「NISAは株式投資をする人の制度」と考えている人は少なくありません。しかし、もし国債がNISAの対象になれば、そのイメージは大きく変わるかもしれません。
2026年7月、国民民主党は個人向け国債をNISAの対象に追加する法案を提出しました。背景には、「資産形成は株式だけではない」という考え方があります。
人生100年時代では、資産を増やすことだけでなく、守りながら育てることも重要です。今回の提案は、日本の資産形成の考え方を見直すきっかけになる可能性があります。
なぜ国債をNISAに加えようとしているのか
現在のNISAは、株式や投資信託などのリスク資産への投資を促す制度です。
制度開始以来、多くの人が投資を始め、日本人の金融リテラシー向上にも大きく貢献してきました。
一方で、制度には課題もあります。
投資経験が少ない人や高齢者の中には、
「株価が下がるのが怖い」
「元本が減る可能性がある商品には手を出しにくい」
と感じる人も少なくありません。
その結果、多くの資産が預貯金のまま眠り続けています。
今回の法案は、こうした人たちにもNISAを利用しやすくすることを目的としていると考えられます。
国債は資産形成の「守り」の役割を担う
国債とは、国が資金を借りるために発行する債券です。
個人向け国債は元本保証ではありませんが、日本国政府が元本と利子の支払いを約束しているため、信用リスクは比較的小さい金融商品とされています。
株式は企業の成長によって資産を増やす可能性があります。
一方、国債は価格変動が比較的小さく、安定した利息収入を得られることが特徴です。
つまり、
株式=資産を増やす役割
国債=資産を守る役割
という違いがあります。
資産形成では、この二つを組み合わせることが基本になります。
高齢者ほど恩恵を受ける可能性がある
現役世代は給与収入があります。
そのため、多少価格が下がっても長期間保有しながら回復を待つことができます。
しかし、退職後は事情が異なります。
生活費を資産から取り崩す必要があるため、大きな価格変動は心理的にも家計にも負担になります。
そのため、多くの高齢者は投資を敬遠し、預金中心になっています。
もしNISAで国債が保有できれば、
「リスクは抑えたいが、預金だけでは物価上昇に不安がある」
という層にとって、新しい選択肢になる可能性があります。
分散投資は資産形成の基本原則
投資の世界では、「卵は一つのかごに盛るな」という言葉があります。
これは、一つの商品だけに資産を集中させないという意味です。
例えば、
・日本株
・外国株
・投資信託
・国債
・預貯金
などを組み合わせることで、一つの資産が値下がりしても全体への影響を抑えられます。
国債がNISAに加われば、この分散投資を非課税制度の中で実践しやすくなる可能性があります。
金利のある時代だからこそ国債の存在感が高まる
長い間、日本は超低金利でした。
国債の利回りも低く、預金との違いを感じにくい状況が続いていました。
しかし現在は、「金利のある世界」が戻りつつあります。
長期金利が上昇すれば、新たに発行される国債の利回りも改善します。
安全性を重視する資産として、国債の魅力は以前より高まっているといえるでしょう。
資産形成の環境そのものが変わり始めているのです。
非課税のメリットは利子にも及ぶ可能性がある
現在、預金の利息や国債の利子には税金がかかります。
もしNISAで国債を保有できるようになれば、制度設計次第では利子が非課税となる可能性があります。
長期間運用するほど、この税負担の差は積み重なります。
特に退職後は、大きな値上がり益よりも、安定した利子収入を重視する人が増えます。
その意味でも、国債とNISAの組み合わせには一定の合理性があります。
制度拡充だけでなく金融教育も重要になる
もっとも、国債がNISAに追加されれば、それだけで資産形成が成功するわけではありません。
国債にも、
・金利変動
・インフレ
・中途換金
など理解しておくべき点があります。
また、年齢や収入、資産額によって適切な資産配分は異なります。
制度を広げるだけではなく、「自分に合った資産配分を考える力」を身につけることが、これからますます重要になるでしょう。
人生100年時代のNISAは「増やす」から「育てて守る」へ
これまでのNISAは、「投資を始める制度」という側面が強くありました。
しかし、高齢化が進む日本では、「資産を守りながら活用する制度」という役割も求められるようになります。
株式だけではなく、国債のような安定資産も選択肢に加われば、より幅広い世代が利用しやすい制度になるでしょう。
資産形成は、一部の投資家だけのものではありません。
若い人も、高齢者も、自分のライフステージに応じて選べる制度へ進化することが期待されます。
結論
国債をNISAの対象に追加するという提案は、単なる制度改正ではありません。
「資産形成とは何か」という考え方そのものを広げる議論でもあります。
人生100年時代には、資産を積極的に増やす時期もあれば、安全性を重視して守る時期もあります。
その両方を支える制度であれば、NISAはさらに多くの国民にとって身近な存在になるでしょう。
今後の法案審議の行方だけでなく、日本の資産形成制度全体がどのように進化していくのかにも注目していきたいところです。
参考
日本経済新聞 2026年7月11日 朝刊
「NISA対象に『国債追加』法案 国民民主が提出」