AIが税務ミスを起こしたら誰が責任を負うのか AI時代の責任編

効率化
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

生成AIの進化によって、税理士業務は大きな変化の時代を迎えています。

税務調査事例の検索、税法の要約、顧問先への説明文作成、議事録作成など、従来は人が行っていた業務の一部をAIが担うようになりました。

近い将来には、申告書作成や税務判断の補助までAIが行う場面も増えるでしょう。

その一方で、新たな問題も生まれています。

もしAIが誤った税務判断を示し、その結果として顧問先に損害が発生した場合、誰が責任を負うのでしょうか。

AIなのか、AI開発会社なのか、それとも税理士なのか。

今回はAI時代における税理士の責任について考えてみたいと思います。

AIは間違えることを前提に作られている

多くの人はAIに対して「コンピュータだから正確」というイメージを持っています。

しかし、生成AIは電卓や会計ソフトとは仕組みが異なります。

生成AIは膨大な学習データをもとに、最も可能性が高い文章を生成しているだけです。

そのため、

・存在しない判例を作る

・誤った条文を引用する

・古い税制を説明する

・適用要件を誤解する

といった現象が起こります。

いわゆる「ハルシネーション(幻覚)」です。

AI開発企業自身も、生成AIが誤る可能性を前提として利用するよう注意喚起しています。

つまり、AIは便利な道具ではありますが、絶対に正しい専門家ではないのです。

AIは税理士資格を持っていない

税理士法では、税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の独占業務とされています。

税理士資格を持たない者が税務判断を行い報酬を得ることは原則として認められていません。

当然ながらAIは税理士資格を持っていません。

AIは税理士業務を行う主体ではなく、あくまで補助ツールです。

会計ソフトが自動仕訳を提案しても最終確認は人が行うように、AIが税務上の見解を提示しても、その内容を採用するかどうかは税理士自身が判断しなければなりません。

法的な位置付けとしても、AIは責任主体ではなく補助者に過ぎないのです。

顧問先との契約は税理士に対して結ばれている

顧問先はAIと契約しているわけではありません。

契約している相手は税理士です。

例えば顧問先から、

「この取引は消費税が課税ですか」

と質問されたとします。

税理士がAIに質問し、その回答をそのまま顧問先へ伝えた結果、誤った処理となった場合、顧問先が責任を追及する相手は税理士になります。

顧問契約は税理士と顧問先との間で成立しているからです。

顧問先から見れば、

「AIがそう言った」

という説明は責任回避の理由にはなりません。

税理士は専門家として助言した以上、その内容について責任を負うことになります。

AIは電卓と同じなのか

AIはよく電卓や会計ソフトと比較されます。

しかし実際には大きな違いがあります。

電卓は2+2を計算すれば必ず4になります。

会計ソフトも仕組みが正しければ同じ結果を返します。

一方、生成AIは同じ質問をしても異なる回答を返すことがあります。

しかも、その回答に法的根拠がない場合もあります。

つまりAIは「計算機」ではなく「提案者」に近い存在です。

税理士がAIを利用する場合には、電卓を使う感覚ではなく、経験の浅い補助者から意見を聞く感覚で接する必要があります。

最終的な確認作業を省略してはならないのです。

AI時代に求められる税理士の役割

AIが普及すると、税理士の価値が下がると考える人もいます。

しかし実際には逆の側面もあります。

AIが大量の情報を生成するようになるほど、その情報が正しいかどうかを判断できる専門家の価値は高まります。

顧問先がAIを使って、

「この節税策は使えますか」

「ネットではこう書いてあります」

と相談してくる機会も増えるでしょう。

その際に必要なのは情報を探す能力ではなく、

・法令に照らして正しいか

・顧問先に適用できるか

・税務リスクはないか

を判断する能力です。

AIが知識を提供する時代だからこそ、税理士には判断者としての役割が求められるのです。

将来は責任のあり方も変わるのか

今後、AIがさらに進化すれば法制度も変わる可能性があります。

自動運転車の事故責任が議論されているように、AIによる専門的判断の責任分担についても議論が進むでしょう。

将来的には、

・AI開発会社

・ソフトウェア提供会社

・利用者

の責任分担が整理される可能性があります。

しかし現時点では、そのような制度は確立していません。

現在の法制度の下では、税務上の最終判断を行う税理士が責任主体となると考えるのが基本です。

結論

生成AIは税理士業務を大きく変える可能性を持っています。

しかし、AIは責任を負う存在ではありません。

AIが誤った回答をしたとしても、その内容を採用して顧問先へ助言した以上、責任を負うのは税理士です。

顧問先が契約している相手はAIではなく税理士だからです。

AI時代になると税理士の役割がなくなると語られることがあります。

しかし実際には、AIが出した答えを検証し、最終判断を下し、その結果に責任を持つ専門家の重要性はむしろ高まるのではないでしょうか。

税理士の価値は知識量だけではありません。

最後に責任を引き受ける覚悟こそが、AIには代替できない専門家の価値なのだと思います。

参考

・税理士法

・日本税理士会連合会「税理士業務とAI活用に関する各種資料」

・総務省「AI事業者ガイドライン」

・デジタル庁「生成AIの利用に関する考え方」

タイトルとURLをコピーしました