再就職を考えるときに起こりやすいのが、
私は営業しかできない
私は経理しかできない
私は管理職しか経験していない
という考え方です。
しかし職種名を外して仕事を分解すると、別の姿が見えてきます。
例えば営業経験者なら、
顧客の話を聞く
課題を把握する
提案する
交渉する
関係を維持する
トラブルに対応する
という能力があります。
管理職経験者なら、
部下を育成する
仕事を割り振る
進捗を管理する
問題を解決する
関係部署を調整する
といった能力があります。
これらの能力を必要とする仕事は、以前と同じ職種だけとは限りません。
これまでの経験との照合が重要になる
job tagを利用するときには、職業情報を見るだけで終わらせないことが重要です。
自分の経験と比較します。
例えば興味のある仕事を見つけたら、
この仕事で必要な能力のうち、自分が持っているものは何か
を考えます。
次に、
持っていないものは何か
を考えます。
すると、
そのまま応募できる
少し学べば応募できる
資格取得など本格的な準備が必要
といった違いが見えてきます。
職業を眺めるだけではなく、自分との距離を測ることが重要なのです。
ポータブルスキルを別の職業につなげる
職種転換で重要になるのがポータブルスキルです。
ポータブルスキルとは、会社や業界が変わっても利用できる能力です。
例えば、
問題解決
人材育成
顧客との交渉
関係者との調整
計画策定
業務改善
などです。
職業情報を調べるときに、
自分と同じ業界か
だけを見るのではなく、
自分のポータブルスキルが利用できるか
を見ることが重要です。
これによって異業種への転職可能性を考えやすくなります。
リスキリングする内容を考える材料になる
再就職のために勉強しようと思っても、
何を勉強すればよいのか
分からないことがあります。
そこで、先に目指す職業を調べます。
その仕事に必要な能力を確認します。
そして自分に不足している部分だけを学びます。
例えば、
業界経験はないが必要な対人能力は持っている
不足しているのは特定の制度知識だけ
ということが分かれば、その部分を学べばよい可能性があります。
逆に必要な資格や専門知識が多く、習得に長期間かかると分かれば、別の職業を検討する判断もできます。
リスキリングを始めてから仕事を探すのではなく、
仕事を調べてからリスキリングする
という順番が重要です。
シニアは定年前から利用するとよい
job tagのような職業情報は、失業してから利用するものとは限りません。
むしろ定年前から利用する意味があります。
例えば55歳や60歳になる前から、
現在の仕事以外にどのような職業があるのか
自分の経験は別の仕事で利用できるのか
不足している能力は何か
を調べておきます。
必要なリスキリングが分かれば、働いている間から準備できます。
定年後に初めて、
何の仕事をしようか
と考えるより、選択肢を増やしやすくなります。
求人倍率などの情報と組み合わせる
興味のある職業を見つけても、その仕事の求人がほとんどなければ再就職は難しくなります。
そこで労働市場情報と組み合わせます。
仕事内容。
必要なスキル。
自分との適合度。
これらに加えて、
求人は多いのか
求職者は多いのか
賃金はどの程度なのか
自分の地域に仕事があるのか
を確認します。
仕事の内容だけでなく、実際に就職できる可能性まで考えるのです。
職業情報と求人情報を組み合わせることで、より現実的な職種転換を考えられます。
AIとの組み合わせで職業探索が変わる可能性がある
今後はAIを利用することで、職業情報の使い方も変わる可能性があります。
例えば自分の職務経歴をAIで分析します。
すると、
顧客対応
交渉
人材育成
問題解決
業務改善
といったスキルを抽出できます。
そのスキルと職業情報を照合すれば、
これまで考えていなかったが適性のありそうな仕事
を見つけられる可能性があります。
人間が数百の職業を一つずつ調べることは大変です。
AIなら大量の職業情報から共通点を探すことができます。
AIマッチングと職業情報の見える化を組み合わせれば、職種名に縛られない仕事探しが進む可能性があります。
ハローワークの相談と組み合わせる
職業情報を自分で調べるだけでは判断が難しいこともあります。
例えば、
この仕事に本当に転職できるのか
どの訓練を受ければよいのか
自分の地域に求人があるのか
といった問題です。
その場合には、ハローワークなどの職業相談と組み合わせる方法があります。
自分で職業情報を調べる。
興味のある職業をいくつか見つける。
相談員と求人状況や必要な準備を確認する。
この順番なら、漠然と、
何か仕事はありませんか
と相談するより、具体的な職業選択につなげやすくなります。
結論
job tagとは、さまざまな職業の仕事内容や必要な知識、スキルなどを調べることができる厚生労働省の職業情報提供サイトです。
求人サイトが、
今どの企業が募集しているか
を探す場所だとすれば、job tagは、
世の中にどのような職業があり、その仕事では何が求められるのか
を調べるための仕組みです。
特にシニアの再就職では、自分が長年経験してきた職種だけに仕事探しを限定しないことが重要になります。
営業。
経理。
管理職。
事務。
こうした職種名を一度外し、その仕事で身につけた能力を整理します。
そして職業情報と照合すれば、自分のポータブルスキルを生かせる別の仕事が見つかる可能性があります。
さらに不足している能力が分かれば、何をリスキリングすべきかも明確になります。
これからの再就職では、求人が出るのを待って応募するだけではなく、
自分の能力を知る
職業を知る
労働市場を知る
不足する能力を学ぶ
という準備が重要になります。
job tagは、その中の職業を知るための重要な道具です。
長年働いてきた職種の延長線だけで次の仕事を探すのではなく、自分の経験を別の職業へつなげる。
シニアが新しい職業の可能性を発見するためにも、職業情報を積極的に利用する意味は大きいでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 老いるハローワークとAI
厚生労働省 職業情報提供サイトjob tag